ブルージェム Bluegem
ラビットアイ系
系譜・来歴
- 試験番号: Fla. 6-164(フロリダ州試験番号)。
- 育成者: R. H. Sharpe(ラルフ・H・シャープ)および W. B. Sherman(ウェイン・B・シャーマン)両博士、フロリダ大学(ゲインズビル)。
- 来歴: フロリダ大学では1950年からラビットアイ系ブルーベリーの育種を開始し、約4,000個体の実生が結実評価された中から選抜され、1970年に 'Bluegem' として発表された。発表媒体は American Pomological Society の Fruit Varieties and Horticultural Digest(後の Journal of the American Pomological Society)Vol.24, No.3 (1970)。
- 親系譜: 1970年公表時の原典記事には親品種の明記がない(Sharpe と Sherman の論文では交配親の特定記載なし)。一部日本語の二次情報サイトでは「Essick × Callaway」と記す例があるが、一次情報では確認できないため 不明 とする。
- 品種名の由来: 果実および若葉に強く乗る果粉(glaucescence)による「明るい青の宝石(blue gem)」のような外観から命名されたと推察される(公表記事に明示はない)。
樹体特性
- 樹勢: 中程度(moderate)。
- 樹形: やや開張性(moderately spreading)。シュート(吸枝)の発生は限定的。
- 樹高: 'Woodard'(ウッダード)と 'Tifblue'(ティフブルー)の中間程度。およそ 1.5〜2.5 m。
- 特徴: 若葉および果実に強い果粉(glaucescence)が乗り、他のラビットアイ商業品種を上回る明るい青色を呈する。
結実特性
- 開花期: 早い。米南部(フロリダ/南ジョージア)で3月初旬。早咲きのため、晩霜による花芽・幼果の凍害を受けやすい。
- 収穫期: 中〜晩生(mid- to late-season)。米国フロリダ/南ジョージア:6月20日〜25日(公表時記載)/一般に6月中旬〜7月初旬。'Climax' 直後から始まり、果実が硬さを保ったまま長期間樹上に保持できる特長がある。
- 低温要求量: 約 350〜400時間(45°F=7.2°C 以下)。低チル要求でフロリダ・南ジョージアの暖地適応型。
- 収量: 3年生株で 1株あたり 2.5〜5 lbs(約 1.1〜2.3 kg)/1969年フロリダでの実測値。樹上保持性が高く、1回摘みで全果の90%を収穫可能で機械収穫適性が極めて高い。
果実特性
- 果実サイズ: ラビットアイ系として平均的(average for the rabbiteye type)。標準カップ(1 cup)あたり約110粒。
- 果皮色: 強い果粉により非常に明るい青色(light blue)。当時の商業ラビットアイ品種の中で最も明るい外観と評価された。
- 果肉: 硬い(firm)。樹上で長期保持しても柔化しにくい。
- 果梗痕(スカー): 小さく乾いた良好なスカー(small, dry scar)。腐敗リスクが低く取扱性に優れる。
- 食味: 公表記事には風味の詳細記載なし。一般にラビットアイ系として甘味は中程度。果実の食用適期: 青色着色後 1〜2週間経過してからの収穫が推奨される(早採りすると食味が劣る)。
- 機械収穫適性: 1回摘みで90%収穫可能なため、機械収穫に極めて適する(公表時に強調されている特徴)。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 7〜9(ラビットアイ系一般値)。ただし早咲きのため晩霜被害を受けやすい。
- 耐暑性: 良好。フロリダ・南ジョージアの暑熱気候への適応を前提に育成された暖地型品種。
- 耐湿性: 湿害に非常に弱い。湛水・排水不良地では生育不良となるため、水はけのきわめて良い圃場でのみ栽培可とされる(ジョージア州の一般推奨で警告)。
- 病害虫耐性: 公表記事に具体的な耐病性データの記載なし。ジョージア州では現在 植栽推奨から外されており(no longer recommended for planting in Georgia)、樹勢衰弱・根系障害の報告もある。
推奨栽培地
- 米国: フロリダ州北部・中部、南ジョージア州など Zone 7〜9 の暖地。ただし排水良好地に限定。湿地・粘土質地は不適。
- 早咲きで晩霜害を受けやすいため、晩霜リスクの高い内陸寒冷地は不適。
- 現在ジョージア州では推奨植栽品種から除外されており、商業栽培はほぼ過去の品種となっている。
- 日本: ラビットアイ系一般としては関東以西の温暖地が適するが、本品種は日本国内ではほぼ流通しておらず、栽培実績情報も乏しい(不明)。
受粉相性
- 自家結実性: ラビットアイ系一般の特性として 自家不和合性。他品種(同じラビットアイ系)との混植が必要。
- 推奨受粉樹: 公表時記事は 'Woodard'(ウッダード) との混植による受粉を推奨。
- 開花期が近い同系統他品種('Climax'、'Tifblue' など)も理論上は受粉樹として機能可能と考えられる。
商業利用状況
- 1970年代〜1980年代にかけて米国南東部(フロリダ・南ジョージア)で機械収穫対応の中晩生ラビットアイとして一定の商業利用があった。
- 主な商業的利点:①強い果粉による外観の良さ、②樹上保持性の高さと1回摘み収穫率(90%)、③乾いた小さなスカー(取扱性・貯蔵性)、④機械収穫適性。
- 一方で湿害感受性・晩霜害・樹勢衰弱の問題があり、後年のラビットアイ品種('Brightwell'、'Powderblue'、'Premier' 等)にとって代わられ、現在は商業主流から外れている。
- ブラジルでは 'Briteblue'、'Woodard' とともに ラビットアイ商業・試験植栽の主要品種の一つとして位置付けられている。
日本での状況
- 国内導入: 不明。日本国内の主要ラビットアイ品種一覧(25〜30品種程度の標準リスト)に本品種は通常含まれていない。
- 流通状況: 国内主要ナーサリー・園芸通販での流通はほぼ確認できず、苗木の入手性は極めて低い(不明)。
- 栽培評価: 国内栽培事例の信頼できる情報は確認できない。日本語ブログ等では「栽培困難」「樹勢衰弱しやすい」との断片的記述があるが、一次情報での裏付けはなく評価は 不明。
- 旧来品種で、現代の日本のラビットアイ栽培シーンでは 'Tifblue'、'Brightwell'、'Powderblue'、'Climax' などが主流であり、'Bluegem' を選択する積極的理由は乏しいと考えられる。
育成者注釈・特記事項
- 公表媒体: R. H. Sharpe & W. B. Sherman, "Bluegem Blueberry," Fruit Varieties and Horticultural Digest(American Pomological Society)Vol.24, No.3 (1970)。
- 試験番号: Fla. 6-164。
- フロリダ大学のブルーベリー育種は1950年に Sharpe 博士により開始され、本品種はその初期成果のひとつ。同時期のフロリダ大学育種の主軸はサザンハイブッシュ系('Sharpblue' 等)に移行していくが、Bluegem はフロリダ大学のラビットアイ系リリースの代表例として知られる。
- 強い果粉(glaucescence)と機械収穫適性が育成上の大きな差別化点として強調された。
- 一次情報では親系譜が明示されていないため、流通サイト等で見られる「Essick × Callaway」等の記述は 要追加検証 扱い。
- ジョージア州拡張プログラムは、湿害感受性・凍害感受性を理由に近年は本品種を商業推奨品種から外している。
参考情報源
- American Pomological Society, "Bluegem Blueberry" (Sharpe & Sherman, 1970)
- Blueberry Cultivars for Georgia (University of Georgia Extension)
- UF/IFAS Blueberry Gardener's Guide (CIR1192/MG359)
- Productive characterization of the blueberry cultivar Bluegem in Brazil (Agronomía Colombiana)
- Vaccinium virgatum (Wikipedia)
- Dave's Garden, Vaccinium virgatum 'Bluegem'
- Garden.org Plant Database, 'Bluegem'
- LandscapeHub, Vaccinium virgatum 'Bluegem'
- ラビットアイブルーベリー苗木一覧(YKKen)
- ブルーベリー全品種特徴一覧