オリンピア Olympia
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配親: Pioneer(パイオニア)× Harding(ハーディング)(日本語の品種解説資料による記述)
- Pioneer は Brooks × Sooy の交配で、F. V. Coville 博士が1920年に発表した世界初の改良ノーザンハイブッシュ品種の一つ。
- Harding(USDA 育種系統由来の旧品種)。
- 来歴: 1921年、Joseph Eberhardt はワシントン州 Steamboat Island の現 Steamboat Island Road 東側に約50エーカーのブルーベリー農園を開墾。様々な系統を試作する中で大粒の自家育成品種 'Eberhardt' を発表し、続いて 'Olympia' を1933年に発表した。Eberhardt's Nursery(後の Eberhardt Blueberry Nurseries、1951年時点で操業確認)はワシントン州オリンピア地域から太平洋岸北西部全域へ苗を供給し、地域における初期商業ブルーベリー栽培の基礎を築いた。「ミシシッピ川以西で最初のブルーベリー農園」とする説もある。
- 太平洋岸北西部(Pacific Northwest, PNW)の在来ヘリテージ品種として位置付けられる。
樹体特性
- 樹勢: 旺盛(vigorous)。新シュート(new canes)を毎年安定して発生させる。
- 樹形: 直立性〜やや開張性(spreading, upright)。剪定により直立性を維持しやすく、剪定への反応が良い。
- 樹高: 成木で約1.2〜1.8 m(4〜6 ft)。資料により「約1.5 m(5 ft)」「約1.2 m(4 ft)」「5〜6 ft × 4 ft」など若干の差異あり。
- 紅葉: 秋に赤〜橙色(資料によっては「明るい赤」)に色づき、観賞性が高い。
- 栽培上の特徴: 粘土質土壌にもある程度耐えるとの記述あり(ポートランド地域の事例)。
結実特性
- 開花期: 不明(具体的な月旬を示す一次情報は確認できず)。晩霜(late spring frost)に弱い傾向との記述があり、空気の流通の良い場所が望ましい。
- 収穫期: 中生〜中晩生(mid-to-late season、late midseason)。米国 PNW で7月下旬収穫の記述あり。
- 低温要求量(チルアワー): 800時間以上(45°F/約7°C 以下)。比較的高い要求量だが、温暖な冬の地域に適性ありとされる。
- 結実までの年数: 不明(一般的なノーザンハイブッシュとして定植後2〜3年で結実開始、5〜6年で本格収量と推定されるが、本品種固有の記述は確認できず)。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜中大粒(medium / medium-large)。
- 果皮色: 濃青色(dark blue)または明るい青色(pale blue)/鮮青色(bright blue)と記述に幅あり。
- 果肉・果皮: 果皮はやや薄め、果肉は柔らかめ。裂果(cracking)に強い。果柄痕(scar)はやや大きめ。
- 食味: 甘く濃厚な「リッチなブルーベリー風味」と評価される。「優れた甘味」「sweet flavor」と各種資料で一貫して記載。
- 糖度(Brix): 不明(具体的な数値情報なし)。
- 収量: 中程度(medium)。Harding 譲りの豊産性との記述もあり。
- 果実の樹上保持性: 良好(fruit hang well)。
- 用途: 生食、家庭園芸用途、観光農園・自家摘み(U-pick)が中心。
耐寒性・耐病性・耐暑性
- 耐寒性: USDA Zone 5〜8 推奨。比較的温暖な冬地域に適性。
- 耐暑性: 不明(PNW の冷涼〜温暖地適性が中心の品種であり、明確な耐暑性データは確認できず)。
- 耐病性: 「病害抵抗性は良好」との記述あり(一般論レベル)。具体的な病害感受性プロファイル(Phytophthora、Anthracnose、Mummy berry 等)に関する詳細な公式データは不明。
- 晩霜害: 受けやすい傾向。空気流通の良い植え場所が推奨される。
推奨栽培地
- 米国: USDA Zone 5〜8。太平洋岸北西部(ワシントン州、オレゴン州)の冷涼〜温暖地域が原産・最適地。
- 土壌: pH 4.5〜5.5、有機質豊富で排水性良好な酸性土壌。粘土質にもある程度耐えるとされる。
- 日射: 終日日照(full sun)、ないし半日陰でも可。
- 日本: ノーザンハイブッシュ系として東北〜関東以北の冷涼地、ないし高冷地での栽培適性が想定されるが、本品種固有の日本国内栽培適地データは確認できず。
受粉相性(自家結実性)
- 自家結実性: 低い(poorly self-fertile)。本品種は「ハイブッシュの中でも自家結実性が乏しい数少ない品種の一つ」とされ、単独植栽では結実が極めて少ないと明記される。
- 推奨: 別品種のノーザンハイブッシュと混植して交配受粉(cross-pollination)させることが必須。
- 相性の良い品種: Chandler(チャンドラー)が相互受粉樹として明示的に推奨されるほか、開花期の重なる他のノーザンハイブッシュ系品種全般。
商業利用状況
- 1933年導入の歴史的銘柄であり、太平洋岸北西部の初期商業ブルーベリー栽培の発展を支えた。
- 現在は OSU Extension(PNW-656)の商業価値評価で「3(商業価値は高くない)」と分類され、「Small farm or home garden」用途として位置付けられている。
- 大規模商業生産では、より生産性・耐病性・果実品質に優れる現代品種(Duke、Bluecrop、Draper など)に主役を譲っており、現在は家庭園芸、観光農園、ワシントン州・オレゴン州の伝統的小規模農園、自家摘み(U-pick)農園で残存する程度。
- ヘリテージ品種としての文化的・地域的価値が再評価されつつあり、Raintree Nursery、Burnt Ridge Nursery、Planting Justice などのワシントン・オレゴン州の苗木業者で苗木が継続販売されている。
日本での状況
- 日本国内のブルーベリー品種解説サイト(個人ブログ等の二次情報)には、「1933年に Pioneer × Harding の交配で育成された中粒・中生のノーザンハイブッシュ品種」「樹形は開張性で大型化」「秋の紅葉が鮮やかな赤」と紹介される。
- 一方、大手苗木専門店(花ひろば苗木部、大関ナーセリー、苗木通販各社)の品種ラインアップでは本品種の確認ができず、日本国内での流通量は極めて限定的と推察される(不明の部分あり)。
- 日本の主要オンラインモール(楽天、Amazon、Yahoo!ショッピング、ホームセンター系)での明確な販売事例は本調査時点で確認できず。
- 海外苗木サイト(Raintree、Burnt Ridge 等)からの個人輸入による愛好家栽培事例は存在し得るが、商業流通の実績は不明。
育成者注釈・特記事項
- Olympia は「米国西海岸のヘリテージ・ノーザンハイブッシュ品種」として歴史的価値を持ち、1920〜30年代に Coville 博士の USDA 主導の東海岸育種と並行して、民間育種家(Joseph Eberhardt)が西海岸で独自に発表した稀少な銘柄である。
- 1933年というのは、Pioneer 発表(1920年)からわずか13年後のごく初期の育成品種であり、商業ブルーベリー育種史上の早期事例として位置付けられる。
- 育成親 Pioneer × Harding はいずれも初期の Coville 系統であり、本品種は「コビル系統の血統を継ぐ西海岸育成品種」と言える。
- 自家結実性の乏しさは現代の育種視点では弱点だが、当時の品種としては典型的特徴。
- 紅葉の鮮やかさ、粘土質土壌耐性、PNW 適応性などから、現在も観賞性と食味を兼ねたヘリテージ品種として園芸的に評価される。
- 注意: 「Olympia」「Olympic」「OlympusBlue®('TH-1008')」は別品種であり、特に近年 Fall Creek Nursery がリリースした商業品種 OlympusBlue® とは無関係である。
参考情報源
- Raintree Nursery「Olympia Blueberry」
- Planting Justice「Olympia Blueberry」
- Burnt Ridge Nursery「OLYMPIA BLUEBERRY (Vaccinium corymbosum)」
- Epic Gardening「27 Different Types of Blueberries For Your Garden」
- Landscape Design In A Day「Never-Fail Blueberry Varieties for Portland Gardens」
- OSU Extension「Blueberry Cultivars for the Pacific Northwest(PNW 656)」
- Washington State Magazine(WSU)「Summer Blues」
- Steamboat Island Neighbors「Griffin's Roots Include a Colorful Farming History」
- pickyourown.org「Olympia Area of Washington State Blueberry U-Pick Orchards」
- Bark and Garden「Blueberry Varieties」
- Biodiversity Heritage Library「Eberhardt blueberries」
- Fall Creek Nursery「OlympusBlue® 'TH-1008'(参考:別品種)」