ヴァーノン Vernon
ラビットアイ系
系譜・来歴
- 親系譜: T-23(種子親/♀)× T-260(花粉親/♂)の人工交配により得られた実生選抜系統。
- T-23 は W4 × Callaway(キャラウェイ)の後代系統
- T-260 は Brightwell(ブライトウェル) × T-139 の後代系統
- 来歴: 1990年、ジョージア州ティフトンの Coastal Plain Experiment Station にて D. Scott NeSmith 博士と Arlen D. Draper 博士により交配・選抜。長期評価を経て2004年にジョージア大学とUSDA-ARSの共同品種として公式リリース。米国植物特許 USPP18,291 は2005年に出願され2007年に発行された。
- 品種名の由来: 米国南部の地名(Vernon, Georgia ほか)に由来するとされるが、命名理由は公開資料では明示されていない(不明)。
樹体特性
- 樹勢: 強い(vigorous)。UGA公式説明では「優れた樹勢(excellent plant vigor)」と評価される。一部の日本国内栽培記録では「中程度」とする評価もあり、栽培環境による差がある。
- 樹形: 半直立性〜開張性(semi-upright to spreading)。枝が横に広がりやすい傾向があり、早期の支柱誘引が推奨される。
- 樹高: 植栽4年目で 1.5 m 以上に達する。成木では一般的なラビットアイ系と同程度(1.8〜3 m)に成長。
結実特性
- 開花期: 早生〜中早生。50%開花日の平均は3月17日(米南ジョージア基準)。Climax より約10日遅く、Premier より約5日遅い開花。これにより遅霜回避性が向上している。
- 収穫期: 早生(early season)。50%成熟日の平均は5月31日(米南ジョージア)、開花から成熟まで約75日。Climax および Premier より数日早く成熟。
- 米国南ジョージア:5月下旬〜6月中旬
- 日本(東海・三河地方の栽培例):7月上旬〜7月下旬
- 低温要求量: 約 450〜550時間(45°F=7.2°C 以下)。
- UGA公式情報・eXtension:450時間以下
- 米国植物特許明細書および日本販売業者情報:500〜550時間(7°C以下)
- 暖地適応性が高く、米国USDA Zone 6〜9 に対応。
- 収量: 多収性。5〜6年平均で1株あたり 12.8 lb(約5.8 kg)/年。Climax比 +86%、Premier比 +29% の増収を示す。アラバマ州試験(2022年)では総収量599.3gで試験品種中最高(ただし当年は晩霜被害があり参考値)。
果実特性
- 果実サイズ: 大粒(large)。
- 直径 16.0〜18.0 mm、果高(萼〜果梗痕)12.5〜13.5 mm
- 1果重 1.7〜1.9 g(初回収穫)/1.4〜1.7 g(2回目以降)
- 試験圃場では平均果重 2.5 g の報告例あり
- 果皮色: 紫青色(violet-blue)にブルーム(果粉)あり。果粉を除くと黒色に近い。
- 果肉: 非常に硬い(firmness 8.5/10、Premier の 7.4 を上回る)。貯蔵性・棚持ちに優れる。
- 果梗痕(スカー): 小さく乾いた良好なスカー(small, dry scar)。輸送・流通適性が高い。
- 食味: 酸味が少なく、やわらかい甘みが特徴。風味(flavor)も良好と評価される。
- 機械収穫適性: 良好。商業園での機械収穫に適する。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 6〜9。ラビットアイ系の標準的な耐寒性。
- 耐暑性: 良好。米南東部(ジョージア、フロリダ北部、アラバマ等)の高温多湿環境で実証済み。
- 遅霜耐性: Climax より約10日遅く開花するため、早春の遅霜被害リスクが他の早生ラビットアイ品種より低い。ただし暖冬年には開花が早まる場合がある。
- 病害虫耐性: 公開資料では特定病害(茎枯病、根腐病、ミイラ病など)に対する個別の耐性数値は公表されていない(不明)。一般にラビットアイ系の頑健性を保持していると評価される。
推奨栽培地
- 米国: ジョージア州を中心とする南東部(USDA Zone 6A〜9B)。Climax および Premier の代替・置換用早生品種としてUGAが公式推奨。
- 日本: 関東以西の暖地〜温暖地。ラビットアイ系が成立する地域全般で栽培可能。観光農園・商業園での導入実績あり(東海・九州など)。
- 不向き地域: 寒冷地(東北北部・北海道)はラビットアイ系全般に不向き。
受粉相性
- 自家結実性: ラビットアイ系のため自家不和合性(self-incompatible)が強く、他家受粉が必須。
- 推奨受粉樹: 同一系統(ラビットアイ系)で開花期が重なる別品種。
- Alapaha(アラパハ): 最も推奨される組み合わせ。開花期の重なりと相性に優れる。
- その他の早生〜中生ラビットアイ系(Climax、Premier、Brightwell など)も適合。
- 注:ハイブッシュ系とは倍数性(ラビットアイは六倍体、ハイブッシュは四倍体)が異なるため受粉樹として不適。
商業利用状況
- 位置付け: 米国南東部のラビットアイ商業栽培における 早生主力品種 として、従来主力だった Climax および Premier の置換・代替品種としてUGAが推奨。
- 特徴的価値:
- 早生で市場価格が高い時期に出荷可能
- 大粒・高収量・果実硬度・乾いたスカーにより生鮮流通適性が高い
- 機械収穫適性が高く、労働コスト削減に寄与
- 良好な貯蔵性・棚持ちにより遠隔市場への出荷が可能
- 特許状況: 米国植物特許 USPP18,291 は2025年10月に満了。これ以降は無許諾増殖が技術的には可能(ただし国際的な品種登録・契約は別途存続)。
日本での状況
- 国内導入: ジョージア大学との契約に基づき、オーシャン貿易株式会社(愛知県)が日本国内における 独占増殖販売権 を保有。
- 日本品種登録番号: 第16969号(農林水産省品種登録)。
- 流通形態: オーシャン貿易から12cm鉢2年生苗相当が販売(税込2,200円前後、2025年実績)。出荷は秋(10月〜11月)が中心で、年により完売・予約販売となる。
- 栽培評価:
- 「ハイブッシュとラビットアイの収穫の谷間を埋める重要な品種」として位置付けられている
- ブライトウェルより約10日早く収穫できる早生性が国内でも評価される
- 大粒で収穫作業効率が高い
- 観光農園でのブルーベリー狩り提供品種としての導入例あり(愛知県・三河地方など)
- 増殖規制: 育種元との契約により、オーシャン貿易の許可なく増殖・販売は不可。家庭栽培以外の流通には注意が必要。
育成者注釈・特記事項
- 育成者: D. Scott NeSmith 博士(ジョージア大学、ブルーベリー育種家)と Arlen D. Draper 博士(USDA-ARS、ラビットアイ育種の権威)の共同育成。NeSmith 博士はジョージア大学のブルーベリー育種プログラムにおいて多数の品種(Alapaha、Brightwell ほか)を世に送り出した中心人物。
- 育成意図: 既存早生ラビットアイ(Climax、Premier)の遅霜被害リスク・収量・果実品質の限界を改善することを目的に育成された。
- 強み: 開花期が遅め(遅霜回避)でありながら成熟は早い、大粒、多収、機械収穫適性、良好な貯蔵性という複数の商業的長所を併せ持つバランス型早生品種。
- 注意点:
- 暖冬年に開花が予想より早まる場合があり、年により遅霜被害を受けるリスクは完全には解消されない(UGA公式が明記)。
- 自家不和合性のため、商業園・家庭園いずれも適切な受粉樹(特に Alapaha)の混植が必須。
- 樹形が広がりやすいため早期の整枝・誘引管理が推奨される。
- 歴史的位置付け: UGAブルーベリー育種事業における2000年代の代表的な早生ラビットアイ品種で、Alapaha とともに南東部商業栽培の構造を更新した品種の一つ。
参考情報源
- Georgia's Integrated Cultivar Release System – Vernon
- Google Patents – USPP18291P3 Rabbiteye blueberry plant named 'Vernon'
- eXtension Foundation – Vernon: Rabbiteye Blueberry Variety
- eXtension Foundation – Early Season Blueberry Varieties
- Rabbit Ridge Berry Farm – Vernon
- Alabama Cooperative Extension System – Early Performance of Newly Released Blueberry Cultivars
- Plants for Everyone – Blueberry, Vernon (Rabbiteye)
- Free Patents Online – Rabbiteye blueberry plant named 'Vernon'
- オーシャン貿易オンラインショップ – バーノン【RE系ブルーベリー】
- オーシャン貿易株式会社 – 果樹栽培関連 品種紹介
- ブルーベリースター三河 – バーノン
- ブルーベリー狩り農園 かけ×らぼ – バーノン