アーリーブルー Earliblue
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 親系譜: Stanley(種子親)× Weymouth(花粉親)(資料によっては Weymouth × Stanley とも記載)。両親ともに Frederick V. Coville(USDA 植物学者、ハイブッシュブルーベリー栽培化の祖)が関与した古典的ノーザンハイブッシュ品種。
- 育成は USDA とニュージャージー州ウェイマウス(Weymouth, NJ)における USDA-NJAES 共同育種プログラムで行われ、Coville が手掛けた一連のハイブッシュ品種の流れを汲む系統。
- Coville が 1911 年から開始したハイブッシュブルーベリー育種事業の成果のひとつであり、Bluecrop・Blueray・Earliblue は彼の代表的選抜として現在も商業流通している(USDA-ARS/NAL 解説)。
- 1942 年時点で米国東部向け 18 ハイブッシュ品種のうち 14 が Coville の選抜・育種に由来したとされ、Earliblue はその系譜の中で極早生市場の基幹品種として位置付けられた。
- 後続品種への寄与: Patriot(メイン大学/USDA, 1976 年発表)の花粉親として知られ、Patriot の親系譜「US-3 × Earliblue」に組み込まれている。Spartan については一次資料で直接の親としての記載は確認できず、本品種ファイル上は「不明(直接の親としての裏付け未確認)」とする。
樹体特性
- 樹形: 直立性〜やや開帳性(upright to upright-spreading)。若木期は直立し、結果負担が増すとやや横張りとなる。
- 樹高: 成木で 約 1.2〜1.8 m(4〜6 ft)、株張り 0.9〜1.5 m。家庭果樹サイズに収まりやすい。
- 樹勢: 中〜強(vigorous)。Coville 系古典品種の中では旺盛な生育を示す。
- 葉: 中型、楕円形、秋に赤く色づく観賞性も良好。
- 花: 小〜中型のクリーム白色のつぼ型花。
結実特性
- 開花期: 4 月(米国本土東部標準)/日本では 4 月中旬〜下旬。早生品種同士での開花期が重なるため、Bluecrop・Duke・Patriot 等との混植が容易。
- 収穫期: 極早生(Very Early)。北米基準で5 月下旬〜6 月上旬から収穫開始(Rutgers NJAES 資料)。日本では6 月上旬〜中旬が一般的。ノーザンハイブッシュの中で最も早い収穫期帯に分類される。
- 低温要求量(チルアワー): 約 800〜1,000 時間(7.2 ℃以下換算)。
- 自家結実性: 部分的に自家結実(partially self-fertile)。単独植えでも結実するが、果実肥大・果重均一性・総収量を最大化するには他のノーザンハイブッシュ早生品種(Bluecrop、Duke、Patriot 等)との混植による他家受粉が推奨される。
- 収量: 株当たり約 4.5〜9 kg(10〜20 lbs)/年(成木)。商業基準では中庸〜やや低めだが安定した極早生供給源として価値があった。
- 着果上の留意: 一部資料で「fruit set がやや問題(fruit set can be problematic)」との指摘あり、受粉樹混植が事実上必須。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜大粒(large)。
- 果色: 明るい青〜淡青色、ブルーム(果粉)が極めて豊富で外観良好("light blue with heavy bloom" と記述される)。
- 食感: 果肉は引き締まって硬め(firm)、果梗痕は中程度で裂果(cracking)への耐性が比較的高い(湿った春でも裂果しにくい)。
- 風味: 甘味があり芳香良好(sweet, aromatic, good dessert quality)。Rutgers NJAES の評価では "good aroma, good dessert quality"。一方で「酸味は弱め」「flavor は fair(中庸)」と評する資料もあり、現代の高糖度品種と比較するとやや淡白との位置付けもある。
- 用途: 生食、デザート、ジャム、冷凍。外観の良さ(大粒・濃いブルーム)から、極早生市場での生食出荷向けとして歴史的に重宝された。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 強い。USDA ハーディネスゾーン 4〜8(一部資料で 5〜7 推奨)、最低気温 -30 ℉(約 -34 ℃)まで耐えるとの記述あり。北部ハイブッシュとして十分な耐寒性を持つが、Patriot ほどの極寒適応(Zone 3)は持たない。
- 耐暑性: 中程度。Zone 8 までは適応するがそれ以南の高温多湿地では生育不良。
- 耐病性:
- モニリア病(mummy berry, Monilinia vaccinii-corymbosi)に対しては感受性が高い(susceptible〜highly susceptible)。多数の州 Extension 資料で Berkeley・Bluecrop・Blueray・Jersey・Weymouth と並ぶ感受性品種として列挙される。
- Phomopsis 枝枯病(Phomopsis twig blight)および炭疽病(Anthracnose, Colletotrichum 属)への感受性が指摘されている。
- 裂果(cracking)抵抗性は高いほか、落果(fruit drop)抵抗性も比較的良好との評価がある(Weymouth の改良目的に対応した形質)。
- 一般家庭果樹レベルでの病害虫被害は限定的で、通気・排水管理が良ければ深刻な問題は出にくい。
推奨栽培地
- 北米: USDA Zone 4〜7(一部資料 5〜7)。米国北東部・五大湖地方・カナダ南部の冷涼地で従来の主要極早生品種として展開された。
- 日本: 北海道南部〜東北・北関東〜中部山間地・信越・北陸などの冷涼地が最適。本州平野部でも栽培可能だが、極早生という性格上梅雨入り前の収穫が見込めるため、関東以北での家庭果樹・観光農園適性が高い。
- 西日本平地・九州など高温多湿地は耐病性(Phomopsis、炭疽病)と耐暑性の両面で不利。
受粉相性
- 部分的自家結実性のため受粉樹は事実上必須。
- 推奨受粉相手: 同じ早生〜早中生のノーザンハイブッシュで開花期が重なるもの。
- Bluecrop(最も推奨される定番組み合わせ)
- Duke(極早生〜早生、開花期が良好に重なる)
- Patriot(Earliblue を親に持つ近縁だが受粉樹として機能)
- Blueray、Spartan、Weymouth(古典的早生〜中生)
- 開花期が大きく異なる中晩生(Elliott 等)との単独組み合わせは推奨されない。
商業利用状況
- 北米早生市場の歴史的基幹品種。1950〜1980 年代を中心に、ノーザンハイブッシュの極早生供給枠を担い、Weymouth に代わる主力として広く植栽された(Weymouth より裂果・落果が少なく外観大粒)。
- 大粒で濃いブルーム、硬めの果肉という特性から生食出荷の早出し品種として商業価値が高かった。
- 一方、近年は Duke(より大粒・収穫集中・機械収穫適性)、Draper 等の新世代品種に商業作付けの主力を譲り、Earliblue は家庭果樹・観光農園・小規模直売向けにシフトしている。
- 母木として後続品種育種に寄与: Patriot(USDA/メイン大学, 1976)の花粉親として直接的貢献。Coville 系統の遺伝資源として近代育種に組み込まれた。Spartan の親としての記載は今回確認した一次資料では裏付けが取れず不明。
日本での状況
- 日本国内ではノーザンハイブッシュの極早生定番品種として古くから導入され、家庭果樹・観光ブルーベリー園で広く流通している。
- 流通名は主に「アーリーブルー」。楽天市場・苗木業者(花ひろば、吉岡国光園系業者ほか)・園芸店で 1 年生〜3 年生苗が販売される。
- 収穫期は本州標準で 6 月上旬〜中旬、関東以北で梅雨入り前の早出し収穫が可能。
- 日本のブルーベリー紹介サイトでは「早生で香り良く食味良好」「裂果が少ない」と評され、Bluecrop・Duke・Patriot 等と並ぶ初心者向け品種として位置付けられる例が多い。
- 北海道〜東北の冷涼地での家庭・観光園適性は高いが、商業大規模栽培の主力としては Duke 等に置き換わっている。
育成者注釈・特記事項
- Frederick V. Coville が 1911 年に開始した USDA ハイブッシュブルーベリー育種事業の成果のひとつ。Coville は近代ハイブッシュブルーベリー栽培化の祖で、Earliblue・Bluecrop・Blueray・Stanley・Weymouth など現代品種系譜の根幹を担う品種群を残した(USDA-ARS/National Agricultural Library 公表記録)。
- 「Earliblue」の名は Early(早い)+ Blue(青) に由来し、極早生・濃ブルームの形質をそのまま表す命名。
- モニリア病(mummy berry)への高感受性は本品種選択時の最重要留意点で、感染圧の高い圃場では春先の落葉清掃・地表マルチ更新・必要に応じた殺菌剤散布が推奨される。
- 親の Weymouth が抱えていた「果実小型・裂果しやすい・落果しやすい」という弱点を改良する目的で育成され、裂果・落果耐性・果実外観で明確に優れるが、果実数(収量)と食味の濃さでは現代品種に譲る、という時代的位置付けの品種。
- 種子親 Stanley は Coville が自身の息子(Stanley Coville)の名と、ベリー収穫実績を上げたニュージャージー州 New Lisbon の Stanley 農園に因んで命名した品種。
参考情報源
- USDA-ARS News(2011)「Historic Collection at NAL Gives Insight into Blueberry's Domestication」
- USDA Agricultural Research Magazine(2011)「Blueberry Growing Comes to the National Agricultural Library」
- USDA「Celebrating the Highbush Blueberry's Centennial」
- National Agricultural Library / Frederick Vernon Coville Records on Blueberries
- Rutgers NJAES FS419「Selecting Blueberry Varieties for the Home Garden」
- Penn State Extension「Blueberry Variety Selection in the Home Fruit Planting」
- Penn State Extension「Blueberry Disease - Mummy Berry」
- UMass Amherst「Highbush Blueberries — Diseases」
- NC State Extension「Mummy Berry Disease of Blueberry」
- One Green World「Earliblue Blueberry」
- Stark Bro's「Earliblue Blueberry Plant」
- Food Forest Nursery「Earliblue Blueberry Plant For Sale」
- Food Forest Nursery「Patriot Blueberry」(Patriot 親系譜情報)
- Greg.app「Earliblue Blueberry Explained」
- 楽天市場 花ひろば/ブルーベリー収穫時期早見表
- フルーツ植物バリエーション「ブルーベリーの全品種の特徴一覧表」
- 吉岡国光園「ブルーベリー(61品種)の種類一覧」