クーパー Cooper
サザンハイブッシュ系
注記(依頼内容との相違): ご依頼では「育成者: Sharpe/機関: UF(フロリダ大学)」と記載されていましたが、現存する公的資料(USDA-ARS Poplarville plant releases、Mississippi State University Extension、HortScience の品種リリース論文等)によれば、'Cooper' はフロリダ大学(UF)/Sharpe 育成品種ではなく、ミシシッピ州ポプラービル(Poplarville)の USDA-ARS Small Fruits Research Station によるリリース品種である。著者は Creighton L. Gupton と James M. Spiers(HortScience 1994)。UF 公式の SHB 品種一覧(HS1245)にも 'Cooper' は記載されていない。事実関係に基づき、本書では USDA-ARS/ミシシッピ州リリースとして記述する。
系譜・来歴
'Cooper' は1987年にミシシッピ州ポプラービル(Poplarville, MS)の USDA-ARS Small Fruits Research Station(米国農務省農業研究局 小果樹研究ステーション)で正式リリースされたサザンハイブッシュ品種である。同系列でリリースされた 'Gulfcoast' と並び、同ステーションを代表する SHB 品種で、1994年に Creighton L. Gupton と James M. Spiers により HortScience 誌(Vol. 29, Issue 8, p.923)に品種リリース論文が公表された。具体的な雌雄交配親(pedigree)の詳細は参照可能な HTML 公開情報源では確認できず不明であるが、USDA-ARS ポプラービルの SHB 育成系譜は概して、北部ハイブッシュ品種(V. corymbosum L.)と、フロリダ大学経由で導入された低温要求量の少ない野生 V. darrowii(特に Florida 4B 系統)を含む種間雑種を出発材料としている。同時期にリリースされた Gulfcoast、Biloxi、Cape Fear、Georgiagem などは Florida 4B を共通の祖先に持つことが知られており、Cooper も類似の遺伝的背景を持つ低温要求量の小さい SHB 品種と位置づけられる。湾岸地域(メキシコ湾岸南部・ガルフコースト地方)の暖地商業生産向けに育成された品種である。
樹体特性
- 樹勢: 中程度〜強い("moderately vigorous" との Mississippi State 記載、また日本の苗木業者では「樹勢は強く成長はやや早い」との評価あり)。
- 樹形: 直立性〜半直立(upright / semi-upright)。樹姿が整いやすい。
- 樹高: 米国情報では成木で約1.8〜2.4 m(6〜8フィート)。日本の鉢栽培情報では 1.0〜1.5 m 程度。
- 株張り: 約1.2〜2.4 m(4〜8フィート)。
- 茎の特徴: 国内情報源では「ピンク色の茎が綺麗」との記載あり、観賞性も評価される。
- 常緑性: 暖地ではある程度の常緑性を示す(SHB 系として典型)。寒冷地では落葉する。
- 落葉性: 落葉低木に分類。
結実特性
- 開花期: 米国南ミシシッピで早春。「Climax より遅く開花するが、Climax より2週間早く成熟する」との Mississippi State Extension の記載あり。日本(暖地)では4月中旬〜4月下旬。
- 収穫期: 米国南ミシシッピで5月中旬(mid May)。早生品種に分類される。日本では6月中旬〜7月上旬(地域差あり)。
- 低温要求量: 約400〜500時間(7.2℃以下)。SHB 品種としては中程度(標準的な SHB の 200〜300時間より多めで、移行帯〜寒冷側の暖地に適する)。
- 収量: 中程度(productive と評価される)。中粒果。
- 結実性: 自家結実性は弱〜中(self-fertile であるが他家受粉により収量・果実サイズが向上)。日本国内苗木店では「自家結実性がやや弱い」と明記。
- 早期結実性: 接木苗では植え付け1〜2年で初結実が見込める。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜大粒(米国情報では medium、日本流通情報では 15〜20 mm 程度の大粒との評価)。
- 果皮色: 良好な青色(excellent color)。
- 果肉: しっかり(firm texture)。
- 食味: 風味良好(good flavor)。日本国内情報源では「酸味がはっきりしてメリハリのある風味」と評価され、SHB の中では酸味の存在感が強いタイプ。糖度は平均10〜11度(一部苗木店表示)。
- 果柄痕(picking scar): 小さく乾いた良好な果柄痕(small dry stem scar)。
- 加工適性: 商業出荷および加工(冷凍保存・ジャム等)に適する。風味と硬さのバランスから生食・加工兼用。
- 日持ち: 果肉が堅く果柄痕が乾いているため、日持ち・輸送性は SHB 系として標準〜やや良好。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA Hardiness Zone 7b〜10b(情報源により 8a〜10a の表記もあり)。低温要求量400〜500時間と SHB の中ではやや多めで、温暖地〜亜温帯境界に向く。日本では関東以西の暖地から東北南部までの適応が見込める(苗木業者表記では「東北〜九州」)。
- 耐暑性: 高い(フロリダ・湾岸地域向けに育成された経緯から温暖・高温条件に強い)。
- 耐乾性: 弱い(細根が多く水切れに敏感、特に初夏の灌水管理が重要との国内栽培情報)。
- 耐病性: 一般的に病害虫・うどんこ病・暑熱に対して耐性があるとの小売情報あり(ToGoGarden 等)。具体的な抵抗性評価(Botryosphaeria 茎枯病、Phomopsis、ミイラ病、根腐れ等に対する反応)は HTML 公開情報では不明。
推奨栽培地
- 米国南東部、特にメキシコ湾岸地方(ミシシッピ州、ルイジアナ州、ジョージア州、アラバマ州、テキサス州東部)を中心とした湾岸 SHB 産地。
- USDA Zone 7b〜10b。低温要求量が400〜500時間あるため、低温要求量の極めて少ないフロリダ中・南部の SHB 品種(Sharpblue、Emerald 等)よりも一段冷涼な地域に向く。
- 日本では関東以西の暖地〜西日本(中国・四国・九州)の暖地。東北南部までは適応可能との国内苗木店表記もある。寒冷地(北海道・東北北部)には不向き。
- 鉢植えでも栽培可能(樹高 1.0〜1.5 m に収まる)。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的に自家結実性あり(self-fertile)が、自家結実性は弱〜中程度。1本でも結実するが、収量・果実サイズ・成熟促進の観点から他品種との混植が強く推奨される。
- 推奨受粉樹: 同じサザンハイブッシュ系の他品種が推奨される。日本国内苗木店では 'Misty(ミスティ)'、'Bladen(ブラッデン)'、'Gulfcoast(ガルフコースト)' 等が推奨されている。米国小売情報では 'Georgia Gem' との混植が推奨される例もある。
- 開花期重複: 開花が同時期となる SHB 品種を選定することが望ましい。
商業利用状況
- 1987年のリリース以降、メキシコ湾岸地方(湾岸 SHB 産業)の商業生産品種の一つとして導入された。同時期リリースの 'Gulfcoast'、'Cape Fear'、'Georgiagem' および後続の 'Biloxi'、'Magnolia' とともに、同ステーションは1980年代〜90年代の南東部 SHB 産業の発展に貢献した。
- 果実が硬く果柄痕が乾いていること、風味良好であることから、商業出荷・冷凍加工・直売向けに利用された。
- 一方で、後続の高品質 SHB 品種('Star'、'Emerald'、'Jewel'、'Farthing' 等の UF 系列、および 'Biloxi' 等)の登場により、現在は商業生産での主力品種ではなく、家庭園芸・小規模直売用の品種としての位置づけが中心となっている。
- 米国の苗木業者(ServeScape、Gardener Direct、Wilson Bros Gardens、ToGoGarden 等)でオンライン販売が継続されている。
日本での状況
- 国内のオンライン苗木業者・園芸店で「クーパー」として一般流通している(花ひろばオンライン/苗木部、greenery、Greendego 等)。
- 流通形態: 5号ポット2年生苗、3年生接木大苗(高さ約80cm、根鉢直径21cm)など。価格帯は3,000〜7,000円程度(接木苗の場合)。
- 評価: 「樹勢が整いやすく、ピンク色の茎が綺麗」「酸味がはっきりした風味」など、味わいに個性のある SHB 品種として位置づけられる。樹勢は強いが豊産性はやや低めとの指摘もある。
- 一部の専門栽培者(Berry's Life)では「現在は栽培していない」とされ、国内専門栽培家の評価は分かれる(果実の風味評価で C 評価との情報あり)。
- 育てやすさは初心者向け(★★★★☆評価/苗木業者)と評価される一方、根が細かく水切れしやすいため、初夏の水管理が栽培上の鍵とされる。
- 適地: 東北南部〜九州。耐暑性が高く、耐寒性は普通、耐乾性は弱い。
育成者注釈・特記事項
- 育成: USDA-ARS Small Fruits Research Station(Poplarville, MS)。著者は Creighton L. Gupton(USDA-ARS Poplarville)および James M. Spiers(同)。1994年 HortScience 誌の品種リリース論文("'Cooper' and 'Gulfcoast' Southern Highbush Blueberry")が一次出典。
- 1987年のリリースのため米国植物特許(PP)の対象外と考えられ、現在は無償で増殖・販売可能(公知品種)。
- 同ステーションは Cooper、Gulfcoast、Cape Fear、Georgiagem、Biloxi、Magnolia、Pearl River 等の SHB 品種を1980年代〜2000年代にかけて連続リリースし、米国南東部・湾岸地域の SHB 産業形成に大きく貢献した。
- 開花が極早期ではないため(同地域の Climax より遅く開花)、晩霜害リスクは極早咲き SHB(Sharpblue 等)よりやや低い。
- 'Vaccinium virgatum'(旧 V. ashei、ラビットアイ系)と表記している小売サイトも一部存在するが、HortScience 公式リリースに基づけば 'Cooper' は SHB(種間雑種)であり、ラビットアイではない。
- 依頼時に挙げられていた「育成者: Sharpe/機関: UF」は他の SHB 品種('Sharpblue' や同時代の Sharpe博士の系統)と混同された可能性がある。本品種は明確に USDA-ARS/Mississippi 系のリリースである。
参考情報源
- HortScience Vol.29 Issue 8 (1994) – `Cooper' and `Gulfcoast' Southern Highbush Blueberry(Gupton & Spiers)
- USDA-ARS Southern Horticultural Research Unit – Plant Releases(Cooper を「Past Blueberry Releases」として掲載)
- USDA-ARS Southern Horticultural Research Unit, Poplarville, MS
- Mississippi State University Extension – What varieties of blueberries should be grown?
- HortTechnology Vol.5 Issue 2 (1995) – Performance of Southern Highbush Blueberry Cultivars Released by USDA and Cooperating State Agricultural Experiment Stations
- CooksInfo – Cooper Blueberries(リリース年・チル時間情報)
- ServeScape – Cooper Highbush Blueberry
- Gardener Direct – Cooper Southern Highbush Blueberry
- Wilson Bros Gardens – Cooper Southern Highbush Blueberry
- ToGoGarden – Cooper Southern Highbush Blueberry
- Florida 4B 関連参考(Cooper を含むガルフコースト系 SHB の共通祖先)
- American Pomological Society – Florida 4B: Native Blueberry with Exceptional Breeding Value
- 花ひろばオンライン/苗木部 – ブルーベリー サザンハイブッシュ系 クーパー(3年生接木大苗)
- greenery – ブルーベリー「クーパー」サザンハイブッシュ
- Greendego – ブルーベリー苗 クーパー(サザンハイブッシュ系)3年生接ぎ木苗
- Berry's Life – サザンハイブッシュ品種特性表(クーパーの国内専門評価)
- 楽天市場 花ひろば – クーパー(サザンハイブッシュ系 ブルーベリー)
- UF/IFAS HS1245 Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida(Cooper は UF 品種一覧に含まれていないことの確認用)