アリスブルー Aliceblue
ラビットアイ系
系譜・来歴
- 育成者: Ralph H. Sharpe(ラルフ・H・シャープ、ゲインズビル校 長年のブルーベリー育種家)
- タイプ: ラビットアイ(Rabbiteye, RE)系/アンブレラフレッシュ(UF)由来 早生品種
- 親系譜: 国内苗木業者(花ひろばオンライン)の記載によれば「E-96 [Berkeley × (Wareham × Pioneer)] × Florida 6-138」の交配から得られた選抜系統。北部ハイブッシュ系統(Berkeley, Wareham, Pioneer)の遺伝子をフロリダ在来選抜(Florida 6-138)と組み合わせた、ハイブッシュ × ラビットアイ的なハイブリッド由来とされる。
- 来歴: 1948年からゲインズビルでブルーベリー育種を開始したRalph Sharpeのプログラムから、1970年代後半に発表された早生ラビットアイ群の代表選抜の一つ。1977年公表の「Aliceblue/Beckyblue/Avonblue」3品種シリーズとされ、米南東部における超早生市場開拓を目的に育成された。
- 品種名の由来: 不明(人名「Alice」+果色「blue」の組み合わせと推定されるが、命名者・命名理由の確定情報は確認できず)
- 後代品種: 不明(後に Bonita(1985年公表)等のUF早生群へ系譜的に連なるが、Aliceblue自体を直接親として明記する後代品種は確認できなかった)
樹体特性
- 樹勢: 極めて強い(exceptionally vigorous)。Sharpe育成の早生群の中でも生育旺盛と記載される。
- 樹形: 直立性(upright)。資料により「開帳性(open)」とする国内記載もあり、若木期は直立、成木で半直立〜やや開帳に推移する傾向。
- 樹高: 約 1.5〜2.4 m(5〜8 ft)。日本の家庭栽培では 1.0〜1.5 m に達する例が多い。
- 樹幅: 約 1.2〜2.4 m(4〜8 ft)
- 特徴: 株元からシュートが多く、株立ち状の自然樹形になりやすい。秋には葉が黄〜橙色に紅葉。
結実特性
- 開花期: 非常に早い(very early)。日本(関東基準)で3月末〜4月中旬、米南部では晩冬〜早春に開花。早咲き性ゆえ晩霜害を受けやすい点が指摘される。
- 収穫期: 早生(early season)。ラビットアイ系の中でも最も早い部類。米南ジョージア:5月下旬〜6月上旬/米フロリダ北部・中北部:5月下旬〜6月/日本(関東標準):7月中旬〜8月中旬(資料により7月下旬〜8月中旬)
- 低温要求量: 約 300〜400時間(45°F=7.2°C 以下)。多くの資料で「300〜400 chill hours」と示され、暖地適応性が高い。
- 収量: 多収(abundant crop)と記載されるが、国内吉野果樹園は「収穫量が少なめ」と評価しており、立地・管理によって振れ幅がある。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜中大粒(medium)。直径約15〜18 mm(100円玉サイズ)
- 果皮色: 明るい青色(light blue)で、果粉(ブルーム)が多くのる。「丸みのある形が可愛らしい」と評される。
- 果肉: 硬い(firm)。果柄痕(スカー)は乾いた良好なスカー(moderately dry stem scar)。
- 食味: 非常に甘く美味しい(very sweet, tasty)。糖度は16〜18.6度と高く、生食適性に優れる。「抜群の甘さ、抜群の玉張り、心地の良い酸味」と国内農園で評される。
- 花粉量: 極めて多く、受粉樹としても機能する側面が指摘される。
- 裂果性: 不明(明確な記載は確認できず)
- 食べ頃: 完熟果の食味期間が約1週間と短く、適期収穫が品質維持上重要。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 7B〜9B(資料により7〜10)。低温要求量が低いため、寒冷地よりも温暖〜暖地に適合。
- 耐暑性: 良好(heat resistant)。暖地適応性が高い。
- 耐乾性: 平均的(average water needs)
- 病害虫耐性: ブルーベリーゴールミッジ(blueberry gall midge, Dasineura oxycoccana)の花蕾被害に対し中程度の感受性(moderately susceptible)と評価される。フロリダでは病害(特に花芽・花房での発病)による着果不良が指摘されており、この点が後年の推奨品種から外れた要因の一つ。
- 晩霜害: 早咲きであるため、開花期の凍霜害リスクが高い(frequent freeze damage)
推奨栽培地
- 米国: フロリダ州中北部、ジョージア州南部などの暖地(Zone 7B〜9B)。歴史的にフロリダ北中部の早生市場向け商業地で重要。現在のフロリダでは推奨外。
- 日本: 関東以西(高冷地を除く)の太平洋側、東海、近畿、中国、四国、九州など暖地〜温暖地。家庭果樹として東北南部〜九州まで広域で栽培可能との国内記載もある。
- 寒冷地(東北北部・北海道)には不向き。
受粉相性
- 自家結実性: 自家不和合性が強く、他家受粉が必須。
- 重要な注意: 'Beckyblue'(ベッキーブルー)とは交雑不和合性(cross-incompatibility)があり、両者の組み合わせは着果不良を起こすため避けるべきとされる。これがフロリダで推奨外となった主因の一つ。
- 推奨受粉樹: 'Climax'(クライマックス)— 早生群でAliceblueと開花期が合致する代表的相手/'Bonita'(ボニータ)— 同UF早生群、開花期が近い/'Brightwell'(ブライトウェル)/'Blueshower'(ブルーシャワー)— 国内で組み合わせ推奨例あり/同一系統(ラビットアイ系)の他の早生〜中生品種
- 注:ハイブッシュ系とは開花期や倍数性が異なるため受粉樹として不適。
商業利用状況
- 1970年代後半〜1980年代にかけて、UFの早生ラビットアイ群(Aliceblue/Beckyblue/Climax/後にBonita)として米北中部フロリダの生鮮出荷市場(fresh fruit shipping market)向けに大面積で植栽された。当時、北米最早生の商業ラビットアイ群を構成。
- 1980年代以降、Beckyblueとの交雑不和合性および病害による着果不良の問題から、フロリダでは現在は推奨外。後継のサザンハイブッシュ群(Sharpblue、Star、Emerald等)に商業的役割を譲った。
- 米南東部の他州(ジョージア、アラバマ等)では家庭果樹・小規模商業向けに継続的に流通。
- 「早生ラビットアイ群(Aliceblue/Beckyblue/Bonita/Climax)」は、現在のUF育成プログラムの歴史的礎石として位置付けられる。
日本での状況
- 国内導入: 早生ラビットアイ品種として国内ブルーベリー栽培界に導入され、家庭果樹・小規模観光農園で植栽されている。
- 流通状況: 苗木は花ひろばオンライン、花の大和、Amazon等の通販で流通。ただし主要な定番ラビットアイ(Tifblue、Brightwell、Powderblue等)に比べると流通量は限定的で、品切れも多い。
- 入手性: 1〜3年生挿し木苗、2年生接ぎ木苗が一般流通。10.5cm〜13.5cmポット苗。
- 栽培評価: 「樹勢が強く育てやすい」「糖度が高く生食向き」と評価される一方、収量や収穫適期が短い点が指摘される。東京都三鷹市・吉野果樹園では「味の面ではこの時期いちばんと言える品種」と高評価。
- 国内での収穫期: 関東基準で7月中旬〜8月中旬
育成者注釈・特記事項
- Sharpe博士のレガシー: 1948年からゲインズビルでブルーベリー育種を開始したRalph H. Sharpeの育種計画は、後にPaul Lyrene博士に引き継がれ、現代UFブルーベリー育種プログラム(Sharpblue、Emerald、Jewel、Star等)の礎となった。Aliceblueはその初期成果の一つ。
- 早生ラビットアイ群の意義: Aliceblue/Beckyblue/Bonita/Climaxの4品種は、1970〜80年代に「北米最早生ラビットアイ」として生鮮市場の早期出荷を可能にした歴史的品種群。
- 重要な栽培上の留意点: 'Beckyblue'との混植は不適合であり、近接植栽すると両品種とも着果不良に陥る。受粉樹としては必ず'Climax'や'Bonita'等を選ぶこと。
- 早咲きリスク: 低温要求量が短く(300〜400時間)、暖冬年には2月〜3月に開花が早まり、晩霜害を受けるリスクがある。北限地域では花芽保護対策が望ましい。
- 病害感受性: フロリダでは花房・花蕾での病害(細菌性枯病、灰色かび病等の蓋然性が高い)による着果不良が報告されており、湿潤環境では薬剤管理が必要。
- 果実の高糖度: 糖度16〜18度は早生ラビットアイの中で抜群であり、家庭果樹・直売所向け生食用としての商品価値は高い。
参考情報源
- UF/IFAS Extension – Blueberry Gardener's Guide (CIR1192/MG359)
- UF/IFAS Extension – Blueberry Gall Midge (EENY136/IN293)
- Growing Produce – A Florida Blueberry's Tale
- Southern Region Small Fruit Consortium – Blueberry Cultivars for Georgia (PDF)
- Gardener Direct – Alice Blue Rabbiteye Blueberry
- ToGoGarden – Alice Blue Rabbiteye Blueberry
- ServeScape – Alice Blue Rabbiteye Blueberry
- Garden Vive Florida – Blueberry Cross Pollination Chart
- 花ひろばオンライン – アリスブルー(ラビットアイ系)
- 吉野果樹園 – アリスブルー
- 花の大和オンラインショップ – アリスブルー
- 楽天 花広場 – ブルーベリー収穫時期早見表