コロンバス Columbus
ラビットアイ系
系譜・来歴
- 親系譜: NC758(♀) × NC911(♂)の交配により得られた選抜系統。両親はいずれも NCSU 育種プログラム内のラビットアイ系番号系統で、品種名を持たない育成中間系統である。
- 来歴: NCSU のブルーベリー育種プログラムにおいて、James R. Ballington(ジェームズ・ボーリントン)博士の指導の下に育成・発表された中生〜中晩生ラビットアイ品種。同プログラムからは Onslow、Pamlico、Yadkin、Robeson、Columbus 等の品種が連続して発表されており、Columbus はその中で「大粒・優れた果色・優れた貯蔵性」を主特性として発表された。
- 品種名の由来: ノースカロライナ州 Columbus 郡(Columbus County)に由来する地名命名と推察される(NCSU プログラムでは伝統的に州内の郡名を品種名に用いる慣行があり、Onslow、Pamlico、Yadkin 等が同様の例)。
樹体特性
- 樹勢: 旺盛〜非常に旺盛(vigorous〜very vigorous)。米国側資料・国内栽培家いずれも「樹勢が強い」と評価している。日本のせらす果樹園評価でも「強健で、定植2年目で早期収穫可能」と記載。
- 樹形: 半直立性〜直立性(semi-upright to upright)
- 樹高: 約 1.5〜3.0 m。米国販売店資料では 6〜7 ft(約 1.8〜2.1 m)×幅 3〜4 ft(約 0.9〜1.2 m)の記載がある。
- 枝・芽: 「枝数や花芽は少なめで、剪定・摘花の手間が少ない」との国内観光農園評価あり。
結実特性
- 開花期: 中晩生〜晩生(late blooming)。Tifblue よりわずかに先に開花するとされる。日本(関東基準)では 4月中旬〜4月下旬。国内観光農園では「特に開花が遅く、受粉樹との花期同調に注意が必要。Baldwin が最も合うようだ」との評価あり。
- 収穫期: 中生〜中晩生(mid〜mid-late season)。Tifblue/Powderblue よりわずかに数日早く成熟する。米国南部ジョージア州:6月下旬〜7月(late June through July)/米国ケンタッキー州:7月下旬〜8月/日本(愛知県岡崎市など):7月中旬〜8月中旬
- 収穫期間の特徴: 約5週間以上にわたる長期間収穫(Duke、Climax 等と比べて収穫期が長い)。果実が一度に揃って熟さず、ゆっくり段階的に成熟する点が観光農園・直売向けに評価されている。
- 低温要求量: 約 600時間(45°F=7.2°C 以下)
- 収量: 多収(high yielding/very productive)。米国 Backyard Berry Plants では成木1株あたり 9〜11 ポンド(約 4〜5 kg)。日本側資料では 2〜3 kg/株程度(鉢栽培または若木)と記載。
果実特性
- 果実サイズ: 大粒〜超大粒(large)。ラビットアイ系の中で最大級のグループに属し、Titan よりやや小さく Whitu と同程度との国内評価あり。100円玉大に達する果実が安定して収穫される。
- 果皮色: 優れた青色(excellent color)。果粉(ブルーム)が豊富で美しい外観を呈するが、収穫期に降雨があるとブルームが流されて見た目が悪化することが、せらす果樹園評価で指摘されている。
- 果肉・硬度: 硬い(firm)。Premier と同程度の硬さとされる。果肉は堅く食べ応えがあり、種子のザラザラ感や皮感が少なく、口当たりが良い。
- 果梗痕(スカー): 平均的(average picking scar)
- 食味: 甘味が強く酸味は控えめ(distinctly sweet flavor、very sweet, low acidity)。「南部のブルーベリー栽培家の多くがラビットアイ系の中で最高の食味と評価する」との販売店資料記載あり。サザンハイブッシュに近い風味との国内評価もある。早採りでも渋みが少ない。
- 裂果性: 雨天時の裂果に対して強い耐性(resistant to cracking in wet weather)を示す。
- 収穫後品質: 優れた貯蔵性(excellent shelf-life)
- 収穫方法: 大果ゆえに手摘み(hand harvest)が基本とされ、機械収穫には不向きとの記載あり。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 6b〜9b(米国販売店資料)。ラビットアイ系として標準的〜やや広い適応範囲。
- 耐暑性: 良好。米国南東部の暖地〜温暖地に適応。
- 耐凍霜性: 不明。NCSU 公式・販売店資料での具体的な凍霜耐性の記載は確認できず。
- 病害虫耐性: 不明(unknown)。茎枯病(Botryosphaeria stem blight)、葉錆病(leaf rust)など個別病害に対する Columbus の感受性/抵抗性データは本調査では確認できず。NCSU・eXtension 公式記載でも「病害抵抗性」の具体的言及はない。
- 裂果耐性: 強い(resistant to wet weather cracking)
推奨栽培地
- 米国: ノースカロライナ州沿岸平野部・ピードモント、ジョージア州、ケンタッキー州など南東部のラビットアイ栽培適地。USDA Zone 6b〜9b。
- 日本: 寒冷地を除く東北南部から関東以西、東海、近畿、中国、四国、九州までのラビットアイ適地。暖地〜温暖地に好適。
- 寒冷地(東北北部・北海道)は不向き。
受粉相性
- 自家結実性: ラビットアイ系のため他家受粉が必須。1株のみでは結実が著しく低下するため、必ず2品種以上を混植する。
- 推奨受粉樹: 同一系統(ラビットアイ系)で開花期の合う中晩生〜晩生品種。'Onslow'(オンスロー)—— 米国側資料で第一推奨/'DeSoto'(デソト)—— 米国側資料で第一推奨/'Tifblue'(ティフブルー)/'Woodard'(ウダード)/'Baldwin'(ボールドウィン)—— 国内観光農園で「最も開花期が合う」と評価
- 注:Columbus は開花がやや遅いため、早生〜中生のラビットアイ品種では花期がずれる可能性があり、受粉樹選定時に注意が必要。ハイブッシュ系とは倍数性・開花期が異なるため受粉樹として不適。
商業利用状況
- 米国南東部(特にノースカロライナ州・ジョージア州)において、中晩生ラビットアイ商業品種として位置付けられる。
- 大粒・優れた果色・硬果・裂果耐性・優れた貯蔵性という商業向け特性を備え、Tifblue/Powderblue よりわずかに早い収穫タイミングで市場に出荷できる利点がある。
- 一方、果実が大きいため機械収穫には不向きで、手摘みが前提となる点は U-Pick(観光農園)・直売向き品種としての性格を強める。
- Onslow と並ぶ NCSU 系晩生ラビットアイの商業選択肢の一つで、収穫期延長・出荷期分散の役割を担う。
- ただし、Tifblue や Brightwell のような圧倒的シェア・流通量はなく、商業規模では限定的〜中規模の位置付け。
日本での状況
- 国内導入: 2010年代前半頃から国内観光農園・専門ナーサリーで植栽事例が確認される(愛知県岡崎市「ブルーベリーファームおかざき」、せらす果樹園など、いずれも 2013年前後から栽培開始の記録あり)
- 流通状況: 国内苗木流通は限定的。一部のラビットアイ専門通販(吉岡国光園、ブルーベリーカントリー井戸園芸、engei.net 等)で取り扱いがあるが、せらす果樹園は2017年時点で「主要ナーサリーから入手不可」と指摘しており、安定流通には至っていない。価格帯は5号鉢で 1,980円前後〜(engei.net)。
- 栽培評価: 「超大粒・甘味強・酸味少・食味良好でサザンハイブッシュに近い風味」「枝数・花芽が少なく剪定が楽」「収穫期が長く観光農園向き」と肯定的評価が多い。一方で「ブルームが過多で雨により流されると外観が悪化」「開花がやや遅く受粉樹選定が難しい」との注意点も指摘されている。
- 観光園: 一部の観光ブルーベリー園で品種コレクションの一つとして提供される。
育成者注釈・特記事項
- 「NC758 × NC911」というNCSU内の番号系統同士の交配から生まれた品種で、両親いずれも品種名を持たない育成中間系統である点が、Onslow('Premier' × 'Centurion')と比較して系譜上の特徴。
- 最大の育種上の特徴は、大粒(ラビットアイ系最大級)・優れた果色・硬果・裂果耐性・優れた貯蔵性の組合せに加え、Tifblue/Powderblue よりわずかに早い成熟期を持つこと。これにより晩生ラビットアイの収穫期序盤を担う商業品種として設計されている。
- Onslow との比較では、Columbus の方が果実が明色(visibly lighter than Onslow、ブルームが豊富)とされ、Onslow ページには「Onslow is visibly darker than Columbus」と明記されている。
- 命名はノースカロライナ州 Columbus 郡にちなむ地名命名と推察される(NCSU プログラム伝統の郡名命名に従う)。
- 大果ゆえに機械収穫には不向きで、手摘み・U-Pick・直売向きという用途の性格付けが明確である。
- 国内では「ブルームが流されやすい」「開花期が遅く受粉樹選定が難しい」という栽培上の注意点があり、これらは米国側資料には記載されていない国内栽培観察ベースの知見である。
参考情報源
- NCSU Blueberry Genetics and Genomics Laboratory – Columbus
- eXtension Foundation – Columbus: Rabbiteye Blueberry Variety
- NCSU Blueberry Varieties 一覧
- NCSU Blueberry – Onslow(Columbus との比較記載あり)
- Backyard Berry Plants – Columbus Rabbiteye Organic Blueberry Plant
- Gardener Direct – Columbus Rabbiteye Blueberry (3 Gallon)
- Finch Blueberry Nursery – Rabbiteye Type 一覧
- ブルーベリーファームおかざき – コロンブス品種ページ
- せらす果樹園 – 2017 品種・果実評価 ラビットアイ編
- 吉岡国光園 – コロンブスの苗木(販売)
- engei.net – ブルーベリー(大実ラビットアイ系):コロンブス5号ポット
- ブルーベリーカントリー井戸園芸 – コロンバス 挿し木2年生苗