ノースランド Northland
ハーフハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配組合せ: Berkeley × 19-H
- Berkeley は標準的な北部ハイブッシュ品種(V. corymbosum)。
- 19-H は野生ローブッシュ(V. angustifolium)と Pioneer 実生との交配個体(lowbush × Pioneer seedling)。
- 育成者: Stanley Johnston(スタンレー・ジョンストン、1898–1969)および J. E. Moulton(ジェームズ・モールトン)。
- 育成経緯: ミシガン州南部でしか栽培できなかった高木性ハイブッシュと、ミシガン州北部に自生する低木性ローブッシュを交配し、州内全域で栽培可能な耐寒性中型ブッシュを得る目的で実施。1948年に交配、1952年に選抜、1967年(資料により1968年公開と記載されることもある)に MSU から品種公表。
- ジョンストンは「Red Haven」(モモ)の育成者としても著名で、Northland と同時期に Bluehaven なども作出。
樹体特性
- 樹高: 約 90〜120 cm(3〜4 ft)。強剪定により 150〜180 cm に達する場合もある。
- 樹形: 半樹高(ハーフハイ)の半直立〜開張、コンパクトでまとまりやすい。枝はやや柔軟(しなやか)で、積雪圧で折れにくく、雪に埋もれての越冬適応性に寄与。
- 生育勢: 旺盛で、同類のハーフハイ品種よりも樹勢が強いとされる。
- 観賞価値: 秋に黄橙色の紅葉、冬季は明るい黄色の枝が映える。春先には白〜淡桃の鐘形花が多数着く。
結実特性
- 開花期: 4月中旬〜5月中旬(日本平均)/米国では 4月上旬〜下旬。中生開花。
- 収穫期: 早生〜中生(early to mid-season)。
- 米国北部: 7月初旬(おおむね7月7日前後)から8月にかけて収穫。
- 日本: 6月中旬〜6月下旬(花ひろばオンライン)、7月中旬(販売店資料)など栽培地により幅あり。
- 低温要求量(Chill Hours): 北部ハイブッシュ系一般値として 800〜1,000時間(7.2℃以下)。Northland 個別の確定数値は公開資料で見当たらず「不明(系統一般値を準用)」。
- 収量: 1株あたり 3〜12 lb(1.4〜5.4 kg)、最大級では 15〜20 lb(6.8〜9 kg)の報告も。極めて豊産性で「最大級の収量を持つ品種のひとつ」と評価される。
果実特性
- 粒径: 小粒〜中粒(直径 12〜14 mm 程度、約 136 粒/カップ)。
- 色: 明青〜濃青、白い果粉良好。
- 食味: 甘味が強く果汁多い。野生ローブッシュ由来の濃厚で芳醇な「ワイルドベリー風味」を残す点が特徴で、典型的なハイブッシュより風味が深い。完熟前はやや酸味が強い。
- 果肉: 中程度の硬さ。生食、ジャム、製菓、冷凍いずれにも適する。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA Zone 3(最低気温 -34〜-40℃)まで耐える、北部ハイブッシュ/ハーフハイの中で最も耐寒性が高いクラスのひとつ。資料により「-30°F(≒ -34℃)まで耐寒」「ハーフハイは Zone 3 で安定栽培可」など表現に幅。-40℃水準は積雪被覆下での生存報告に基づく実用上限と理解される。
- 耐霜性: 開花期の軽霜には比較的耐性あり。
- 耐病性:
- ミイラ果病(Mummy berry, Monilinia vaccinii-corymbosi): WSU の品種スクリーニングで Duke と並び果実感染率が最も低かったとの報告あり。一方、PNW Disease Handbook では感受性品種リストにも掲載され、新梢ブライト相には感受性が残る可能性が指摘される。
- その他の病害虫耐性に関する個別公表データは限定的。寒冷地適応の枝条特性により凍害は受けにくい。
推奨栽培地
- 米国/カナダ: USDA Zone 3〜7(一部資料で 3〜8)。極寒地のミネソタ、ミシガン北部、五大湖周辺、ニューイングランド、カナダ南部に適する。
- 日本:
- 北海道(南部以南が安全圏。積雪被覆があれば道北・道東でも越冬可能)。
- 東北全域、北陸、長野・山梨など寒冷地で特に推奨。
- 関東以西では夏の高温・葉焼けに注意。鉢栽培で午後日陰など対策推奨。
- 弱酸性(pH 4.5〜5.5)、排水良好な土壌を好む。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的自家結実(1本でも一応着果するが、結実数・粒径とも単植では劣る)。
- 推奨: 同系(北部ハイブッシュ、ハーフハイ)の異品種を 1本以上混植し他家受粉させると、収量・果実サイズが顕著に増加。
- 受粉樹候補: Bluecrop、Berkeley、Patriot、Duke、Bluegold、Polaris、Chippewa、St. Cloud、Dixie など同時期開花のハイブッシュ/ハーフハイ。
- 訪花昆虫: 振動授粉(buzz pollination)するマルハナバチ等が有効。
商業利用状況
- 北米寒冷地(ミネソタ、ミシガン、ウィスコンシン、ニューイングランド、カナダ)で家庭果樹および小規模商業栽培に普及。
- 大規模機械摘み果プラント向けの主流品種ではないが、極寒地の補完品種、U-pick(観光摘み取り)園、ジャム・加工原料用として商業利用される。
- 風味が濃く加工適性が高い(ジャム、ベイク、冷凍)ため、地域ブランド・直販流通に強み。
日本での状況
- 日本国内でノーザンハイブッシュ/ハーフハイ系の代表的寒冷地向け品種として広く流通。
- 主要販売: 花ひろばオンライン、グリーンでGO!、園芸ネット、イタンセ、Amazon.co.jp ほか多数のオンラインナーサリー。
- 2年生・3年生の挿し木苗が一般的。価格帯は 2,000〜3,500円程度(時期により変動)。
- 一般社団法人 日本ブルーベリー協会のハイブッシュ系紹介でも寒冷地向け品種として言及。
- 北海道のブルーベリー園(例: ベリーファームとようら)でも紹介・栽培される事例あり。
育成者注釈・特記事項
- ジョンストン&モールトンの目的は「ミシガン州全域で栽培可能なブルーベリー」。Northland はその最初期の代表的成果で、ハーフハイブッシュ概念を商業品種として確立した先駆例のひとつ。
- 後続のハーフハイ品種群(ミネソタ大学の Northblue、Northsky、Northcountry、Polaris、Chippewa、St. Cloud など)の系譜・育種思想に大きな影響を与えた。
- 雪に埋もれての越冬を前提とした樹高設計(120cm 以下)と柔軟な枝が特徴で、北方寒冷地の家庭果樹として定番。
- 観賞価値(秋紅葉、冬の黄色い枝、春の白花)が高く、エディブル・ランドスケープ用途にも適する。
参考情報源
- MSUToday「Building a better blueberry」
- MSU AgBioResearch「Building a better blueberry: A Spartan breeder perfects one of Michigan's finest fruits」
- Stanley Johnston Papers (MSU Archives, UA.17.132)
- Stanley Johnston papers (Finding Aids)
- Roots to Fruits Nursery「Northland Blueberry Bushes」
- Walden Heights Nursery「Northland Blueberry」
- Nutcracker Nursery「Northland Blueberry」
- One Green World「Northland Blueberry」
- Gurney's「Semi-Dwarf Northland Half-High Blueberry」
- RHS「Vaccinium 'Northland'」
- Gardenia「Vaccinium corymbosum 'Northland'」
- Smart Gardener「Blueberry: Northland Overview」
- WSU Extension「Screening blueberry genotypes for mummy berry fruit rot susceptibility」
- PNW Plant Disease Management Handbook「Blueberry-Mummy Berry」
- 花ひろばオンライン「ブルーベリー ノースランド」
- 園芸ネット「ブルーベリー(ハイブッシュ系):ノースランド」
- ベリーファームとようら「北海道でのブルーベリーの育て方」
- 一般社団法人 日本ブルーベリー協会「ハイブッシュブルーベリーについて」
- 旬旬食彩ダイニング「寒冷地に強いブルーベリーの選択」