クロアタン Croatan
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 親系譜: Weymouth × F-6(故 F. V. Coville が行った交配に由来する実生から選抜)。
- 注:依頼文に記載された「Weymouth × Crabbe-4」という表記は一次資料(American Pomological Society 誌)の記述と一致しない。一次資料では「Weymouth × F-6」と明記されている。「Crabbe-4」という親個体に関する情報は本調査では確認できず(不明)。
- 育成・導入: 1955年1月、ノースカロライナ州農業試験場と USDA 植物産業局によって公式導入された。
- 系統的位置づけ: ノースカロライナ州ブルーベリー育種プログラムの初期世代品種の一つ。1950年代以降、長らく同州の早生〜中早生主力品種として商業生産の中核を担った。先発の Wolcott が幹キャンカー(stem canker)被害を受けて衰退した後、Croatan が「ノースカロライナ州産業の主力(mainstay)」となり、ごく近年まで主要品種であり続けた(NCSU 育種プログラム史より)。
樹体特性
- 樹勢: 「直立性で非常に旺盛、極めて多産(erect, exceptionally vigorous and very productive)」と原典に記載される。
- 樹形: 直立〜半直立(semi-upright)。後年の比較試験('New Hanover' 品種特許 USPP19990P3)でも「成熟枝の仕様は他の供試品種と同程度で、半直立の生育習性」と記述。
- 樹高・樹冠サイズ: 具体的数値は本調査で未確認(不明)。
結実特性
- 開花期: 早生群に属するが、具体的な開花時期の数値情報は本調査で未確認(不明)。
- 収穫期: 早生〜早中生(early〜early-midseason)。ノースカロライナ州において Angola・Wolcott よりやや遅く、Murphy より早い。収穫開始から最初の2週間で全果実の約70%が成熟する集中収穫タイプ。
- 比較参考: 後発品種 'New Hanover' は Croatan より3〜4日遅く収穫開始(USPP19990P3)。
- 低温要求量(chill hours): 公式な数値は本調査で未確認(不明)。ただしノースカロライナ州東部(Coastal Plain)の温暖地向けに育成された早生 NHB 品種で、同地域の他の早生 NHB 同様、概ね低〜中程度(推定 500〜600 時間前後)と考えられる。確定情報は不明。
- 自家結実性: NHB は一般に部分的自家結実性を持つが、他品種との混植により結実・果実サイズが向上する。Croatan 単独の自家結実率に関する具体データは本調査で未確認(不明)。
- 収量: 「極めて多産(very productive)」と原典記載。具体的な単位面積あたり収量データは本調査で未確認(不明)。
- 結実習性: 果実は長くやや疎な、見栄えのよい果房(long, fairly loose, attractive clusters)に着生し、機械収穫・手摘み双方に適する。
果実特性
- 大きさ: 中〜大粒。Angola、Wolcott、Weymouth、Murphy よりわずかに大きい(原典)。一方、2000年代以降に育成された New Hanover 等と比較するとやや小さめ(USPP19990P3 比較試験)。
- 色・果皮: 一般的なハイブッシュ型の青色果(具体記述は確認できず/不明)。
- 食味: 熟度に応じて芳香があり、酸味から甘味まで変化する(原典)。完熟果は甘味あり。
- 果実硬度: 中程度の硬さ(medium-firm)。後年の品種(New Hanover 等)と比較すると硬度はやや劣り、これが Croatan が後継品種に置き換わってきた一因とされる。
- 果柄離れ・果痕(pedicel scar): 原典で果房が「疎(loose)」と評され、収穫適性は良好と示唆されるが、具体的な果痕乾湿性等の詳細は本調査では未確認(不明)。
- 日持ち(shelf life): 後発品種 New Hanover に対して全保管温度区で日持ちが劣ると記述(USPP19990P3)。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 一般的なノーザンハイブッシュとして温帯〜冷温帯に適応するが、本品種はノースカロライナ州東部(沿岸平野部)向けに選抜されており、原典は「北部地域(より寒冷な地域)への推奨はしない」と明記。耐寒性は中程度。
- 耐暑性: 中庸(中部大西洋〜南東部温暖地での商業栽培実績)。
- 耐病性:
- 幹キャンカー(stem canker, Botryosphaeria 属菌等): 「耐性はあるが免疫ではない(resistant but not immune)」(原典)。同地域の Wolcott がキャンカーで衰退した後、Croatan がそれを置き換える役割を果たした。
- 芽ダニ(bud mite): Wolcott、Murphy、Weymouth よりも耐性が高い(原典)。
- その他病害(ミイラ病、根腐れ等)への耐性: 本調査で具体記述は確認できず(不明)。
推奨栽培地
- ノースカロライナ州東部(沿岸平野部, Eastern North Carolina / Coastal Plain)を中心とする中部大西洋地域(Mid-Atlantic)の温暖地。
- 原典は「北部地域には推奨されない」と明示。すなわち、より寒冷な北東部・北中西部の冷地向き品種ではなく、米国南東部の温暖湿潤気候帯(USDA Zone 7〜8 程度の沿岸地域)向けに育成された早生 NHB。
受粉相性
- ノーザンハイブッシュは部分的自家結実性を持つが、商業栽培では他品種混植による相互受粉が推奨される。
- Croatan に対する具体的な推奨受粉樹品種は本調査で未確認(不明)。同時期に開花する他の早生〜早中生 NHB 品種(同地域では Murphy、Wolcott 等が伝統的に併植された)との混植が想定される。
商業利用状況
- かつてはノースカロライナ州ブルーベリー産業の標準商業品種(traditional standard commercial cultivar)として、長年にわたり同州の早中生帯の主力を占めた。USPP19990P3(2005年出願)の段階でも「ノースカロライナ州における早中生工業標準(the current early midseason industry standard in North Carolina, the cultivar 'Croatan')」と記述されている。
- 2010年代以降、果実サイズ・硬度・日持ちで上回る後発品種(New Hanover、Pinnacle 等)への置き換えが進み、商業栽培面積は減少。
- 現在は同州内に大規模生産者が限られ、たとえば Morris Blueberry Farm(NC州)が「現在 NC 州に残る最大の Croatan 圃場」を運営していると報じられている(visitncfarms.com)。
日本での状況
- 日本国内のブルーベリー苗木・園芸流通において、Croatan の流通実績は本調査では確認できず(不明)。日本でのノーザンハイブッシュ品種としては Bluecrop、Duke、Spartan、Patriot、Berkeley などが主流で、米国南東部沿岸向けに育成された Croatan は、日本国内の商業栽培・家庭園芸向けの推奨リストに掲載される事例は確認できなかった。
- 試験研究機関や個人コレクターレベルで保有・栽培されている可能性はあるが、確定情報は不明。
- 日本の気候帯(特に冬季の低温要求量)との適合性は、温暖地(西日本太平洋側)であれば理論上は栽培可能と推察されるが、具体的な国内栽培評価データは確認できず(不明)。
育成者注釈・特記事項
- 育成者の F. V. Coville(フレデリック・ヴァーノン・コビル, 1867–1937)は北米ハイブッシュブルーベリーの近代栽培化の祖であり、Croatan は彼の死後、後継研究者が彼の交配実生から選抜した「Coville レガシー品種」の一つにあたる。
- 品種名「Croatan」はノースカロライナ州の沿岸地域・歴史地名(クロアトアン島/ロアノーク植民地)に由来する地理的命名と考えられる(一次資料での命名由来の明示は本調査では確認できず/不明)。
- 親系譜について依頼文の「Weymouth × Crabbe-4」表記は一次資料「Weymouth × F-6」と一致しない点に留意。F-6 は Coville が行った交配における選抜系統番号と考えられるが、Crabbe-4 との同一性については確認できず(不明)。
- ノースカロライナ州ブルーベリー育種史において、Wolcott の後を継いで主力となった「世代交代の架け橋」品種として歴史的意義が大きい。
- 種苗権・植物特許: 1955年導入の公的品種であり、米国植物特許の存在は本調査で確認できず(不明)。
参考情報源
- American Pomological Society Journal, Vol.10 No.2 "The Croatan Blueberry"(一次品種記載文書)
- NCSU Blueberry Genetics & Genomics Laboratory — Blueberry Breeding Program History
- NC State Extension — Blueberries History
- US Plant Patent USPP19990P3 — "Blueberry plant named 'New Hanover'"(Croatan を比較対照品種として詳述)
- The NC Blueberry Journal — "Blueberry cultivar 'NEW HANOVER'"(Croatan との比較記述)
- North Carolina History — "North Carolina's State Blue Berry"
- Morris Blueberry Farm — Visit NC Farms(現存する大規模 Croatan 圃場の例)
- NC State Extension Publications — Blueberry Production for Local Sales and Small Pick-Your-Own Operators