マグノリア Magnolia
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 親系譜: Fla 78-15 × Fla 72-5(フロリダ大学由来の選抜系統同士の交配。ただし交配・選抜・命名・公表は USDA-ARS Poplarville が実施)。
- 育成者: James M. Spiers, Creighton L. Gupton, Arlen D. Draper(USDA-ARS Southern Horticultural Research Unit, Poplarville, MS)。
- 公表: HortScience/Acta Horticulturae 446('JUBILEE', 'MAGNOLIA', AND 'PEARL RIVER' SOUTHERN HIGHBUSH BLUEBERRIES)にて Jubilee, Pearl River と同時にリリース。
- 品種名の由来: ミシシッピ州の州花および州木である「Magnolia(モクレン/タイサンボク)」にちなむ命名。Mississippi の別称 "Magnolia State" を反映。
- 後代品種への寄与: 'Top Shelf'(Fall Creek、USPP24,697、2014年公告)の母本(female parent)として用いられている(花粉親は 'Draper')。Top Shelf は中生・大粒・スカイブルー色・優れた食味を特徴とするノーザンハイブッシュ寄り中間タイプの商業品種。
樹体特性
- 樹勢: 中程度(medium)。圃場定植後は生育旺盛・多収となるが、苗が小さく定植直後は活着管理に注意を要する。日本の長期栽培報告では、定植5年程度経過後にやや樹勢が落ちる傾向(Sharpblue や Jewel ほどの強健さは無い)との評価あり。
- 樹形: 開帳性(spreading)〜半開帳性。枝の出方がやや乱れがちで、枝数が多いため整枝・剪定が必要。
- 樹高: 中庸(medium)。日本の販売資料では1.5〜2 m 程度の中型サイズが標準。
- 観賞性: 新梢が赤味を帯び、樹姿そのものは派手さに乏しいが、紅色の新梢に観賞価値があると評する国内資料もある。
結実特性
- 開花期: 中生開花。ラビットアイ最早生品種より 5〜12 日 遅れて開花するため、米南部の遅霜被害を回避しやすい。日本では4月下旬〜5月上旬の開花が報告される。
- 収穫期: 中生(mid-season)。米南部(ミシシッピ/ジョージア):5月中〜下旬。最早生ラビットアイ品種より 5〜14 日 早く完熟する。日本(関東〜中部標準):6月中旬〜7月上旬(Blueray と Legacy/Summit の中間期)。
- 低温要求量: 約 500時間(一部資料 550〜650時間)。サザンハイブッシュとしては中庸〜やや高め。
- 収量: 多収・安定。圃場定植後は生産性が高く、花芽着生量が非常に多いため摘花・摘果(摘蕾)と剪定の徹底が必要。
- 自家結実性: 部分的自家結実性あり。ただし他のサザンハイブッシュ品種との混植により結実・果実サイズ・収量が向上する。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜中大粒(medium〜medium-large)。日本の接ぎ木苗販売資料では 19〜20 mm の大粒も報告される一方、米国の元品種記述では「medium」が標準。
- 果皮色: 明るい青色(good color)。
- 果肉・硬度: 硬く(firm)食感良好。輸送性・貯蔵性に優れる。
- 果梗痕(スカー): 小さくきれい(small, dry scar)。商品性が高い。
- 食味: 甘味・酸味のバランスが良好(balanced)。糖度は日本産接ぎ木栽培で 13〜14度 Brix の例あり。O'Neill, Star, Spartan などの個性派品種ほどの強い風味は無いが、優良な食味とされる。若木期はやや風味が淡いが、成木になると驚くほど美味との評価。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 7〜9 が推奨(米南東部沿岸平野部向けサザンハイブッシュとして設計)。日本では南東北〜九州での栽培が可能とされる。
- 耐暑性: 良好。暖地・温暖地(米南部 Coastal Plain, ミシシッピ/ルイジアナ/ジョージア南部)に適応。
- 耐霜性: 開花がラビットアイ最早生品種より遅れるため、晩霜害を回避しやすい点が大きな育成目的。
- 病害虫耐性: USDA-ARS の品種公表時点では強い特異耐病性は強調されていない(具体的耐病性データは不明)。Poplarville 育種計画の選抜過程で米南部沿岸平野部の主要病害下で生存・生産性が確認されているレベル。Stem blight(茎枯病)等への明示的な抵抗性データは公開資料で見当たらず「不明」。
推奨栽培地
- 米国: 南東部沿岸平野部(Coastal Plains of the Southeastern United States)。具体的にはミシシッピ州、ルイジアナ州、アラバマ州、ジョージア州南部、北フロリダ等の中・低低温要求地帯。
- 日本: サザンハイブッシュの一般推奨域である南東北〜九州、沖縄。土壌pH 4.3〜4.8 の弱酸性、日当たり良好な場所、夏期の乾燥(特に春〜夏の水切れ)を避ける。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的に自家結実するが、果実品質・収量向上のため他のサザンハイブッシュ品種との混植が推奨される(USDA リリース時点から interplant 推奨が明記)。
- 混植推奨品種: 同時期に開花する SHB(例:Pearl River, Jubilee, Biloxi, アイレン 等)。日本の販売資料では Biloxi, アイレン などとの混植が推奨される。
- ラビットアイとの交配: SHB 同士の方が遺伝的相性は良いが、開花期が重なるラビットアイ早生品種との混植による補完受粉も実用上は機能しうる。
商業利用状況
- 米国: USDA-ARS による無特許リリース品種のため、ライセンス料無しで広く増殖・流通。リリース当初は Coastal Plain の早期出荷向け SHB として位置付けられたが、後発の大粒・特許品種(Star, Emerald, Jewel, Farthing 等)の登場により商業圃場での主力からは外れている。現在は遺伝資源としての価値(後代品種の親本)が大きく、特に 'Top Shelf'(Fall Creek, USPP24,697)の母本としての貢献が知られる。
- 後代品種: 'Top Shelf'(Magnolia × Draper, Fall Creek 選抜・2014年特許公告)。中〜大粒、スカイブルー色、貯蔵性に優れた手摘み市場向け中生品種。
日本での状況
- 流通: 日本の専門ナーセリー(花ひろばオンライン、ブルーベリーラボ直方、ブルーベリファームおかざき 等)で接ぎ木苗・実生苗が流通。サザンハイブッシュ系の中堅品種として扱われている。
- 観光農園での評価: 食味・食感・果実品質・育てやすさのいずれも合格点の優良品種という評価がある一方、樹姿が地味で見栄えに欠けるため広く普及しているとは言えない、との評。
- 栽培上の注意: 土壌適応性は広く初期生育は旺盛だが、5年以降に Sharpblue や Jewel ほどの強健さは見せない。花芽が極めて多いため、摘蕾・摘果と剪定を徹底しないと小粒化・隔年結果が起こりやすい。
- 流通名: 「マグノリア」と表記。
育成者注釈・特記事項
- 依頼文の誤情報: 当初依頼では「UF(フロリダ大学)・Lyrene 博士育成」とあったが、これは誤り。'Magnolia' は USDA-ARS(ミシシッピ州 Poplarville)の Spiers, Gupton, Draper による品種である。なお親系統は Fla 系列(フロリダ大学由来の選抜番号)であるため、遺伝的にはフロリダ系統の血を引くが、品種としての交配・選抜・命名は USDA Poplarville の業績。
- Top Shelf の親としての位置付け: Top Shelf 特許書類(USPP24,697 / US20130239261P1)において母本として "Magnolia (unpatented)" と明記。Fall Creek(米オレゴン州)が交配・選抜(2007年に選抜)したものであり、UF の品種ではない。
- 同名品種・混同注意: 「Magnolia」という名は園芸植物(モクレン属)の一般名でもあり、ブルーベリー品種名としては類例も多い。商標・流通上は "Magnolia (blueberry)" として識別。
- 無特許の意義: USDA 公的機関による無特許リリースのため、ライセンスフリーで遺伝資源として広く育種利用された。これが Fall Creek 等の民間育種における後代品種誕生の前提条件となった。
参考情報源
- ISHS Acta Horticulturae 446: 'JUBILEE', 'MAGNOLIA', AND 'PEARL RIVER' SOUTHERN HIGHBUSH BLUEBERRIES
- Extension Foundation Blueberries: Magnolia Blueberry Variety
- USDA-ARS Southern Horticultural Research Unit, Poplarville MS(過去のブルーベリーリリース一覧)
- US Plant Patent USPP24,697(Top Shelf, 母本 Magnolia)
- Google Patents US20130239261P1(Top Shelf 出願公開)
- Small Fruits Consortium: Blueberry Cultivars for Georgia
- 花ひろばオンライン: マグノリア サザンハイブッシュ系
- ブルーベリーラボ直方: マグノリア
- ブルーベリファームおかざき: マグノリア
- Dave's Garden: Vaccinium 'Magnolia'