ハーバート Herbert
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配組み合わせ: Stanley × GS149
- GS149 = Jersey × Pioneer(GBS解析論文 PMC6198992 の系譜表より)
- したがって Herbert の親系譜は実質的に Stanley ×(Jersey × Pioneer)
- 母方 Stanley: F. V. Coville が1921年に選抜・公表したハイブッシュ歴史品種。Katharine ×(野生 Rubel)由来とされ、Coville の息子 Stanley に因む。「最も風味の良いハイブッシュ品種」と評された。
- GS149: 番号系統。Jersey(Rubel × Grover 系の歴史品種)と Pioneer(Brooks × Russell系・Coville初期品種群)を掛け合わせた未公表選抜。
- 1940年代の米国ハイブッシュ商業化拡大期に開発・選抜が進み、1952年にUSDAから発表された。これは BlueCrop / BlueRay / Berkeley / Coville / Earliblue / Ivanhoe らとともに「Big Seven」と総称される、現代北部ハイブッシュ商業品種群の基礎セットの一つ。
- なお初期文献(Chatham Apples 引用の1937年ニューヨーク資料)には「GM-37 × Stanley(1930年交配、1935-36年に有望株選抜)」という記述があり、これは Herbert に至る同じ Coville/Darrow 系統育種の文脈で言及される。最終公表系統 Herbert の交配記号としては Stanley × GS149 が学術文献で用いられている。
樹体・果実特性
- 樹勢・樹形: 中〜強。直立〜やや開帳性で大きく広がる(Rutgers FS419 は "Very Spreading" と記載)。樹高は 150〜200 cm 以上に達し、枝は太くなりやすく剪定管理が必要。
- 耐寒性: USDA Zone 5〜7(業者により Zone 5〜9 表記もあり)。寒冷地適性は良好。
- 収穫期: 後期〜中後期(晩生寄り中生)。ニュージャージーでは7月、ミシガンでは8月10日頃から約2週間。
- 果実サイズ: 大〜極大(14〜21 mm、2〜2.5 g/"V Large")。
- 果皮色・形: 中程度の青色、わずかに扁平な丸形。
- 食味: 「Soft aromatic, very high dessert quality」(Rutgers)。芳醇な香り、酸味は控えめで甘みが豊か、デザート用として極めて高評価。古典品種中で最高ランクの風味と評されることが多い。
- 果肉・果皮: 果皮が薄く果肉は柔らかいため、機械収穫不向き。手摘み・直販/観光園向け。
- 日持ち: 短く長距離輸送には不向き。0〜+3 ℃で約2か月保存可(家庭流通レベル)。
- 収量: 1樹あたり 5〜9 kg(業者により 8 lb/約3.6 kg 表記もあり)、安定多収。
現代品種への遺伝的寄与(Lateblue等)
- Lateblue(レイトブルー)の親: Herbert × Coville の交配により育成された USDA品種(PMC6198992 系譜表で確認)。Lateblue は晩生・大粒・良食味の代表的な商業品種で、Herbert の風味と樹勢、Coville の果実形質を引き継ぐ。
- Big Seven の一員としてその後の北部ハイブッシュ育種の親系統に多用され、Herbert の遺伝子は晩生・芳香・大粒・良食味系の現代品種に広く拡散している。
- Cara's Choice(カラーズチョイス)への直接寄与: USDA/NJAES 公開資料(ARS Beltsville)の系譜は G-144 × US 165(G-144 = 11-93 (Bluecrop sib) × Darrow、US 165 = US 79 自殖、V. darrowii 'Fla 4B' × US 56 等を含む複雑な種間雑種)であり、Herbert は Cara's Choice の直接の親系譜には記載されていない。Herbert 由来の遺伝が Bluecrop など他の Big Seven 経由で間接的に含まれる可能性は理論上あるが、ARS公式系譜での明示は不明。
- インブリーディング係数: Lateblue は 0.25 と高く、初期ハイブッシュ品種(Brooks, Sooy, Rubel など野生選抜)に由来する遺伝子が集中していることが指摘されている(Ehlenfeldt らの集団遺伝学的解析)。Herbert もこの古典系統群の中核に位置する。
日本での状況
- 日本ブルーベリー協会のノーザンハイブッシュ品種紹介に「ハーバート(Herbert)」として記載される歴史品種で、ノーザンハイブッシュの中でも風味の点で根強い人気を持つ。
- 苗木流通: 「苗木部(花ひろば)」など複数の通販で「ハーバード」表記の苗(2年生挿し木ポット苗、5号、約50 cm、税込2,198円程度)が販売されている。
- 家庭果樹・観光農園・自家消費向けに利用され、商業大規模栽培品種としての地位は Bluecrop 等に譲るが、食味重視の生産者・愛好家から評価が高い。
- 推奨受粉樹として Jersey、Chandler などが挙げられる。
- 日本の冷涼〜温帯地域(北日本〜中部高冷地)に適合性が高く、関東以南の平地では夏の高温に注意が必要。
参考情報源
- Hartmann's Plant Company「Herbert Blueberry」
- Rutgers NJAES Fact Sheet FS419「Selecting Blueberry Varieties for the Home Garden」
- PMC(PLOS ONE 掲載論文の系譜表)Table 1 — Herbert = Stanley × GS149 (Jersey × Pioneer)、Lateblue = Herbert × Coville
- Chatham Apples(NY1937年資料転載)「Improving the Wild Blueberry」
- USDA ARS Beltsville「Cara's Choice」公式系譜資料
- USDA ARS「Historic Collection at NAL Gives Insight into Blueberry's Domestication」
- Tandfonline「Frederick V. Coville and the History of North American Highbush Blueberry Culture」
- 一般社団法人 日本ブルーベリー協会「ブルーベリーの品種」
- いしいナーセリー「ハーバード ブルーベリー品種完全解説読本」
- 苗木部(花ひろば)「ブルーベリー ノーザンハイブッシュ系 ハーバード 苗」
- Stark Bro's「Herbert Blueberry Plant」