ホートブルー・プチ Hortblue Petite
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 育成機関: ニュージーランドの HortResearch(後継:Plant & Food Research)。
- 親系譜: 矮性四倍体ハイブッシュ Vaccinium corymbosum の自然受粉実生(open-pollinated seedlings of a dwarf tetraploid V. corymbosum)から選抜。具体的な交配親個体名は公開資料では不明。
- 一部欧州系小売(Lubera Edibles 等)では「V. corymbosum × V. angustifolium(ローブッシュ系)の交雑」と紹介されているが、これは販売向け解説であり、ISHS Acta Horticulturae 810 号および HortScience 46(11) (2011) の査読論文では「四倍体ハイブッシュからの自然受粉実生選抜」と記述されている。
- 2005年、観賞兼食用(ornamental home-garden cultivar)としてニュージーランド国内市場に発表され、その後欧州・英国・アイルランド・オセアニアに拡大。
- 姉妹品種に「Hortblue Onyx」(暗色葉観賞型)、「Hortblue Poppins」(USPP21881P3)がある。
樹体特性
- 樹勢: 中庸。コンパクト・小型・密に分枝する観賞向き樹形。
- 樹形: こんもりと丸く、矮性のブッシュ状。落葉性〜半常緑性(栽培地により異なる)。
- 樹高: 約 60〜100 cm(最大でも約 1 m、文献最大値 1.5 m 未満)。幅も同程度(約 45〜100 cm)。鉢栽培・パティオ栽培に最適なサイズ。
- 葉: 濃緑〜青緑色、秋には鮮やかな緋色〜紅赤色に紅葉し、観賞価値が極めて高い。
- 花: ベル型(釣鐘状)の白花〜淡桃色のブラッシュ入り花。春期にプロリフィック(多花性)に開花。
結実特性
- 開花期: 春に主開花、生育条件が良好な場合は同シーズン内に第二回(さらに第三回)の開花を起こす。これは標準的なハイブッシュ品種にはほとんど見られない特性。
- 収穫期: 二期成り(double cropping)を最大の特徴とする世界初の二期成りブルーベリーとされる。
- ニュージーランド: メインクロップは12月中下旬。
- 欧州・英国: 第1回 7月中旬〜8月中旬、第2回 9月中旬〜10月上旬。
- 第2回の果実は第1回よりやや大きい傾向(販売資料)。
- 低温要求量: 低い(low chill requirement)。具体的な時間数は公開資料では不明だが、標準的なノーザンハイブッシュ(800〜1,000時間)より明確に低いと記述されている。
- 自家結実性: 自家結実性あり(self-fertile、単独でも結実可能)。ただし HortScience 46(11) (2011) の研究によれば:
- 自家受粉では1果当たり可稔種子数が減少し、果実肥大が劣り成熟が遅延する。
- 他の四倍体ハイブッシュとの他家受粉(outcrossing)で着果率・果重・収量が顕著に向上。
- 大果品種(例:'Nui')の花粉を用いると Hortblue Petite の果実がより大きくなる メタキセニア(metaxenia)効果 が確認されている。
果実特性
- 粒の大きさ: 小〜中粒。査読論文では1果重 1.0g 未満(small, less than 1.0 g)と記載。販売資料によっては「中粒〜やや大粒」と表記されるものもあり、栽培条件・他家受粉の有無で差が大きい。
- 果皮: 濃青色〜暗青色(dark blue)、ブルーム良好。
- 食味: 香り高く("very aromatic")、甘味と適度な酸味。アントシアニンを豊富に含み、フィトケミカル含量が高い("high in phytochemical composition")と育成機関が強調。
- 用途適性: 生食、家庭向けデザート、ジャム、製菓、観賞兼用。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 強い。RHS のハーディネス評価は H6(−20°C〜−15°C、英国・北欧全域でハーディ)。落葉性のため厳寒期に休眠して耐寒性を発揮。
- 耐暑性: 公開資料に明示的記述なし。不明だが、低温要求量が低いため温暖地での適応も期待される(暖地での実証データは限定的)。
- 病害虫耐性: 観賞兼用として育成され、家庭栽培で「丈夫」と評されるが、特定病害(ミイラ病、Phytophthora根腐病、茎枯病等)への抵抗性に関する公開データは不明。
推奨栽培地
- 用途: コンテナ栽培・小型庭園・パティオ・ベランダ栽培・観賞用ボーダー植栽に最適。樹高1m前後と非常にコンパクト。
- 土壌: 酸性(pH 4.5〜5.5)、湿り気のある〜やや湿潤、水はけ良好なエリカ系培養土。
- 日照: 日向〜半日陰。
- 適応域: 英国・アイルランド・北欧・西欧の温帯〜冷涼地、ニュージーランド全域、オセアニアの温暖地。北米でも栽培可能。
受粉相性
- 単独でも結実するが、他の四倍体ハイブッシュ品種(特に大果品種)の混植で果実品質と収量が顕著に向上する。
- HortScience 2011 論文での推奨花粉源:開放受粉、または 'Nui' のような大果品種(メタキセニア効果により Hortblue Petite の果実がより大きく仕上がる)。
- 二倍体・六倍体(例:ラビットアイ)との交雑は倍数性不一致のため不適。
商業利用状況
- 主用途は 家庭園芸・観賞兼食用。商業大規模生産には果実が小さすぎ(<1g)、向かない。
- ニュージーランドでは Bunnings 等で「Blueberry Muffin™」名(Vaccinium corymbosum 'Hortblue Petite' PVR)として「Incredible Edibles」シリーズで流通。
- 英国・アイルランド・欧州では Lubera Edibles、D.T. Brown、Mr. Fothergill's、Pomona Fruits、Victoriana Nursery、Mr Middleton(アイルランド)など多数の家庭園芸ナーサリーが PBR ライセンス下で苗を販売。
- 「世界初の二期成りブルーベリー(the world's first double-cropping blueberry)」というユニーク・セールスポイントによりプレミアム苗木として販売されている。
日本での状況
- 日本国内主要ブルーベリー苗木専業店(花ひろばオンライン、タキイ、国華園、日本花卉ガーデンセンター、平野農園、ブルーベリーカントリー井戸園芸 等)の取扱品種リストを Web 検索した範囲では、「ホートブルー・プチ」「Hortblue Petite」「ホートブループチ」等の表記での流通実績は確認できず、実質的に未流通/極めて稀と推定される。
- 日本での品種登録(農林水産省 品種登録制度)情報も確認できない(不明)。
- 並行輸入や少数の個人輸入家による試験栽培の可能性は否定できないが、公的記録および主要販売チャネル上の流通は確認されない。
育成者注釈・特記事項
- 「世界初の二期成り(double cropping / re-blooming / 'perpetual')ブルーベリー」として知られ、家庭園芸市場での話題性が極めて高い。
- 観賞兼食用(ornamental home-garden cultivar)として明確に位置づけられており、商業生果生産用ではなく鉢植え観賞・パティオ栽培向けに最適化された品種。
- HortScience 46(11) (2011) の Patten ら(仮)の研究で、ブルーベリーにおけるメタキセニア(花粉源が果実形質に直接影響する現象)の存在が示唆された重要な品種でもある。
- 紅葉が美しく、ブルーグリーンの夏葉と緋色の秋葉、白〜淡桃の鐘形花、濃青の果実と季節ごとに観賞価値を提供する点が育成意図の中核。
参考情報源
- ISHS Acta Horticulturae 810: 'Hortblue Onyx' and 'Hortblue Petite': Two New Ornamental Blueberries from New Zealand
- ISHS article page (810_18)
- HortScience 46(11) 2011, Pollination of 'Hortblue Petite' Blueberry: Evidence of Metaxenia in a New Ornamental Home-garden Cultivar
- BES (Bee Library) abstract of the same paper
- ResearchGate publication entry (Hortblue Onyx & Petite)
- Lubera Edibles (DE/UK 苗販売・栽培情報)
- Bunnings NZ「Blueberry Muffin™ (Hortblue Petite PVR)」商品ページ
- D.T. Brown Seeds (UK)
- RHS Plant Finder(学名・H6 hardiness rating ほか)
- Victoriana Nursery (UK)
- Pomona Fruits (UK)
- Mr Middleton Garden Shop (Ireland)
- 姉妹品種参考: USPP21881P3 'Hortblue Poppins'(同シリーズ参考)