マイヤーズ Myers
ラビットアイ系
選抜者・由来
- タイプ: ラビットアイ(Rabbiteye)系 — 古典的「四大創始者(four founders)」の一つ(野生選抜種)
- 選抜者: 不明(一次資料未確認)。フロリダ州の鉄道沿線地域を中心とした初期商業ラビットアイ栽培者群の中で見出された地方品種と推定される。M. A. Sapp が1893年頃にフロリダ西部で野生ラビットアイ株を圃場へ移植した最古級記録があり、Myers もこの系譜上の野生選抜のひとつとして継承された可能性が高い(直接的選抜者は本調査では特定不能)
- 選抜地・原産地: 米国フロリダ州(Florida)の野生集団からの選抜(フロリダ系野生選抜種)
系譜・来歴
- 親系譜: 野生選抜種(Vaccinium virgatum 自然集団からの個体選抜)であり、人工交配の親系譜は存在しない。
- 由来: 米国フロリダ州の野生ラビットアイ群落から選抜された地方系統。日本の解説資料では「フロリダ州から選抜された野生選抜種で、濃い果実色が特徴」と紹介される。
- 来歴の文脈: 1887年〜1930年頃のフロリダ州におけるラビットアイ商業栽培黎明期(Lyrene and Sherman, 1979 "The rabbiteye blueberry industry in Florida-1887 to 1930")に、複数の野生選抜系統が育成・流通した時代背景がある。1893年に M. A. Sapp が西フロリダで初の商業的ラビットアイ植栽を行ったとの記録があり、Myers もこの黎明期に流通した地方系統の一つとして認識される。
- 1930〜1940年代に、ジョージア大学沿岸平原試験場(Tifton)に野生選抜素材として 'Ruby', 'Black Giant', 'Hagood', 'Suwannee', 'Clara', 'Myers', 'Ethel', 'Walker' 等が収集・移植され、ラビットアイ近代育種の出発素材となった。
- 1944年に Dr. W. T. Brightwell がティフトンに着任し、USDA の G. M. Darrow らと共同でこれら野生選抜素材を用いた近代ラビットアイ育種を本格化させた。
- 「四大ラビットアイ創始者」としての位置づけ: 'Myers'・'Black Giant'・'Ethel'・'Clara' の4選抜は、現代ラビットアイ商業品種の核ゲノム遺伝子のほぼ全てが由来する「ラビットアイ近代育種の四大創始者(four founders / four foundation selections)」と位置づけられている。'W4' を加えた5創始者で現代ラビットアイ栽培品種の遺伝組成の最低73%を占めるという系譜解析(Pedigree Analysis of Rabbiteye Blueberry, 2025)が報告されている。
- 品種名の由来: 不明(フロリダ州の初期選抜者または所有者の姓「Myers」に由来する人名命名と推察されるが、一次資料未確認)
樹体特性
- 樹勢: 強い(vigorous)と推定される。野生選抜由来のラビットアイは概して強健性が高く、Myers もその例外ではない(一次資料による定量記載は本調査では不明)
- 樹形: 不明(具体的記述を一次資料で確認できず)。一般にフロリダ系野生ラビットアイ選抜種は半直立〜開帳性を示す傾向がある。
- 樹高: 不明(成熟野生個体は3〜5 m に達することがあるが、Myers 個体の正式な記載値は未確認)
- 特徴: 「野生選抜種そのままの形質を強く残す素材」として系統保存されており、商業的果実品質では後代改良品種(Tifblue, Brightwell, Premier 等)に大きく劣るが、樹勢・適応性・遺伝的多様性提供源としての価値が高い。
結実特性
- 開花期: 不明(米国南東部のラビットアイ標準時期、3月下旬〜4月と推定)
- 収穫期: 不明(中生〜晩生のラビットアイ標準時期、6月〜7月と推定)
- 低温要求量: 不明(ラビットアイ平均で約400〜700時間程度と想定)
- 収量: 不明。商業生産対象品種ではなく、育種母本として用いられる素材であるため、栽培収量データは公表されていない。
果実特性
- 果実サイズ: 小〜中粒と推定される(野生選抜種に共通する小粒傾向)。一次資料における正式数値は不明。
- 果皮色: 暗青色〜黒青色(dark blue to black-blue)。日本の二次資料では「濃い果実色が特徴」と明記される。Myers の最大の表現型特徴の一つ。
- 果肉: 不明(具体的硬度・果汁性の記述未確認)
- 食味: 不明(商業品種としての評価データは存在しない)
- 用途: 育種母本としての利用が主目的。商業流通や生食用栽培の事例はほぼなく、ラビットアイ育種プログラム保存圃場および研究機関での保存・利用が中心。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: 不明(フロリダ原産のためラビットアイ標準域 USDA Zone 7〜9 と推定)
- 耐暑性: 強いと推定(フロリダ原産野生選抜のため、暖地・湿潤気候への適応性は高い)
- 耐病性: 不明。野生選抜のため一定の病害抵抗性を保有する可能性が指摘されるが、定量的評価データは未確認。
推奨栽培地
- 商業栽培の推奨地: 該当なし(商業流通品種ではない)
- 研究・保存利用: 米国ジョージア州ティフトン(UGA 沿岸平原試験場)、USDA-ARS 関連機関、その他の研究圃場でラビットアイ育種素材として保存・利用される。
受粉相性
- 自家結実性: ラビットアイ全般の特性として自家不和合性が強いと推定(Myers 個体の正式評価は不明)
- 交配適合性: 同種(V. virgatum)の他のラビットアイ系統と広く交配可能であり、実際にラビットアイ育種プログラム内で多数の他系統と交配されている。
商業利用状況
- 商業流通品種としての位置: なし。Myers は商業栽培用品種ではなく、ラビットアイ育種における遺伝資源・育種母本としてのみ機能する。
- 遺伝資源としての価値: 極めて高い。現代ラビットアイ商業品種の核ゲノムの大部分が由来する4大創始者の一つとして、ラビットアイ育種史における最重要素材の一つに数えられる。
日本での状況
- 国内導入: 商業流通品種としての国内導入記録は確認されない。日本のブルーベリー研究機関や育種家が遺伝資源として導入した可能性は否定できないが、一般園芸市場・苗木市場での流通は確認されていない。
- 国内認知: ブルーベリー愛好家・専門家の間では「フロリダ系野生選抜種で、Homebell(ホームベル)の母本」として知られる。日本の解説サイト(ブルーベリーファクトリー岐阜等)でメンデイト(Menditoo)の親情報として紹介される程度。
育成者注釈・特記事項
Homebell(ホームベル)の母本としての貢献
- 'Homebell'(ホームベル、1950年頃 USDA/UGA リリース)の親系譜として記録される交配組合せ「'Myers' × 'Black Giant'」の母本(または片親)として用いられた。
- Homebell は日本でも「ラビットアイ御三家」(ホームベル・ティフブルー・ウッダード/別説で〜ブルーシャワー)の一角として長年定着した古典品種であり、Myers はその系譜の起源にあたる。
- 同じ「Myers × Black Giant」交配からは別系統として 'Menditoo'(メンデイト、1958年発表)も育成されている。両品種ともフロリダ系野生選抜由来の双子的姉妹系統と捉えられる。
現代ラビットアイ品種への遺伝寄与
- Myers は4大ラビットアイ創始者(Myers, Black Giant, Ethel, Clara)の一つとして、ほぼすべての現代ラビットアイ商業品種に遺伝的に継承されている。
- 主要派生品種・系譜上の子孫例:
- 直接の子: Homebell(Myers × Black Giant)、Menditoo(Myers × Black Giant、1958)
- 孫世代: Premier(Tifblue × Homebell, 1978, NCSU/USDA-ARS)— Myers を曾祖父母として遺伝的に継承
- より遠い子孫: Ochlockonee, Columbus, Brightwell, Powderblue 等 — Menditoo や Homebell を経由して Myers の遺伝が継承される(例: Columbus = Tifblue × Menditoo, 1975年選抜)
- 育種系統: T-65('Walker' × 11-180、ここで 11-180 = 'Myers' × 'Black Giant')→ Alapaha 等への系譜
- 系譜解析(Pedigree Analysis of Rabbiteye Blueberry, 2025)によれば、5創始者(Myers, Black Giant, Ethel, Clara, W4)で現代ラビットアイ栽培品種の遺伝組成の最低73%を占める。Myers 単独でも数%〜十数%レベルの遺伝寄与を持つと推定される(具体的%値は本調査では未特定)
4大ラビットアイ創始者としての位置づけ
- 学術論文・育種プログラム公式資料において、Myers は 'Black Giant'・'Ethel'・'Clara' とともに「現代ラビットアイブルーベリーの4大創始者(four founders / four foundation cultivars)」 と明記される存在である。
- 4大創始者の対応関係(古典的初期交配): Myers × Black Giant → Homebell(1950頃)、Menditoo(1958)/Ethel × Clara → Tifblue(1955)/これら4選抜の組合せが1950年代以降の主要ラビットアイ品種すべての遺伝的基盤となっている。
- 育種学的意義(正の側面): フロリダ・ジョージア野生集団の優良形質(暖地適応性、耐暑性、耐乾性、土壌適応性)を集約的に保持し、暖地ブルーベリー商業栽培の確立に決定的貢献。
- 育種学的意義(負の側面): わずか4選抜への依存により現代ラビットアイ品種の遺伝的多様性が極めて狭く(narrow genetic base)、近交弱勢(inbreeding depression)の発現リスクが指摘されている。これがラビットアイ育種における将来的課題(新規野生選抜・関連種交雑の必要性)の起点となっている。
不確実情報・本調査の限界
- Myers の選抜年・選抜者・選抜地点の詳細は一次資料(USDA リリースノート、初期 Coastal Plain Experiment Station 報告書、Brooks and Olmo Register 等)に直接アクセスできず、本調査では特定不能。
- 樹体・結実・果実特性の定量データはほぼ公表されておらず、「商業評価対象ではなく育種素材として保存」という性質上、栽培品種同等の詳細記述は存在しない。
- 'Myers' の名称由来(人名・地名いずれか)は不明。
- 親「Black Giant」も同様にフロリダ系野生選抜種であり、両者の選抜地・選抜年・選抜者の詳細も不明部分が多い。
参考情報源
- UGA Plant Breeding — UGA Blueberry Breeding Program History
- ResearchGate — Pedigree Analysis of Rabbiteye Blueberry Indicates Limited Genetic Diversity
- Springer / Economic Botany — Lyrene and Sherman (1979) The rabbiteye blueberry industry in Florida-1887 to 1930
- American Pomological Society — Journal Vol. 44 No. 2 Rabbiteye Blueberry
- Justia Patents — Rabbiteye blueberry plant named 'Ochlockonee' (PP 17,300, 2006)
- ブルーベリーファクトリー岐阜 — メンデイト(Menditoo)
- ブルーベリー全品種特徴一覧表(fruitplantsvariation)
- eXtension — Premier: Rabbiteye Blueberry Variety
- Berries Unlimited — Tifblue Rabbiteye 紹介