ウッダード Woodard
ラビットアイ系
系譜・来歴
- 親系譜: Ethel(エセル)× Callaway(キャラウェイ)の交配から選抜された実生系統と国内資料で記載される。一次育成記録(米英語の公式リリース論文)の直接確認は今回行えず、本記載は国内園芸資料(花ひろばオンライン等)に基づく。
- 来歴: ジョージア州ティフトンに設置されたUGA沿岸平野試験場(Coastal Plain Experiment Station)で、1925年以降O.J. Woodard氏が25系統の野生ラビットアイ実生を植え付けて開始した育種事業に端を発する。同事業の後継育種家らによって1960年に公表され、ラビットアイ系の早生代表品種として商業流通に乗った。Tifblue(1955年公表)に続くUGA初期ラビットアイ品種群の一つ。
- 品種名の由来: ジョージア州のラビットアイブルーベリー栽培の開拓者O.J. Woodard氏(UGA沿岸平野試験場)に由来する顕彰命名。
- 位置付け: 米国南部のラビットアイ商業栽培初期を支えた古典品種で、後続の改良品種(Brightwell、Premier、Powderblue等)が広まる以前の主力。
樹体特性
- 樹勢: 中程度。米資料では「short and spreading」と表現され、ラビットアイ系の中ではやや背丈が低くまとまりやすい。一部の国内資料では「樹勢いまいち」「結実不良が多い」とも評され、生産者による評価のばらつきがある。
- 樹形: 開張性(spreading)。株元から多くのシュートが発生する。横枝・下垂れ枝の発生が多く、樹形管理に手間がかかるとされる。
- 樹高: 約 1.5〜3.0 m(5〜10 ft)。資料により幅があるが、家庭栽培では2〜3 m程度。
- 紅葉: 秋に赤〜赤橙色に紅葉し、観賞性もある。
結実特性
- 開花期: 早咲き(early bloom)。米南部では晩冬〜早春、関東標準で4月上旬〜中旬。早咲きのため遅霜による花・幼果の凍害を受けやすい。
- 収穫期: 早生〜中生(early〜mid season)。
- 米国南ジョージア:5月中旬〜下旬(最早期)または6月上旬〜7月下旬と資料により幅がある。
- 日本(関東標準):7月中旬〜8月上旬(一部資料では7月中旬〜8月下旬)。
- 低温要求量: 約 350〜400時間(45°F=7.2°C 以下)。ラビットアイ系の中では低めで、温暖地適応性が高い。
- 収量: 中程度。マッチャー樹で最大約15ポンド(約6.8 kg)/株の例。豊産性とされる国内資料がある一方、開花数の割に落果が多く実付きが悪いとの指摘もある。
- 結実上の特性: 「開花が多いわりに落果が多い」「裂果が多く結実性やや不良」「後半の果実は粒揃いが悪い」との注意点が国内資料で頻出。花を咲かせすぎないよう摘花調整が推奨される。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜大粒(17〜21 mm、最大果19〜20 mm程度)。シーズン初期の果実が最も大きい。
- 果皮色: 明るい青色〜銀青色(light blue〜silvery blue)。果粉(ブルーム/粉白)が豊かに乗る。
- 果肉: やや軟らかい(somewhat soft)。生果出荷・長距離輸送には不向き。
- 果梗痕(スカー): 湿ったスカー(wet scar)になりやすく、生鮮市場流通には不利。
- 食味: 完熟果は瑞々しく甘味が強く、香りも良好で「極めておいしい」と評される。糖度は12〜20度と国内資料で報告される。一方、収穫直後(完熟前)はやや酸味が強い特性がある。
- 加工適性: 冷凍すると果皮が硬くなる傾向があり、加工処理用にも推奨されない(米ジョージア州資料)。家庭利用ではジャム・ジュースに活用可能。
- 裂果性: 裂果が多めで、降雨期の管理に注意。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 7〜9(一部資料はZone 9〜10と暖地寄りに評価)。ラビットアイ系として一般的な耐寒性で、極寒地には不向き。日本では関東以西の太平洋側〜九州での庭植え越冬が推奨される。
- 耐暑性: 強い。低温要求量も低めで暖地向け。
- 晩霜への弱さ: 早咲きのため、晩霜による花・幼果の被害(freeze damage)を受けやすい点が最大の弱点とされる。
- 耐病虫性: 全般に強健(ラビットアイ系一般の頑健性を保持)。具体的な病害虫抵抗性データは不明。鳥害には注意(完熟果が狙われやすい)。
推奨栽培地
- 米国: 米南部(ジョージア州、フロリダ州北部、ルイジアナ州、テキサス州、アラバマ州、サウスカロライナ州、テネシー州など)の温暖地。USDA Zone 7〜9(〜10)。
- 日本: 関東以西の太平洋側〜九州。植栽適地は東北〜九州とする資料もあるが、暖地向き。冬の極端な寒さを避け、夏期の強い西日を避ける半日陰〜日向、強酸性(pH 4.3〜5.3)でピートモス等を混和した排水良好な土壌が最適。根が浅く細いため水切れに注意。
受粉相性
- 自家結実性: 低い(self-infertile / 他家受粉必須)。1株では十分な結実が得られず、ラビットアイ系の他品種を必ず混植する必要がある。
- 推奨受粉樹: 同じく早〜中生ラビットアイ品種が適合。具体的には:
- Climax(クライマックス)
- Premier(プレミア)
- Brightwell(ブライトウェル)
- Becky Blue(ベッキーブルー)
- Alapaha(アラパハ)
- Vernon(ヴァーノン)
- Tifblue(ティフブルー、開花期がやや遅いが重なる時期あり)、Homebell(ホームベル)も国内では伝統的に組み合わされる。
商業利用状況
- 位置付け: 1960年代〜1980年代初頭に米南部で広く植栽されたラビットアイ系の古典品種。早生で粒大が魅力だったが、果実が軟らかく果梗痕が湿るため生鮮(フレッシュマーケット)出荷には不適、また冷凍加工で果皮が硬化するため加工市場にも不向きと評価され、現在のジョージア州では商業栽培用として「もはや推奨されない(no longer recommended)」品種となっている。
- 現在の用途: 米南部の家庭園芸(home garden)・U-pick・観賞用植栽が中心。種苗会社(Bates Nursery、Pike Nursery、Plants by Mail、Flowerwood、Plant Addicts、Wilson Bros Gardens等)で苗木が継続販売されている。
- 歴史的価値: ラビットアイ系商業栽培の黎明期を支えた品種として園芸史上の意義が大きい。
日本での状況
- 導入史: 「日本にはじめて導入されたラビットアイ系品種」と国内資料で記述される、日本のラビットアイ系普及の出発点となった品種。
- 国内での通称: ホームベル(Homebell)、ティフブルー(Tifblue)と並び「ラビットアイ系御三家」と称される。
- 流通: 国内主要園芸店・ネット通販(花ひろばオンライン、苗木部、エンゲイネット、神多野園芸ほか)で苗木が安定流通。家庭園芸用ラビットアイの定番として長く扱われている。
- 国内評価: 完熟果の食味は良好で甘味が強いとの評価がある一方、樹形管理(横枝・下垂れ枝が多い)、結実の不安定さ(落果・裂果・粒揃いの後半低下)から、近年は商業栽培向きとは見做されず、より新しいUGA品種(Brightwell、Premier、Ochlocknee、Powderblue等)に主流が移っている。
- 栽培適地: 関東以西の太平洋側〜九州。
育成者注釈・特記事項
- 品種名由来の人物: O.J. Woodard氏は1925年からUGA沿岸平野試験場(Tifton, Georgia)で野生ラビットアイの選抜・育種を始めたパイオニアで、本品種は彼の業績を顕彰して命名された。なお氏自身が交配親選定を行ったか、後継育種者が彼を顕彰して命名したかは資料により記述が異なる。
- 歴史的位置付け: Tifblue(1955)と並ぶUGA初期ラビットアイ代表品種。Ethel × Callawayの組み合わせは、Tifblueの親(Ethel × Clara)と母系(Ethel)を共有しており、初期ラビットアイ品種群の遺伝的近接性を示唆する。
- 注意点:
- 早咲きで晩霜被害を受けやすい。
- 果実がやや軟らかく果梗痕が湿るため、生食市場・加工市場での評価は低い。
- 開花過剰・落果・裂果の問題があり、摘花や水管理で品質安定化が必要。
- 国内一部資料(せらす果樹園)では「避けるべきラビットアイ」とまで評価されるなど、生産者間で意見が分かれる。
- 学名の取り扱い: 旧学名 Vaccinium ashei Reade と現行学名 Vaccinium virgatum Aiton が文献上併用されており、苗木流通でも両方の表記が見られる。
- 特許: 1960年公表の公的育成品種であり、植物特許(PP)は付与されていないと推定される(具体的な特許番号は不明)。
参考情報源
- Bates Nursery (TN)
- Plants by Mail – Woodard Blueberry
- Pike Nursery – Woodard Rabbiteye
- Plant Addicts – Woodard Rabbiteye
- Wilson Bros Gardens – Woodard Rabbiteye
- Garden.org – Vaccinium virgatum 'Woodard'
- UGA Smallfruits – Blueberry Cultivars for Georgia
- UGA Plant Breeding – Blueberry Breeding Program
- Southern Living Plants – Pollination & Chill Hours
- Wikipedia – Vaccinium virgatum
- 神多野園芸(日本)– ウッダード解説
- 花ひろばオンライン – ウッダード
- 苗木部(naegibu)– ウッダード ラビットアイ
- Berry's Life – ラビットアイ品種特性
- せらす果樹園 – ラビットアイおすすめ品種
- ブルーベリーファクトリー岐阜 – ラビットアイ系とは
- ブルーベリー全品種特徴一覧
- 山陽農園(YKKEN)– ラビットアイ品種一覧
- エンゲイネット – ウッダード5号ポット