ディキシー Dixi
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 親系譜: GM-37(Jersey × Pioneer)× Stanley
- 種子親(または花粉親)GM-37: 1925年に Coville が交配した未命名選抜系統。Jersey × Pioneer の F1 個体で、特に大果性に優れていた(1930年時点で果径ほぼ 23 mm、後にニュージャージーの圃場で 25.9 mm に達した)。
- もう一方の親 Stanley: Coville が「最も美味な品種」と評していた(Katharine × Rubel に由来する)品種。GM-37 の弱点であった「風味の不足」を補う目的で 1930 年に交配親として選ばれた。
- 野生祖先: GM-37 経由で Grover・Rubel(Jersey の親)と Brooks・Sooy(Pioneer の親)の 4 系統の野生ハイブッシュの血を引く。Stanley を加えることで Katharine 系の血も導入された。
- 来歴: 1925 年 GM-37 育成 → 1930 年 GM-37 × Stanley の交配 → 実生から選抜 → 1936 年に "Dixi" として正式公表。
- 品種名の由来: ラテン語 "Dixi"(「我は語り終えたり/I have spoken」の意)。Coville が 1936 年末に USDA を退官(49 年勤務)するに際し、自らのブルーベリー育種の集大成として命名したとされる。Coville の生涯最後の発表品種である。
樹体・果実特性
- 樹形: 直立性で多分枝、密に茂る落葉低木。樹勢は強い(vigorous)。米国資料では "vigorous, upright, multiple-branched" と記載。
- 樹高: 約 1.0〜1.5 m(成熟まで 10〜20 年)。USDA Zone 3〜7 適応とされる一方、「あまり耐寒性は強くない(not very hardy)」との米国側の記述もあり、日本の実用情報(耐寒性が強い)とはやや評価が割れる。
- 葉: 楕円形、長さ最大約 7.6 cm(3 inch)。秋に橙赤〜紅葉。
- 花: 白色(時にピンクがかる)、ペンダント状の頂生花房、径約 1.3 cm。開花期は日本基準で 4 月下旬〜5 月上旬。
- 収穫期: 晩生(late season)。日本では 7 月上旬〜7 月中旬(資料により 7 月いっぱい)。
- 果実サイズ: 大粒〜極大粒。Coville の原報告では 1936 年時点で直径 24 mm、好条件下では 1 inch(25.4 mm)超を期待。日本流通資料では 16〜19 mm(中大粒〜大粒)。
- 果実色・外観: 濃ブルー、丸〜やや扁平。
- 食味・風味: 「sweet-subacid(甘みの中に程よい酸)」「美味(delicious)」と Coville 自身が評価。日本資料では「果汁が多く、香り豊か、酸甘のバランスが良い」「糖度 11〜13 度」とされる。強い芳香としっかりした酸味が特徴。
- 欠点: 裂果(cracking)しやすいことが古くから指摘されている。また「収穫初期は大粒だが後半は小粒化し粒揃いが悪い」「日持ちが短い」との実栽培評もある。
- 用途: 生食、ジャム、製菓、自家消費・摘み取り(Pick-your-own)向け。日持ちの短さから商業大規模流通には不向き。
現代品種への遺伝的寄与(Patriot等)
- Dixi は商業的には現役品種として広く流通していないが、現代品種の系譜上の重要な中間親として大きな遺伝的貢献を残している。
- Patriot(パトリオット):
- 系譜: US-3 × Earliblue
- 種子親 US-3 は Michigan Lowbush-1(V. angustifolium 系野生選抜)× Dixi の交配個体(USDA 系統番号)。
- 育成系統番号 ME-US32(メイン大学 W. Hepler × USDA A. D. Draper)。1954 年交配 → 1957 年選抜 → 1976 年米国独立 200 周年記念命名。
- 従って Patriot は Dixi の孫品種にあたり、Dixi の大果性が極寒地適応大粒早生品種 Patriot の遺伝的基盤の一翼を担う。
- U.S. 1(米国系統): Dixi × (Jersey × Pioneer の未命名交配)から育成され、Dixi が再交配親として用いられた事例が記録されている。
- これら Patriot・US 系列を介して、Dixi の血は北米北部および日本北海道の極寒地ノーザンハイブッシュ品種群に間接的に受け継がれている。
日本での状況
- 流通名: 「デキシー」または「ディキシー」(カナ表記揺れあり、「ディクシー」表記も)。
- 位置づけ: ノーザンハイブッシュ系の古典・大粒晩生品種として、家庭果樹・観光摘み取り園レベルで一定の流通がある。商業大規模栽培品種ではない。
- 苗木流通: 花ひろばオンライン、苗木部、グリーンデコ、ITANSE、園芸ネット、greenery 等の主要オンライン苗木店で 2 年生挿し木苗・接ぎ木苗が販売されている。
- 栽培適地: 関東以北推奨。耐寒性は実用上強いと紹介されることが多く、温暖地ではコンテナ栽培+夏季半日陰管理が推奨される。
- 観光農園・ブランド: 茨城県「ツクベリーやさと」など一部観光農園で栽培品種としてラインアップに含まれている。
- 評価: 「大粒で香り豊か」「酸甘バランスが良い」「初心者でも育てやすい」とポジティブに紹介される反面、「裂果が多い」「日持ちが短い」「粒揃いが後半悪化」といった古典品種特有の弱点も併記されることが多い。
不明・未確定事項
- Dixi における Jersey × Pioneer 由来 GM-37 と Stanley のいずれが種子親(母本)/花粉親(父本)かは閲覧可能な HTML 史料では明示されておらず不明。
- 米国植物特許番号は当時の USDA 公的発表品種であり、取得されていないものと推定される(一次特許情報は確認できず)。
- 日本における正式な導入年・導入経路は不明。
- 米国側資料の「not very hardy」と日本側資料の「耐寒性強い」は評価が割れており、栽培環境(夏季高温多湿耐性 vs 低温耐性)による相対評価の差異と推測されるが、確定的な原因は不明。
参考情報源
- Frederick V. Coville (1937 頃) "Improving the Wild Blueberry"
- Ehlenfeldt, M. K. ほか "Frederick V. Coville and the History of North American Highbush Blueberry Culture"
- BackyardGardener "Vaccinium corymbosum (Dixi Highbush Blueberry)"
- Royal Horticultural Society "Vaccinium corymbosum 'Dixie' (F)"
- USDA ARS "Historic Collection at NAL Gives Insight into Blueberry's Domestication"
- USDA National Agricultural Library "Frederick Vernon Coville Records on Blueberries"
- Biodiversity Heritage Library "Frederick Vernon Coville blueberry records"
- ツクベリーやさと「デキシー について」
- 花ひろばオンライン「ブルーベリー ノーザンハイブッシュ系 デキシー 苗」
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