ヤドキン Yadkin
ラビットアイ系
系譜・来歴
- 親系譜: 'Premier'(プレミア、♀) × 'Centurion'(センチュリオン、♂)の交配により得られた選抜系統
- NC選抜コード: NC2305
- 来歴: NCSUのブルーベリー育種プログラムにおいて、James R. Ballington(ジェームズ・ボーリントン)博士が中心となって育成・発表したラビットアイ晩生品種。両親(Premier・Centurion)はいずれもNCSU由来のラビットアイ系統であり、系統内改良の代表例の一つ。
- 品種名の由来: ノースカロライナ州北西部 Yadkin 郡(Yadkin County)に由来する地名命名。NCSUのラビットアイ育種プログラムでは郡名命名(Pamlico、Onslow、Columbus、Yadkin等)が伝統的に行われている。
樹体特性
- 樹勢: 中程度(moderate vigor)。NCSU公式評価では「moderate vigor」とされ、強樹勢でも弱樹勢でもない、中庸な樹勢。
- 樹形: 直立性〜半直立性(upright〜semi-upright)。販売店資料では「full, well-shaped shrub(全体に整った形状の低木)」と記載。
- 樹高: 約 1.0〜2.0 m(地植え・鉢植え)。日本の苗木販売情報では樹高1〜2m、樹幅1〜1.5mと記載。米国販売店ではTifblueより低めの樹高との記載もある。
- 株間: 約6フィート(約1.8 m)が推奨植栽距離。
- 紅葉: 秋に鮮やかな赤色(red fall foliage)を呈し、観賞価値も評価される。
結実特性
- 開花期: 晩生(late blooming)。NCSU資料では「Season: Late」と記載。同じNCSU晩生ラビットアイ品種(Onslow、Columbus等)と類似の開花時期。
- 収穫期: 晩生〜中晩生(late mid-season〜late season)。米国南部ジョージア州:6月下旬〜8月上旬/米国ノースカロライナ州:7月中旬〜8月(一般的なラビットアイ晩生時期)/日本(暖地・温暖地):8月上旬〜9月中旬
- 低温要求量: 主流の評価は 500〜600時間(45°F=7.2°C 以下)。一部資料(CooksInfoなど)では「650〜700時間」「650〜750時間」との記載もあり、ソースによって幅がある。
- 収量: 多産(very productive)との販売店評価。NCSU公式評価は具体的な数値を示していないが、商業用にも適する収量水準とされる。
- 春霜耐性: 「hardy against spring frosts(春霜に強い)」との記載あり。晩生開花のため早春霜の被害を回避しやすい。
果実特性
- 果実サイズ: NCSU公式では「Medium(中粒)」。一部販売店資料(Edible Landscaping)では「large(大粒)」との表記もあり、日本の苗木販売では「中大粒」と紹介される。実際は中〜中大粒帯と評するのが妥当。
- 果皮色: 中程度の青色〜やや暗い青色(medium blue〜medium-dark blue)。商業上は中青色に位置付けられるが、Centurion譲りで色がやや暗くなる傾向あり。
- 果肉・硬度: 良好な硬度(good firmness)。比較研究では 'Brightwell' が最も高い初期硬度を示し、'Tifblue'、'Climax'、'Yadkin' がそれに続く順。商業流通に耐える硬度を持つ。
- 果梗痕(スカー): 良好(excellent picking scar)
- 食味: 芳香に優れる(aromatic flavor)。NCSU評価では「very high quality(非常に高品質)」とされる。日本の販売情報では「香りがよく」「甘酸のバランスが良く酸味がほとんどない」との評価。子供にも食べやすい食味との記載も米国販売店にあり。
- 裂果性: 雨天時の裂果に対して耐性あり(resistant to cracking)
- 収穫後品質: 良好(good post-harvest quality)。日持ちが良いことが日本販売情報でも強調される。
- 収穫方法: 手摘み・機械収穫の両方に対応可能(hand or mechanically harvested)。果実が枝先に集中する性質があり、機械収穫向き。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 6〜9。ラビットアイ系の中では比較的耐寒性が認められる側に位置するが、東北北部や北海道のような寒冷地には不向き。日本の販売情報では「耐寒性やや弱い」と紹介。
- 耐暑性: 強い(strong heat and humidity tolerance)。米南東部の温暖湿潤気候に適応。
- 耐乾性: 強い(excellent drought tolerance)
- 湿地耐性: 弱い(poor wet soil tolerance)。排水良好な土壌が必須。
- 病害虫耐性: 「excellent pest and disease resistance(病害虫抵抗性に優れる)」と販売店資料に記載。NCSU公式の病害別の数値評価データは不明。「no-spray growing system(無農薬栽培)」にも適するとの記載がある。
- シカ食害耐性: 弱い(poor deer resistance)
推奨栽培地
- 米国: ノースカロライナ州のピードモント(Piedmont)・丘陵地(Foothills)地域、サウスカロライナ州内陸部、ジョージア州北部・中部などの中間冷却ラビットアイ適地。USDA Zone 6〜9 の南東部広域。有機質に富み排水良好な土壌で良好な生育を示す。
- 日本: 東北南部から関東以西、東海、近畿、中国、四国、九州まで。暖地〜温暖地のラビットアイ栽培適地に広く適応。
- 寒冷地(東北北部・北海道)は耐寒性のやや弱さから不向き。
- 土壌pH: pH 4.3〜5.3 の弱酸性が推奨(日本販売情報)。米国ではラビットアイ標準のpH 4.5〜5.5 範囲。
受粉相性
- 自家結実性: 自家結実性あり(self-fruitful)。NCSU公式評価でも「self-fruitful」と明記。1株でも結実可能とされる。
- 他家受粉の効果: 自家結実性ありとの公式評価にもかかわらず、日本の販売情報では「単独結実はやや弱い」との記載があり、他品種混植により結実・果実サイズが向上することは共通認識。
- 推奨受粉樹: 同一系統(ラビットアイ系)の中〜晩生品種が最適。'Brightwell'、'Powderblue'、'Tifblue'、'Onslow'、'Columbus'
- 注:ハイブッシュ系とは倍数性(ラビットアイ=六倍体、ハイブッシュ=四倍体)・開花期が異なるため受粉樹として不適。
商業利用状況
- 米国南東部(特にノースカロライナ州中西部・ジョージア州)において、晩生ラビットアイ品種の選択肢として位置付けられる。
- 良好な硬度・乾いたスカー・裂果耐性・芳香優良な食味・機械収穫適性という商業向け特性を備える。
- ただし果実色がやや暗く(medium-dark)、現代の商業流通で求められる明青色品種('Brightwell'、'Tifblue'、'Powderblue' 等)との競合では商業生産の主力にはなりにくい。
- このため、Yadkinは「家庭園芸(homeowner)向け」「観光園・地域市場向け」での評価が比較的高く、大規模商業園での採用は限定的との位置付けが一般的。
- 一方で、機械収穫適性・後熟品質の良さから、小〜中規模の地域出荷型農家には選択価値あり。
- NCSUの育種プログラムにおいては、'Premier' × 'Centurion' という系統内交配の代表的成果であり、後の晩生ラビットアイ系(Onslow等)と並ぶ晩生選抜のラインナップを形成。
日本での状況
- 国内導入: 詳細な国内初導入年は不明。2010年代以降、ラビットアイ系の晩生品種コレクションとして個人栽培家・園芸店で扱われるようになった。
- 流通状況: 国内の苗木通販・園芸店での流通は限定的だが、苗木部(花ひろばオンライン)や Amazon.co.jp 等で2年生挿し木ポット苗が販売されている(2026年4月現在)。価格は¥2,000前後。'Tifblue' や 'Brightwell' のような定番ラビットアイ品種に比べると入手難度はやや高い。
- 栽培評価: 香りの良さ、甘酸バランス、酸味の少なさ、日持ちの良さが日本販売情報で強調される。日本の暖地ラビットアイ晩生枠での選択肢として評価される。
- 観光園・専門農園: 観光ブルーベリー園での品種コレクション枠として植栽事例あり。
- カリフォルニア州・オレゴン州への出荷制限: 米国内では検疫規制により当該2州への苗木出荷不可(米国販売店記載)。日本国内では該当する規制情報は確認されず。
育成者注釈・特記事項
- 育成者: James R. Ballington博士(NCSU)。NCSUのブルーベリー育種プログラムを長年牽引した中心人物で、ラビットアイ・ハイブッシュ両系統において多くの品種を発表。野生種ジャームプラズム(wild germplasm)の取り込みによる多様性付与でも知られる。
- NC2305: NCSU内部選抜番号。NCSU公式育種プログラム資料での同定子。
- 両親系統の特徴: 'Premier'(NCSU・USDA共同で1978年発表):早生・大粒・多産/'Centurion'(NCSU・1977年発表、♀ W-4 × ♂ Callaway):晩生・暗色果実・自家結実性・W-4由来の後期開花特性/Yadkinは早生母系(Premier)と晩生父系(Centurion)の組合せから晩生に偏った形質を選抜したものと推察される。
- 特徴の総合評価: 「very high quality, self-fruitful, moderate vigor」(NCSU公式)の三要素が代表的特徴。極めて高品質な果実を、適度な樹勢と自家結実性で安定的に生産できる点が育種上の到達点。
- 市場展開上の課題: 果実色が中〜やや暗青色である点が現代商業流通における選好(明るい青色+大粒)に必ずしも合致せず、商業規模での主力化に至らなかった可能性が指摘される。
- 命名: ノースカロライナ州 Yadkin 郡(同州西部、Yadkin川流域)にちなむ地名命名。同プログラムでは郡名命名が伝統で、Yadkinはその系列に属する。
- 低温要求量に関する資料間ばらつき: 500〜600時間(複数の主要資料)、650〜750時間(CooksInfo等)と幅がある。栽培地選定時には500〜700時間の幅で考慮するのが安全と思われる。
参考情報源
- NCSU Blueberry Genetics and Genomics Laboratory – Yadkin
- eXtension Foundation – Yadkin: Rabbiteye Blueberry Variety
- Edible Landscaping – Yadkin Blueberry
- CooksInfo – Yadkin Blueberries
- Dave's Garden – Vaccinium virgatum 'Yadkin'
- Garden.org – Rabbiteye Blueberry 'Yadkin' Plant Database
- NCSU Blueberry Genetics and Genomics Laboratory – Centurion
- NCSU Blueberry Genetics and Genomics Laboratory – Rabbiteye
- Italian Berry – The Legacy of Blueberry Breeding at NC State University
- Finch Blueberry Nursery – Rabbiteye Type
- 苗木部 花ひろばオンライン – ヤドキン苗木
- Amazon.co.jp – ブルーベリー ラビットアイ系 ヤドキン苗