カラズチョイス Cara's Choice
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配組み合わせ: G-144(ノーザンハイブッシュ系統)× US 165(複合種間ハイブリッド系統、サザンハイブッシュ寄り)
- G-144 は 11-93('Bluecrop' の同胞実生)× 'Darrow' 由来
- US 165 は US 79 の自殖系統で、V. corymbosum(NHB および SHB)、V. darrowii、V. constablaei、V. virgatum(ラビットアイ)の血統を含む複合種間ハイブリッド
- 試験番号: G-695
- 交配者: Arlen D. Draper(USDA, Beltsville, MD, 当時)— 1977年頃に Beltsville にて交配を実施
- 選抜・評価: A.D. Draper、Mark K. Ehlenfeldt(USDA-ARS)、Allan W. Stretch(USDA-ARS、退官)、Gene J. Galletta(USDA-ARS、退官)、Nicholi Vorsa(Rutgers / NJAES)の各氏が、ニュージャージー州 Hammonton の Atlantic Blueberry Company 圃場と Variety Farms 圃場で評価
- リリース: 2000年に協同リリース
- 正式記載: Ehlenfeldt M.K., Stretch A.W., Vorsa N., Draper A.D. (2005) "'Cara's Choice' Blueberry." HortScience 40(5): 1556–1557.
樹体特性
- 樹形: 中庸からやや低めの灌木で、わずかに開張する樹形(slightly spreading)。手摘みおよび機械収穫の両方に適する形状とされる
- 樹高: 成木で約4フィート(約1.2 m)前後
- 生育: 生育はやや緩慢で、'Duke' や 'Bluecrop' に比べてコンパクト
- 葉色: 特徴的な青緑色(blue-green)の葉
結実特性
- 開花期: 'Bluecrop' よりわずかに遅く、'Duke' よりは早い
- 収穫期: 中生(midseason)。'Bluecrop' とほぼ同時期に成熟するが、収穫期間は比較的短い。South Haven, Michigan で7月15日頃が目安、日本国内(紹介サイト)では6月下旬目安と紹介される例あり
- 収量: 中庸〜やや低め。ニュージャージーでは 'Duke' のおよそ55%、'Bluecrop' のおよそ65%との報告。商業栽培では収量がやや劣るためニッチ品種扱い。家庭果樹流通サイト(Hartmann's)では1株あたり10–12ポンド(約4.5–5.4kg)と紹介
- 低温要求量(チリングアワー): 公的データに明示なし(不明)。USDA Zone 5–7 適応から、おおむね 800〜1000時間程度の中冷量品種と推定されるが具体値は不明
- 自家結実性: 自家受粉では結実が不十分とされ、複数品種の混植が推奨されている(Fedco Seeds の栽培ガイドでは「2品種以上、3品種以上推奨」と明記)
果実特性
- 果実サイズ: 中粒(medium)。1パイント当たり約140粒(U-pick向きの好ましいサイズ)
- 果皮色: 明るいパウダーブルー(light powdery blue)。収穫後も色保持が極めて良好
- 果柄痕(スカー): 小さく乾燥(small, dry scar)— 流通・貯蔵性に優れる
- 果実硬度: 優れた硬さ(測定値 約161 g·mm)
- 糖度(Brix): 約13.4 °Brix('Duke' や 'Bluecrop' に比べ可溶性固形物が約30%高いとの記述あり)
- 酸度: クエン酸換算 約0.67%(バランスの良い適度な酸味)
- 風味: 「非常に甘く(very sweet)、芳香に富み(highly aromatic)、複雑で香り高い優れた風味」と評される。USDA-ARS Ehlenfeldt 氏は「ブルーベリー愛好家の中には史上最高のフレーバーとする者がいる」とコメント。なお、ユーザー言及の「チェリー風味」については、USDA-ARS、ARS マガジン、HortScience 記載文献、各種苗木業者カタログいずれにも明確な記述は確認できず(不明)。「複雑で芳香に富む」「強い香り」との表現にとどまる
- 樹上保持性: 完熟後も数週間枝に残しても品質低下が少なく、その間にさらに甘さが増すという特異な性質を持つ(本品種最大の特徴のひとつ)
- 収穫後品質: 色持ち・硬度ともに優れ、生食および新鮮市場向きで高評価
耐寒性・耐病性
- 耐寒性(USDA Zone): 一般に Zone 5〜7 適応(Hartmann's では 5–7、Planting Justice では 4–7、Fedco では Zone 5、ARS では Zone 6 と概して中庸冷涼地推奨)。Zone 3 級の極寒地は不可とされる
- 耐暑性: 系譜に V. darrowii、V. virgatum(ラビットアイ)など南方種血統を含むため、純粋NHB品種よりやや暑さに強い可能性は示唆されるが、明示的な耐暑性データは不明
- 耐病性: 公的資料・育成者解説に具体的な抵抗性情報の記載は確認できず(不明)。ニュージャージー州での長期評価試験を経てリリースされており、同地域の主要病害(モザイク病、ブルーベリーシュート枯病、果実腐敗病等)に対し致命的な感受性は報告されていないが、特に強い抵抗性も主張されていない
推奨栽培地
- 米国北東部(ニュージャージー州および周辺州)の温帯地域が主たる適応地
- USDA Zone 5〜7(資料により4〜7)
- 高品質ニッチ品種として、商業生鮮市場、U-pick(摘み取り)農園、家庭果樹園、観賞兼用の生垣に推奨される
受粉相性
- 自家結実性は限定的で、他品種との混植が推奨される
- 開花期が同調する中生 NHB 品種が好相性。具体例として 'Bluecrop'、'Duke'(やや早咲き)、'Bluejay'、'Blueray'、'Patriot'、'Chandler'、'Legacy'、'Aurora' 等が苗木業者により互換受粉品種として案内される
- 個別の最適受粉樹に関する公的研究データは確認できず
商業利用状況
- USDA-ARS / NJAES の協同リリース品種として 2000年以降に流通
- 食味の卓越性で高い評価を得る一方、収量がやや劣るため、大規模商業栽培における主力品種化は限定的
- 米国では Hartmann's Plant Company(卸)、Burpee、The Cook's Garden、Fedco Seeds、Planting Justice、Hundred Fruit Farm 等の少数の業者が苗木を扱う「スペシャルティ/グルメ品種」的位置付け
- U-pick 農園、ファーマーズマーケット、家庭果樹園、観賞用フルーツヘッジ等で人気
- 2012年の USDA-ARS のプレスリリースで、同所の優良品種として 'Pink Lemonade'、'Razz'、'Sweetheart' とともに紹介された
日本での状況
- 日本国内では一部のブルーベリー専門農園・愛好家コミュニティで導入事例があるが、主要苗木流通には乗っていないと見られる
- 八ヶ岳南麓の果樹園(NICOLO果樹園)等で「カーラズチョイス」として栽培事例の記載あり(取得試行時 403)
- 日本のブルーベリー品種紹介サイト(fruitplantsvariation.blogspot.com、ykken.jp、berryslife.com 等)にて、ノーザンハイブッシュの一品種として「ブルークロップより糖度3割高い」「中粒・直立性・収穫6月下旬目安」等の特徴を紹介している例がある
- 大手通販(楽天市場、日本花卉ガーデンセンター等)では本品種苗の常時取扱いは確認できず、流通量は極めて少ないものと考えられる
- 表記揺れ: 「カーラズチョイス」「カラズチョイス」「カーラズ・チョイス」など
育成者注釈・特記事項
- 命名由来: USDA-ARS / Rutgers の公的解説および 2012年 USDA News Release では、「優れた果実品質(甘さ・硬さ・風味)に対する敬意("in recognition of its excellent fruit quality with improved sweetness, firmness, and flavor")から命名された」と説明されている。一方、ユーザー指示にある「育成関係者の娘 Cara に由来する」という説については、USDA-ARS、Rutgers、ARS マガジン、HortScience 公表資料いずれにも明示的な裏付けは確認できず、原典に基づく確認は取れなかった(不明/要原典確認)。一般のブルーベリー愛好家コミュニティでは「人物名(Cara)由来」とする言及も見られるが、その特定(Draper 氏ないし Ehlenfeldt 氏の娘等)に関する一次情報は本調査では発見できず。
- 特異な性質: 完熟後も樹上に数週間留め置けるという、ブルーベリーとしては極めて珍しい性質を持つ。家庭果樹園・小規模 U-pick で長期間にわたって新鮮な果実を提供できる利点。
- 位置付け: 「最高フレーバー」と評されるグルメ/スペシャルティ品種であり、収量重視の大規模商業よりも「食味重視の小規模栽培」「直売」「観賞兼用」に最適化されたリリース。
- 後代利用: 2018年に米国植物特許 USPP29879('Gumbo'、サザンハイブッシュ)の母本として利用されており、後続育種における風味改良源としての価値が示されている。
参考情報源
- USDA-ARS Beltsville(公式品種解説)
- USDA-ARS News Release (2012) "Pink Lemonade, Razz, Sweetheart, and Cara's Choice: Superb Blueberries from ARS"
- AgResearch Magazine (USDA, 2012)
- Phys.org による上記プレス紹介
- Rutgers Research Publication ('Cara's Choice' Blueberry, 2005)
- HortScience 40(5):1556–1557 (2005) Ehlenfeldt et al.(書誌情報、本文取得不可)
- ResearchGate 書誌('Cara's Choice' Blueberry)
- Hartmann's Plant Company(卸売苗木)
- Fedco Seeds(苗木解説)
- Planting Justice(苗木解説)
- Fruit Growers News "New varieties diversify blueberry offerings"
- GrowingFruit Forum(栽培者交流情報)
- Google Patents USPP29879 'Gumbo'(後代品種、'Cara's Choice' を母本として記載)
- 日本語:ブルーベリー全品種の特徴一覧(fruitplantsvariation)
- 日本語:ノーザンハイブッシュ品種一覧(ykken.jp)
- 日本語:ブルーベリーノート(カーラズチョイスとハンナズチョイス)
- 日本語:八ヶ岳南麓の果樹園(NICOLO果樹園 ブルーベリー)