ポラリス Polaris
ハーフハイブッシュ系
系譜・来歴
- 親系譜: Bluetta(ノーザンハイブッシュ; V. corymbosum) × (G65 × Ashworth)
- 種子親 Bluetta: ニュージャージーで育成された早生ノーザンハイブッシュ。風味・香り・早熟性を Polaris に付与。
- 花粉親 G65 × Ashworth: G65 はミネソタ大学育成の半樹高選抜系統、Ashworth は野生由来の極耐寒性ローブッシュ系統(Vermont 由来)。両者の交雑により極寒地適応性と低樹高形質を導入。
- (ユーザー指定の MN-69 × MN-58 はミネソタ大学の内部育成系統番号として記述された可能性があるが、公開されている主要苗木業者・大学公式サイト上では Bluetta × (G65 × Ashworth) の組合せで一貫して紹介されているため、本書では公開情報を優先して記載。MN-69/MN-58 の対応は不明)
- 育成プログラム: ミネソタ大学園芸科学部のブルーベリー育成プログラムは 1967 年頃に開始され、寒冷地(ミネソタ・ウィスコンシン・ミシガン上部・ダコタ等)で越冬可能な「胸丈半樹高(chest-high half-high)」品種の育成を目的とする。Polaris は同プログラム第 2 世代に位置する代表品種で、Northblue(1983 年)、Northsky・Northcountry(1986 年)に続き、St. Cloud(1990 年)、Chippewa(1996 年同時リリース)と並んで 1990 年代に発表された主要品種。
- 命名: 北極星(Polaris/ポラリス)にちなみ、極北・寒冷地適応性を象徴。
樹体特性
- 樹形: 直立性〜ややコンパクトで、わずかに開帳。観賞性も高く家庭果樹に好適。
- 樹高: 成熟時 約 75〜120 cm(30〜40 inches、2.5〜3.3 ft)。商業生産マニュアル(UMN Extension)では 20〜50 inches(約 50〜127 cm)。「胸丈(chest-high)」収穫を目的に育成された半樹高品種で、収穫作業が立位で容易。
- 樹幅: 約 75〜150 cm(30〜60 inches)。
- 樹勢: 中庸。剪定容易。
- 葉: 小〜中型で深緑、秋には鮮やかな赤に紅葉し観賞価値も高い。
- 土壌適応: 酸性・排水良好な土壌(pH 4.0〜5.0)が必須。
結実特性
- 開花期: 春期(米北中部で 5 月頃)。花は白〜淡桃色のベル型。具体的な日数指標は 不明だが、ミネソタ・ウィスコンシン基準では Northblue や Chippewa とほぼ同時期。
- 収穫期: 早生(Early〜early mid-season)。Northblue より約 7 日早く成熟(UMN Extension)。米北中部で概ね 7 月上旬〜中旬。日本(寒冷地)の参考情報では 6 月中旬以降。
- 低温要求量(チルアワー): 公的資料に明示値なし。不明だが、極寒地育成のためチルアワー要求は十分に満たされる地域(USDA Zone 3〜5)が前提。一般にハーフハイブッシュは 800〜1,000 時間程度とされる。
- 自家結実性: 部分的(不完全)。Catskill Native Nursery では「not at all self-fruitful(自家結実性に乏しい)」と評され、複数の苗木業者が他家受粉樹の混植を必須としている。Chippewa、Patriot(樹姿が近い)、Northblue、Northsky が推奨受粉樹として挙げられる。
- 収量: 1 株あたり 3〜10 lb(約 1.4〜4.5 kg)。Hartmann's の 7 年間平均は約 3.5 lb(約 1.6 kg)。UMN Extension(商業)データでは 3〜10 lb/株。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒(カップあたり約 70 粒)。UMN Extension では「medium-large(中〜やや大粒)」とも記載。
- 色: 明るい〜濃いブルー("aluminum blue"〜濃青)。ブルーム良好。
- 食感: 非常に固く、パリッとクリスプ(very firm、very crisp)。日持ちに優れ「excellent storage capability(優れた貯蔵性)」と評価される。
- 風味: 強い芳香(intense aromatic flavor)を持ち、甘味と酸味のバランス良好。野生ローブッシュ由来の濃厚な香気を継承し、生食・製菓いずれも高評価。
- 用途: 生食、製菓(パイ、タルト、マフィン)、ジャム、冷凍保存。
- 果柄離れ・出荷適性: 良好。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA Zone 3a〜3b(最低気温 -37 ℃前後)まで適応。Hartmann's Plant Company の流通情報では Zone 3a〜7a。Ashworth 由来の極耐寒遺伝子により、ノーザンハイブッシュが越冬困難な極寒地でも栽培可能。
- 冬季傷害: UMN Extension は「-25 ℉〜-30 ℉(-32〜-34 ℃)で冬季傷害が起こり得る」と注意喚起。雪に覆われる条件下では更に低温に耐え得る。「-35 ℃以下」適応はユーザー指定だが、公開資料では -32〜-37 ℃級が安全圏とされる。
- 病害虫耐性: 公的データベースに具体的抵抗性値の記載は 不明。ハーフハイブッシュは一般に Phytophthora 根腐れ・茎枯病等への耐性は中程度とされる。寒冷地では病害圧自体が低く、家庭果樹・小規模商業ではほぼ問題視されない。
- 耐暑性: 弱〜中。Zone 7 以南の温暖地では夏季の高温多湿で生育不良になりやすい。
推奨栽培地
- 米北中部(ミネソタ州、ウィスコンシン州、ミシガン州上半島、ノースダコタ・サウスダコタ州、アイオワ北部等)の USDA Zone 3〜5 が中心。
- カナダ(オンタリオ南部、ケベック南部、沿海州の一部)・ニューイングランド北部の寒冷地でも栽培実績あり。
- 一般的にノーザンハイブッシュ(Bluecrop、Duke 等)が越冬困難な内陸寒冷地・大陸性気候地で代替品種として推奨される。
受粉相性
- 推奨受粉樹(同じハーフハイブッシュ・近接系統の混植が最適):
- Chippewa(同じ U of M 半樹高、同年 1996 年リリース。最も推奨される組合せの一つ)
- Northblue
- Northsky
- Northcountry
- St. Cloud
- Patriot(樹姿・開花期が比較的近い、寒地ノーザンハイブッシュ)
- ローブッシュ・ラビットアイ(V. ashei)系とは交雑不可ないし不適合。
- 単独植栽では結実が極めて低下するため、開花期の重なる 異品種を必ず最低 1 種混植することが推奨される。
商業利用状況
- ミネソタ・ウィスコンシン地域における商業ブルーベリー生産で代表的な寒地適応品種として位置づけられ、UMN Extension の商業栽培マニュアルにも掲載(Northblue、Northcountry、Northsky、St. Cloud、Chippewa と共に推奨)。
- 用途: 生食出荷(地域市場・U-pick)と加工(冷凍・ジャム・パイ用)両用。果実が固く貯蔵性に優れるため小規模商業出荷にも適する。
- 苗木流通: Hartmann's Plant Company(ミシガン州、卸・小売)、St. Lawrence Nurseries(ニューヨーク州)、Roots to Fruits Nursery、Burpee、Nature Hills、Prairie Gardens、Catskill Native Nursery、Heritage Hill Nursery、Production Lareault(カナダ・ケベック州)など、北米の多数の苗木業者が安定的に取り扱い。
- 増殖は MNRC(Minnesota Nursery Research Corporation)との契約に基づき、苗木販売業者が U of M 育成プログラムをロイヤリティ的に支援。
日本での状況
- 日本国内での流通実績は限定的だが、寒冷地向け(北海道、東北、信越・北陸の高冷地)ハーフハイブッシュとして紹介される。
- 楽天市場(花ひろば等)にて「ポラリス(ノーザンハイブッシュ系ブルーベリー)」として 2 年生・3 年生の挿し木苗・接ぎ木苗が販売実績あり。商品分類上「ノーザンハイブッシュ」と表示されることが多いが、本来は ハーフハイブッシュ系。
- 紹介情報では「中粒、淡青色、果肉は固く、芳香良好、糖酸バランス良好、6 月中旬以降収穫」と記述。
- 北海道道北・内陸部や東北山間地など、ノーザンハイブッシュの越冬リスクが高い地域での導入候補品種として位置づけられるが、商業栽培の規模感は 不明(家庭果樹中心と推察)。
- 西日本・温暖地での適応は不利。耐暑性が弱いため平地・夏季高温多湿地は推奨されない。
育成者注釈・特記事項
- ミネソタ大学のブルーベリー育成プログラムは 1967 年に James Luby 博士(後に同大学果樹育成部門の中心人物)らによって本格化し、Polaris は同プログラムの代表的成果のひとつ。
- Polaris と Chippewa は 1996 年同年に同時リリースされた姉妹的位置づけの品種で、相互受粉樹として組合せ植栽されることが極めて多い。
- 「胸丈半樹高」設計思想(収穫を立位で行えるようローブッシュより高く、フルサイズハイブッシュより低い)の到達点に近い品種で、家庭果樹・観光農園・小規模商業のいずれにも適応する。
- 秋の紅葉が美しく、観賞性も高いため景観植栽(エディブルランドスケープ)にも適する。
- 米国植物特許は取得されていないため、ライセンスフリーで増殖可能だが、苗木業者は MNRC を通じた任意支援を慣行とする。
参考情報源
- University of Minnesota "Minnesota Hardy" – Blueberries
- UMN Extension "Commercial blueberry production in Minnesota and Wisconsin"
- Hartmann's Plant Company – Polaris Blueberry (Retail)
- Hartmann's Plant Company – Polaris Blueberry (Wholesale)
- St. Lawrence Nurseries – Polaris Blueberry
- Catskill Native Nursery – Vaccinium x 'Polaris' Halfhigh Blueberry
- Prairie Gardens – Polaris Blueberry
- Roots to Fruits Nursery – Polaris Blueberry
- Production Lareault – Polaris Blueberry Pot Plant
- Pickablue Farm – Varieties
- 楽天市場 花ひろば – ポラリス(ノーザンハイブッシュ系ブルーベリー)