ウィンザー Windsor
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 育成者: Paul M. Lyrene(フロリダ大学)
- 交配: FL83-132 × Sharpblue(1984年、フロリダ州ゲインズビルの温室で交配)
- 種子親 FL83-132: フロリダ大学育種プログラムの未公表の高度選抜系統
- 花粉親 Sharpblue: フロリダ大学が1975年に発表した未特許のサザンハイブッシュ
- 1985年に約1万実生から選抜され、その後フロリダ州ゲインズビル近郊の Windsor(地名)に由来する圃場で評価・増殖されたことから「Windsor」と命名された。
- 1996〜1997年にかけてフロリダ州 Windsor 地区の松樹皮ベッドに数千本が植え付けられ、商業評価が行われた。
樹体特性
- 樹勢: 強い(vigorous)
- 樹形: やや開張気味の半直立性(semi-upright〜somewhat spreading)。特許明細では2年生株で樹高約110 cm、樹冠径約105 cmと記載。
- 増殖: ソフトウッド挿し木で容易に発根する。
- 葉: 濃緑、葉斑(fungal leaf spots)への耐性は平均以上。
結実特性
- 低温要求量: 約300時間(45°F/約7°C 以下)。低チリング型サザンハイブッシュ。
- 開花期: 早春(フロリダ北中部)。
- 収穫期: 中生。北中部フロリダで開花後約60日で成熟し、4月10日〜5月5日に80%が成熟、初収穫50%目安は4月22日頃。日本(滋賀県大津周辺の事例)では6月中旬〜7月上旬。
- 自家結実性: 自家受粉で約72%の結実率を示し、自家結実性は平均以上(self-compatible, above-average self-fruitfulness)。ただし他家受粉により果実肥大が早まる。日本の一部小売情報では「自家不和合性が強い」と相反する記載もあり、商業栽培では他品種混植が推奨される。
- 収量: 良好な土壌で植え付け後3〜4年の成株から1株あたり年間5〜6ポンド(約2.3〜2.7 kg)。
果実特性
- サイズ: 非常に大粒。特許明細値で平均果重 約2.48 g、果実高約12 mm × 幅約17 mm(収穫初期はとくに大粒)。
- 果皮色: 濃青色(dark-blue)、ブルーム(果粉)あり。表面ワックスは擦りに対する耐性が平均以下とされる。
- 食味: 甘味と酸味のバランス良好(sweet, sub-acid)、香味は「sweet, pleasant」と評される。
- 果肉: 果皮は薄く硬め、果肉は柔らかめで食感が良いと国内紹介ページで評価される。
- 種子: 小さい。
- 果柄痕(picking scar): 大きく、湿潤条件下では裂け(tear)が出やすい点が欠点として明記される。これはフロリダの大規模商業栽培で評価が下がった主因。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 低チリング・サザンハイブッシュであり、耐寒性は本質的に弱い。最寒月平均気温が約60°F(約15.6°C)以下となる中部〜北部フロリダ相当の温暖地での開花・結実が前提。
- 耐暑性: フロリダ気候下で選抜されており、温暖地適応性は高い(具体的指標数値は不明)。
- Cane canker(茎枯病, Botryosphaeria corticis): 高度耐性
- Stem blight(B. dothidea): 中程度耐性
- Phytophthora 根腐病(P. cinnamomi): 中程度耐性
- 葉斑病類: 平均以上の耐性
- 注意点: シアナミド(hydrogen cyanamide, 休眠打破剤)に対する感受性が平均より高い(薬害が出やすい)。フロリダでの商業栽培離脱の一因。
推奨栽培地
- 米国: 中〜北部フロリダ(最寒月平均気温が約15.6°C以下)相当の低チリング地帯。ただし現在 UF/IFAS は商業新植では非推奨としている(収穫期がフロリダの市場ウィンドウの後半に外れること、果柄痕の問題、シアナミド薬害感受性のため)。
- 国際展開: FFSP のライセンシーを通じて日本、アルゼンチン、チリ、EU、ペルー、南アフリカ、ウルグアイで利用可能。Fall Creek Farm & Nursery、Dole Berry Company などが扱う。
- 日本: 関東以西の温暖地で栽培可能とされる。
受粉相性
- 自家結実可能(特許データ上 約72%)だが、他家受粉により果実成熟が早まり、結実率と果実品質が向上する。
- 同じ低チリング帯のサザンハイブッシュ品種(Emerald, Jewel, Star, Springhigh, Farthing 等)との混植が一般的。
商業利用状況
- フロリダ大学公式の品種保護プログラム(FFSP)によりライセンス管理されてきた特許品種。
- 米国フロリダでは大粒で食味良好なため一時導入されたが、収穫期がフロリダの早期出荷市場(4月初旬まで)から遅れ、果柄痕の裂けによる選果コスト増、シアナミド薬害感受性等の理由で現在は商業新植非推奨。
- 一方で、後継品種 Farthing(USPP19,341)の花粉親(父親)として極めて重要な役割を果たした。Farthing は FL96-27 × Windsor の交配で2001年に選抜され、低チリング、密で旺盛な樹姿、早期収穫、高収量、甘く硬く果柄痕が小さく乾く果実といった商業的優良形質を有し、現在も世界的に栽培される主要品種。Windsor の大果性、自家結実性、病害抵抗性が Farthing に引き継がれたと考えられている。
日本での状況
- 日本国内ではサザンハイブッシュ系の中粒〜大粒品種として流通。FFSP のライセンス品種であり、購入時に増殖・転売禁止の誓約が必要となる場合がある。
- 取扱例: オーシャン貿易オンラインショップ「ウィンザー(SH系・2年生苗相当)」価格 1,650円(税込)/かけ×らぼ(観光農園)品種紹介ページ「ウィンザー」: 収穫6月中旬〜7月上旬、果実サイズ評価 ★★★★★、酸味 ★★★☆☆、米国産、特許品種、女性に人気と紹介。
- 観光農園・趣味家を中心に植えられる事例があるが、商業大規模栽培の主力ではない。
育成者注釈・特記事項
- 特許明細の主要な独自性主張: 大果(2.48 g前後)、強い樹勢、半直立樹形、cane canker への高度耐性、低チリング(約300時間)、自家結実性が平均以上。
- 商業上の弱点: ①果柄痕(picking scar)が大きく湿度条件下で裂けやすい ②果皮ワックスのこすれ耐性がやや弱い ③シアナミド薬害感受性が高い ④フロリダの市場早出し窓に対しては中生で出遅れる。
- これらの弱点ゆえ、Windsor 自体はフロリダ商業栽培の主力からは退いたが、遺伝資源としての価値は高く、Farthing をはじめとする後続育種素材として大きく貢献した。
- 命名の由来は評価圃場のあったフロリダ州 Windsor(ゲインズビル近郊)に因む。
参考情報源
- USPP12,783 P2 "Blueberry plant named 'Windsor'" (Google Patents)
- Florida Foundation Seed Producers (FFSP) 'Windsor' 品種ページ
- Blueberry Breeding(UF育種プログラム公式サイト)'Windsor'
- UF/IFAS EDIS HS1245 "Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida"
- USPP19,341 P2 "Southern highbush blueberry plant named 'Farthing'"(Windsor を花粉親とする後継品種)
- Free Patents Online PP19341 'Farthing'
- AgriStarts Vaccinium 'Windsor'
- オーシャン貿易オンラインショップ「ウィンザー」
- かけ×らぼ(観光農園)「ウィンザー」