バーリントン Burlington
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配親: 'Rubel'(母)×'Pioneer'(父)
- 'Rubel':1912年にニュージャージー州の野生株から選抜された Vaccinium corymbosum 系統。Rube Leek(ルーブ・リーク)に因む命名。Coville–White 共同事業(Whitesbog)から得られた最初期の選抜品種で、現在も育種素材として広く利用される。
- 'Pioneer':1920年に Coville が公表した「最初のハイブッシュ交配品種」。商業的栽培ブルーベリーの嚆矢。
- 育成者: Frederick V. Coville(フレデリック・V・コビル、USDA 主任植物学者)。1937年の没後、進行中だった育成系統のうち約 14 系統が遺族と USDA により評価・公表され、'Burlington' はその一つとして 1939 年にリリースされた。
- 命名由来: ニュージャージー州 Burlington 郡(Whitesbog のあるパインバレンズ地域に近い)に因む地名命名と一般に説明される。古典品種に多い NJ 地名命名パターン(Jersey, Stanley, Weymouth, Pemberton 等)と整合。
樹体・果実特性
樹体
- 樹勢: 中庸〜強。「vigorous, upright」(強勢・直立性)と評され、太く頑強な主軸枝(stocky canes)を多数発生する。
- 樹形: アップライト(直立性)、密に分枝するタイプ。多枝(multiple-branched)でブッシーな樹姿を作る。
- 樹高: 約 1.5〜1.8 m(5〜6 フィート)。家庭園芸では生垣としても使われる。
- 紅葉: 秋葉は鮮やかな深紅(crimson)に色付き、観賞価値が高い。
- 耐寒性: USDA ハーディネスゾーン 4〜8(資料により 3〜7 とも)。冬季の気温変動への耐性も評価される。
- 若木の弱点: 若齢時には茎枯病(stem blight)への感受性があると指摘される資料あり。
結実・果実
- 開花期: 晩咲き(late blooming)。晩霜害を回避しやすいことが歴史的な利点として語られる。
- 収穫期: 中晩生〜晩生。米国基準で 7月後半〜8月にかけて収穫が始まり、数週間続く。'Elliott' のような「極晩生」よりは早いが、ノーザンハイブッシュの中ではかなり遅い部類。日本国内(berryslife など)では「中晩生〜晩生」に位置付けられる。
- 果実サイズ: 中粒(medium)。日本資料では約 13〜16 mm。米国資料では「中〜中大」と記載。
- 果皮色: ライトブルー(明るい青)。果粉(ブルーム)が多く外観良好。
- 果肉・硬さ: 硬く、裂果(cracking)に強い。輸送・貯蔵性が高い。一方で、berryslife(自然の休憩所)の評価表では果実硬度を「軟(やわらかい)」と記載しており、栽培環境差が大きいことを示唆する。
- 食味・糖酸: 「fair dessert quality(生食としては並)」「flavor somewhat lacking, but improves in storage(風味はやや乏しいが、貯蔵で改善する)」と評される。完熟前は酸味が立ちやすい。
- 用途: 生食、製菓・パイ、保存食(ジャム)に向く。裂果耐性があり、観光農園のもぎ取りや家庭果樹にも適する。
- 欠点: 風味の評価は古典品種の中では平均〜やや下位とされる。後発の Bluecrop 等に食味で劣るため商業面では衰退。
現代品種への遺伝的寄与(Elliott親等)
- 'Elliott'(1973年公表、USDA/Darrow): 1947年に G. M. Darrow が行った交配 'Burlington'(母)×'U.S. 1'(父)の実生から選抜され、Arthur Elliott(ミシガン州 Otter Lake)に送られて育成・評価された。
- Elliott は北米で長らくノーザンハイブッシュ最晩生の主力品種として君臨し、9〜10月初旬まで収穫期を延ばした「シーズン延伸戦略」の中心品種。Burlington の晩咲き性・果実の硬さ・耐寒性が Elliott に色濃く受け継がれた。
- 遺伝的近交性: Burlington 自体が 'Rubel'×'Pioneer' で、Pioneer の系譜にも Brooks/Sooy(Rubel 同様の NJ 野生選抜)が含まれるため、近交係数が高い。Elliott は「最も近交度の高いハイブッシュ品種の一つ」と表現される(Experimental Farm Network 注記)。
- 間接的寄与: Elliott 経由で、現代の極晩生フレッシュ用品種である 'Liberty'(USDA, 2004; Brigitta×Elliott)や 'Aurora'(USDA, 2004; Elliott の血統を含む)などにも Burlington の遺伝子が伝わっている。これにより、Burlington は実質的に「現代ハイブッシュの晩生系統の祖父母世代」として位置付けられる。
- Coville 古典品種群の遺伝的基盤: Coville が公表・育成した 29 系統は、1992 年時点で米国商業面積の約 75% を占めていたとされ、Burlington もこの古典品種群の一員として「現代ハイブッシュ業界の遺伝的土台」に組み込まれている。
日本での状況
- 認知度: 一般消費者・家庭園芸家への認知度は低い。日本ブルーベリー協会、農協等の主要育種・栽培推奨品種リストには含まれない。
- 専門家・研究機関での認識: ブルーベリー専門サイトや古典品種コレクター向けの解説では「1939年公表、'Rubel'×'Pioneer' のノーザンハイブッシュ古典品種」「Elliott の母親」として歴史的意義から紹介される。
- 国内栽培: 「自然の休憩所(Berry's Life)」のような古品種コレクション園では栽培実績があるが、現在は栽培終了している例もあり(Berry's Life は「現在は栽培していない」と明記)、商業生産は確認できない。
- 苗木流通: 国内主要苗木店(花ひろば、グリーンでGO!、井戸園芸 等)の主力ラインナップには通常含まれない。コレクター向け/個人輸入での入手が想定される。
- 位置付け: 日本では「Elliott の親」「Coville 系古典品種」としての歴史的位置付けが主であり、商業栽培品種としての推奨はほぼ無い。
育成者注釈・特記事項
- Coville 没後にリリースされた「ポストモータム品種群」の代表例の一つで、'Burlington'・'Dixi'・'Stanley' 等の同世代品種と並び、北米ハイブッシュ育種の第二世代を形成した。
- 風味評価が古典品種としては平均的だったため、Bluecrop(1952年)など後発の風味重視品種に商業的には置き換えられた。しかし果実の硬さ・晩咲き・耐寒性の組み合わせが交配親として高く評価され、Darrow による Elliott 育成への素材として再評価された。
- 「果実の硬さ」「裂果耐性」「晩咲き(晩霜回避)」の 3 点が遺伝的形質として現代品種に継承されている。
- 出典が記述する詳細(収量・低温要求量・USPP 番号等)の多くは、当該古典品種の公的記録が散在しているため不明な項目が多い。
参考情報源
- Experimental Farm Network – 'Elliott' Blueberry('Burlington' = Rubel × Pioneer の系譜記載)
- Backyard Gardener – Vaccinium corymbosum 'Burlington' Highbush Blueberry
- Hand Picked Nursery – Burlington Blueberry Plant
- Penn State Extension – Blueberry Variety Selection in the Home Fruit Planting
- Backyard Berry Plants – Rubel Heirloom Highbush
- Italian Berry – 110 Years of Blueberry History
- USDA ARS Magazine – Blueberry Growing Comes to the National Agricultural Library
- Tandfonline – Frederick V. Coville and the History of North American Highbush Blueberry Culture
- Coville's Serendipitous Association with Blueberries Leading to the Whitesbog Connection(Rutgers)
- New Jersey Digital Highway – The Blueberry Industry
- Berry's Life(自然の休憩所)– NHB 品種特性表
- ブルーベリーハウス – 品種一覧(abc...)
- Backyard Berry Plants – Heirloom Blueberry Plants Archive