オンスロー Onslow
ラビットアイ系
系譜・来歴
- 親系譜: 'Premier'(プレミア、♀) × 'Centurion'(センチュリオン、♂)の交配により得られた選抜系統。
- 来歴: NCSUのブルーベリー育種プログラムにおいて、James R. Ballington(ジェームズ・ボーリントン)博士のラビットアイ育種事業から発表された晩生品種。病害評価および現地適応試験には Bill Cline(ビル・クライン、NCSU病理学者)が深く関与した。
- 品種名の由来: ノースカロライナ州南東部に位置する Onslow 郡(Onslow County)に由来する地名命名。
樹体特性
- 樹勢: ラビットアイ系としてはやや弱め〜中程度との評価が国内外で多い。米国育成元・販売店資料では「productive, vigorous, upright(多産・旺盛・直立)」とされるが、日本の栽培実例(愛知県岡崎市の観光農園など)では「ラビットアイ系にしては樹勢が弱い」「結実が始まると衰退傾向」との評価がある。
- 樹形: 直立性(upright)でややコンパクト。新しい太い主幹が出にくいとの国内報告あり。
- 樹高: 約 1.5〜3.0 m(成木 5〜10 ft)。販売店により表記幅があり、Wilson Bros Gardens では 5〜8 ft、Greensboro Shrub Nursery では最大 10 ft(樹幅 8 ft)の記載あり。
- 紅葉: 秋には鮮やかな緋紅色〜黄色の紅葉を呈し、観賞価値も高い。
結実特性
- 開花期: 晩生(late blooming)。同じ晩生ラビットアイ品種(Columbus、DeSoto等)とほぼ同時期に開花する。日本国内での具体的な開花期記載は不明。
- 収穫期: 中晩生〜晩生(mid-late to late season)。米国ジョージア州:6月中旬〜8月上旬/米国ケンタッキー州:7月下旬〜9月上旬/日本(愛知県岡崎市など):7月中旬〜8月中旬、または8月上旬〜9月上旬(資料により幅あり)
- 低温要求量: 約 500〜600時間(45°F=7.2°C 以下)。
- 収量: 中程度。Backyard Berry Plants は成木1株あたり 9〜11 ポンド(約 4〜5 kg)と報告。日本の栽培事例では「中程度〜ラビットアイ系の中ではやや少ない」との評価が複数ある。
果実特性
- 果実サイズ: 大粒。ラビットアイ系の中で最大級の果実サイズを誇る品種の一つと評される。
- 果皮色: 中程度の青色(medium blue)。日本の栽培事例では「ブルームが少なく、やや黒っぽく見える」との観察報告もある。
- 果肉・硬度: 非常に硬く(very firm)、貯蔵性・輸送性に優れる。
- 果梗痕(スカー): 乾いた良好なスカー(dry picking scar)。
- 食味: 完熟時は甘味が強く、芳香に優れる(aromatic flavor)。種子のザラザラ感が少なく口当たりが良い。一方で「酸味がほとんどなく、ダラッと甘いだけ」「パンチがない」との国内評価もあり、好みが分かれる。
- 裂果性: 雨天時の裂果に対して 強い耐性 を示す(highly resistant to cracking in wet weather)。
- 収穫後品質: 良好(good postharvest fruit quality)。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 6a〜9a/6〜9b(販売元により幅あり)。ラビットアイ系の中では比較的耐寒性が認められる品種。
- 耐暑性: 良好。米南東部の暖地〜温暖地に適応。
- 土壌適応性: ラビットアイ系の他品種より やや高pH土壌への耐性が高い(tolerant to high pH)点が特長。これは Onslow の最も評価される育種特性の一つ。
- 耐凍霜性: 「good freeze resistance」と販売店資料に記載。
- 病害虫耐性: 「high resistance overall to disease(全般的に高い病害抵抗性)」とされるが、具体的な対象病害(茎枯病、葉斑病、根腐病等)に対する詳細な抵抗性データは不明。
推奨栽培地
- 米国: ノースカロライナ州の沿岸平野部(Coastal Plain)、ピードモント(Piedmont)、丘陵地(Foothills)の比較的乾燥した高地土壌。USDA Zone 6〜9 の南東部広域。pH がやや高めの土壌でも生育可能な点から、土壌適応範囲がラビットアイ系の中では広い。
- 日本: 寒冷地を除く東北南部から関東以西、東海、近畿、中国、四国、九州まで。暖地〜温暖地のラビットアイ栽培適地に広く適応。
- 寒冷地(東北北部・北海道)は不向き。
受粉相性
- 自家結実性: 自家結実性あり(self-fruitful/self-fertile)。1株でも結実可能とされる。ただし国内の一部栽培情報では「他家受粉が必須」と記載されており、実用上は他品種との混植により結実・果実サイズが向上することは共通認識。
- 推奨受粉樹: 同一系統(ラビットアイ系)の晩生品種が最適。'Columbus'(コロンバス)、'DeSoto'(デソト)、'Alapaha'(アラパハ)、'Brightwell'(ブライトウェル)、'Tifblue'(ティフブルー)。
- 注:ハイブッシュ系とは倍数性・開花期が異なるため受粉樹として不適。
商業利用状況
- 米国南東部(特にノースカロライナ州・ジョージア州)において、 晩生ラビットアイ商業品種 として一定のシェアを占める。
- 大粒・硬果・乾いたスカー・裂果耐性・収穫後品質という商業向け特性を備える。
- 'Columbus'(コロンバス)と並ぶ晩生ラビットアイの選択肢として、収穫期延長・出荷期分散の役割を担う。
- 高pH適応性により、土壌条件がラビットアイ系として境界域にある産地でも適応可能。
- ただし、'Tifblue' や 'Brightwell' のような圧倒的多収性はなく、商業規模では限定的な位置付け。
日本での状況
- 国内導入: 2010年代前半頃から国内観光農園・育種研究施設で植栽事例が確認される(愛知県岡崎市「ブルーベリーファームおかざき」では2012年導入)。
- 流通状況: 国内の苗木通販・園芸店での流通は限定的。'Tifblue' や 'Brightwell' のような定番ラビットアイ品種に比べると入手難度はやや高い。一部のラビットアイ専門ナーサリー・通販サイトで取り扱いあり。
- 栽培評価: 大粒・甘い・口当たりが良いとの肯定的評価がある一方、樹勢の弱さ、結実後の樹勢低下、味のパンチ不足から「観光農園のバリエーション枠での少数植栽が適当」とする評価が国内栽培家から出ている。
- 観光園: 一部観光ブルーベリー園で品種コレクションの一つとして提供される。
育成者注釈・特記事項
- 「'Premier' × 'Centurion'」という、いずれも NCSU 由来のラビットアイ親系統同士の組合せから生まれた晩生品種であり、ラビットアイ育種における系統内改良の代表例の一つ。
- 最大の育種上の特徴は、 ラビットアイ系の中では比較的高pH土壌に耐えること および 大粒・裂果耐性・乾いたスカー の組合せ。
- 'Columbus' と比較すると、Onslow の方が 果実が暗色(visibly darker than Columbus) と記載される。
- 命名はノースカロライナ州 Onslow 郡(NCSU所在地と同州内沿岸部の郡)にちなむ地名命名。同プログラムでは郡名命名(例:Pamlico、Yadkin、Onslow 等)が伝統的に行われている。
- 樹勢の弱さは国内の長期栽培観察からの指摘であり、米国側資料との評価ギャップに注意が必要。気候・土壌条件の差異が影響している可能性がある。
参考情報源
- NCSU Blueberry Genetics & Genomics Laboratory – Onslow
- eXtension Foundation – Onslow: Rabbiteye Blueberry Variety
- Backyard Berry Plants – Onslow Rabbiteye Organic Blueberry
- Wilson Bros Gardens – Onslow Self Fertile Rabbiteye Blueberry
- Greensboro Shrub Nursery – Onslow Rabbiteye Blueberry
- Monticello Shop – Bare Root 'Onslow' Rabbiteye Blueberry
- ServeScape – Onslow Rabbiteye Blueberry
- ブルーベリースター三河 – オンスロー
- ブルーベリーファームおかざき – オンズロー品種ページ
- ブルーベリーファームおかざき ブログ – オンズロー ラビットアイ系品種評価(全面改訂)