バークレー Berkeley
ノーザンハイブッシュ系
育成者: Frederick V. Coville が交配を企画し、その死後 George M. Darrow と Franklin A. Gilbert らが選抜・公表を完了
系譜・来歴
- 親系譜: 「Stanley × (Jersey × Pioneer)」と一般に伝えられる古典的な交配。
- 同じく1949年にUSDA/NJで公表された 'Coville' とともに、長らく試験番号で管理された後にリリースされた(試験番号は U-85 もしくは DN-76 のいずれか)。
- ノーザンハイブッシュの定礎を築いた F. V. Coville の育種プログラムを継承した世代の品種であり、'Bluecrop' の祖父母世代と多くの祖を共有する(Stanley・Jersey・Pioneer は 'Bluecrop' 4親のうち3親に相当)。
- 育成発祥地は米国ニュージャージー州(試験圃場はワイマウス/Whitesbog 周辺)と紹介される資料がある。
樹体特性
- 樹勢: 強い(vigorous)。生育は早く、若木からよく伸びる。
- 樹形: 開帳性(spreading)。中庸〜やや横張り型で、日本国内の販売資料では成木樹高 1〜1.5 m 程度のコンパクトに収まる例も紹介されている(米国データでは 4〜6 ft 高 × 5〜8 ft 幅と記載)。
- 葉: 楕円形・濃緑、秋には鮮紅葉となる。
- 花: 春期、白〜淡桃色を帯びた釣鐘形の花を多数着ける。
結実特性
- 開花期: 中生(mid-season)。
- 収穫期: 中〜晩生(mid〜late midseason)。日本では 6月下旬〜7月上旬の初夏が目安(地域差あり)。
- 低温要求量: 約 800 時間(7.2℃以下換算、ノーザンハイブッシュの中位)。
- 自家結実性: 自家和合性はあるが、他品種との混植・他家受粉により着粒・果実サイズ・収量が顕著に向上する。受粉樹として 'Bluecrop' などが推奨される。
- 結果年数: 早く、苗購入後1〜2年で着果が見込める。若木期の成り過ぎに注意。
- 収量: 米国一般評価では「中」、日本販売資料では「豊産性あり」と紹介される。
果実特性
- 果実サイズ: 大粒〜特大粒。資料により 14〜16 mm(中大粒扱い)から 17〜21 mm(最大級扱い)まで幅があるが、リリース当時は「最大級の果実」として知られた。
- 果皮色: 明るい青色〜パウダーブルー(果粉が多く明青色に見える)。
- 食味: マイルド(mild)。糖度 11〜12 度程度、酸味が早期に抜けやすく早採りでも食べやすい。一方で「特筆すべき強い香味は乏しい」「平均的な風味」との評価も多い。
- 果肉: 硬さは中〜良好で、貯蔵性は良い。
- 果柄痕(picking scar): やや大きい(dry stem scar とされるが、痕の面積が大きい点はマイナス評価)。
- 利用適性: 生食可、ジャム・パイ・冷凍・煮菓子など加工にも適する。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 強い。USDA耐寒ゾーン 4a 程度まで適応(小売資料による)。-20℃前後まで耐える NHB 一般の特徴を有する。
- 耐暑性: NHB として中庸〜やや弱め。蒸暑期には根腐れ・草勢低下に注意。
- 病害虫耐性:
- 茎枯病(stem canker, Botryosphaeria 属)に弱い(高感受性)と複数文献で指摘される。
- 細菌性枝枯(bacterial canker)にも感受性が高い。
- Fusicoccum (Godronia) canker に対しても感受性が高いとされる。
- 比較的耐病性とされる Bluejay・Duke・Elliott・Jersey・Stanley・Rubel 等と対照的に、Berkeley は耐病性向け品種ではない。
- 栽培難度: 初心者に対しやや注意が必要(病気に弱い面があるため、水はけ・通風・適切な剪定が必須)。
推奨栽培地
- 米国: 北東部・五大湖周辺・太平洋岸北西部などノーザンハイブッシュ適地。
- 日本: 北海道中部〜東北・関東甲信越・北陸・中国山地・九州高冷地など、リンゴ・モモの栽培適地と重なるノーザンハイブッシュ適地。低温要求量を満たせる地域で良好。暖地では同系他品種同様にやや不利。
- 土壌条件: pH 4.5〜5.5、有機質に富み排水性の良い酸性土壌。日当たり良好な場所。
受粉相性
- 自家結実性: あり(自家和合性)。
- 推奨受粉樹: 同じノーザンハイブッシュ系で開花期が重なる品種。古典的組合せでは 'Bluecrop'、'Coville'、'Herbert'、'Earliblue'、'Blueray'、'Collins' などが相性良好と紹介される。
- 群馬3兄弟の親候補品種である 'Collins'・'Coville' とも開花期が一部重なり、混植可能。
商業利用状況
- 1949年の発表後、'Bluecrop'・'Coville'・'Herbert'・'Earliblue'・'Blueray'・'Collins' とともに「USDA推奨7大品種」(1960年USDA推奨品種群)の一つに位置付けられ、長らく北米生果・加工兼用の主力として栽培された。
- 現在は果柄痕の大きさ・風味の平凡さ・茎枯病感受性などから商業の主役を譲り、家庭園芸・観光摘み取り園・加工原料などでの採用が中心となっている。
- 大粒・明青色・果皮の厚さ・冷凍流通耐性から、貯蔵・冷凍流通用途には依然として一定の評価がある。
日本での状況
- 日本のブルーベリー導入初期(1951年に農林省北見農試などで導入が始まり、その後1960〜70年代に各地で試作)に持ち込まれた最初期の主力品種の一つとして知られる。'Bluecrop'・'Earliblue'・'Berkeley'・'Coville'・'Herbert' などが当時の代表的導入品種で、Berkeley は大粒NHB の代名詞的存在として位置付けられた。
- その後、より食味の優れる品種(Spartan、Duke、Draper など)や日本独自育成品種(群馬3兄弟など)の登場で主役の座は譲ったが、現在も国内苗木流通は継続しており、家庭果樹・観光農園で栽培される。
- 日本の小売評価では「果実は明青色で大粒、酸味が早く抜け食べやすい」反面「香味のインパクトは弱い」「茎枯病・うどんこ病に注意」とされる。
群馬3兄弟(おおつぶ星・はやばや星・あまつぶ星)との関連性
- 群馬3兄弟は群馬県(群馬県農業技術センター/中條忠久氏ら)が育成した日本独自のNHB系品種群(2004年公表系統を含む)。
- このうち 'はやばや星' は 'Collins' と 'Coville' の自然交雑実生からの選抜であることが公表されている。
- 'Collins' と 'Coville' はいずれも Berkeley と同時代(1959年・1949年)の USDA × NJ Rutgers ライン由来であり、Berkeley とは育種プログラム・親系譜(Stanley・Jersey・Pioneer 由来の血統)を広く共有する従兄弟世代にあたる。
- すなわち群馬3兄弟は Berkeley の直接の子孫ではないが、Berkeley と同じ Coville-Darrow 系の遺伝資源系列の延長線上で生まれた日本品種であり、Berkeley は群馬3兄弟誕生の前提となった「日本に導入された初期USDA系遺伝資源」の代表格と位置付けられる。
- 'おおつぶ星'・'あまつぶ星' の正確な交配親については本調査の参照資料からは特定できなかった(不明)。
育成者注釈・特記事項
- Berkeley は 'Coville' とのペアで 1949年秋に同時公表された姉妹リリース。Frederick V. Coville(1867–1937)は 'Berkeley' のリリースには立ち会えていないが、リリース系統群の元となる交配を生前に行っていたとされる。USDA Bureau of Plant Industry の George M. Darrow と Franklin A. Gilbert が後継としてリリース時の正式公表を担当。
- 公表当時 "exceptionally large light blue berries"(極めて大粒で明青色)として注目され、生果用大粒品種の標準を引き上げた歴史的品種。
- 名称 "Berkeley" の由来について公的文書では明示されていない(カリフォルニア大学バークレー校との直接の関連は確認されない)。
- 茎枯病感受性のため、暖地・多湿地での長期商業栽培には不利。剪定で密度を抑え、風通しを確保する管理が推奨される。
参考情報源
- Journal of the American Pomological Society "Berkeley and Coville Blueberries introduced" (Darrow, G.M. & Gilbert, F.A., 1949)
- HathiTrust "Two new blueberry varieties, Coville and Berkeley" 書誌レコード
- Rutgers Plant Breeding "Blueberry History"
- Rutgers NJAES FS419 Selecting Blueberry Varieties for the Home Garden
- Tandfonline (J. Berry Research) "Frederick V. Coville and the History of North American Highbush Blueberry Culture"
- Italian Berry "110 years of blueberry history"
- Gardenia "Vaccinium 'Berkeley' (Highbush Blueberry)"
- Stark Bro's "Berkeley Blueberry Plant"
- Oakland Nursery "Berkeley Blueberry"
- Bluegrass Blueberries "Berkeley Blueberry"
- PNW Plant Disease Handbook "Blueberry-Stem Canker"
- USDA-ARS Polashock & Kramer (2006) "Resistance of Blueberry Cultivars to Botryosphaeria Stem Blight"
- 花ひろばオンライン「ブルーベリー バークレイ」
- Berry's Life「ブルーベリーの品種特性 北部ハイブッシュ」
- ブルーベリーファクトリー岐阜「ノーザンハイブッシュ系とは」
- ブルーベリーファームおかざき「ノーザンハイブッシュ概論」
- 苗木部「はやばや星」
- ISHS Acta Horticulturae "Current Trends of Blueberry Culture in Japan"
- ISHS "Blueberry Production in Japan - Today and in the Future"