オニール O'Neal
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 女親(種子親): 'Wolcott'(ノーザンハイブッシュ系の早生品種)
- 男親(花粉親): FL64-15(フロリダ系統、V. darrowii の血を引く低温要求量の少ない選抜系統)
- 育成者: James R. Ballington(NCSU)を中心とする育種チーム
- 来歴: 1970年代、米国南東部でステムブライト(茎枯病)の蔓延と「サザンハイブッシュ」系統の登場により、NCSU の育種計画は再編された。'O'Neal' および 'Reveille' は、果実品質と機械収穫適性を重視した育種から生まれた重要な放出品種である。'O'Neal' のゲノムは祖先となる V. corymbosum 由来の構成が大半を占め、数世代前の種間交配で導入された他の Vaccinium 種由来の対立遺伝子は、選抜過程で淘汰された結果、想定より少ないことが報告されている。
- 日本への導入: 1996年(複数の国内栽培情報源)
樹体特性
- 樹勢: 強い〜やや強い。生育旺盛で穂条(シュート)の発生も良好。
- 樹形: 開帳性(一部資料では半直立性とも)。茂みが密になり、全体としてブッシー(茂み状)。
- 樹高: 成木で約1.2〜1.8 m(地植え4〜6フィート)。日本の鉢植え/地植えでは1〜1.5 m程度に達する。
- 葉の様子: 葉色はやや灰みを帯びた緑色。一般地以南の温暖地では冬季も葉が残り常緑〜半常緑となる。
結実特性
- 開花期: 早咲き。米国では3〜4月、日本暖地では3月下旬〜4月。鐘形の白花が、特徴的な赤色の花芽から開く。
- 収穫期: 早生(極早生に分類されることも多い)。米国では5月中旬〜6月上旬。日本では露地で5月下旬〜6月下旬(地域差あり)。無加温ハウスでは6月上旬から収穫可能との試験報告(福島県農業総合センター、会津地域)あり。
- 低温要求量(Chill hours): 約400〜600時間(資料により幅があり、450h あるいは 500〜600h との記述が一般的。低温要求量が比較的少ないため温暖地に適する)。
- 収量: 中庸〜豊産。成木で約2.7〜9 kg(6〜20 lb)/株程度。温暖地では特に良好な収量が得られる。
- 自家結実性: 部分的自家結実性(弱い自家稔性)あり。1本でも結実するが、同系統内の異品種(他のサザンハイブッシュ品種:Misty、Biloxi、Jubilee、Star、Emerald、Sunshine Blue 等)との混植で着果率・果実サイズ・収量が向上する。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜大粒。1果あたり約2〜3 g。完熟時は16〜21 mmに達することもある(資料により)。
- 果皮色: 濃青色(ダークブルー)、果粉(ブルーム)が乗る。
- 果肉・食感: 硬めで締まりがあり、果汁多くジューシー。果皮は薄め〜繊細で口当たりが滑らか。
- 糖度・食味: 糖度は概ね13〜17度(樹上完熟で15度超)。甘味が強く酸味が少ない。芳香があり、サザンハイブッシュ系の中でも食味は最高クラスと評価される。
- 果梗痕: 一般に乾いて小さい(市場性に有利)と評価。
- 日持ち・輸送性: 蝋質の果皮で一定の日持ちがある一方、果皮が繊細でジューシーなため、長距離流通には弱く、雨に当たると裂果しやすい点が指摘されている。市場出荷より直販・観光摘み取り園・庭木向きとされる。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA ゾーン 5〜9(資料により 6〜9 とも)。冬の最低気温 約 -15℃(5°F)程度までは耐えるとされる。ただし早咲き性のため、晩霜で花が傷む可能性に注意が必要。
- 耐暑性: 高い。温暖地に適応し、暑熱下でも食味・樹勢を維持する。
- 耐病性: 一般に病害抵抗性は良好と評価される一方、ステムブライト(茎枯病、Botryosphaeria dothidea 等)には感受性があるとの指摘もある。
- 害虫: 日本ではコガネムシ類による食害例が報告されている(致命的にはなりにくい)。
推奨栽培地
- 米国: USDA ゾーン 6〜9 の南部および中緯度地域。低温要求量が少ないため、フロリダ州北部〜ノースカロライナ州、カリフォルニア州、ジョージア州など南部主要産地で栽培される。
- 日本: 東北南部以南〜九州、沖縄を含む暖地〜温暖地で栽培可能。サザンハイブッシュ系の代表品種として、関東以西の暖地での選択肢として広く推奨されている。
受粉相性
- 自家結実性は弱いがあり、単独でも結実する。
- 結実安定・果実肥大・収量増のため、開花期が重なる他のサザンハイブッシュ品種との混植が強く推奨される。
- 推奨混植品種例: Misty、Biloxi、Jubilee、Star、Emerald、Sunshine Blue、Sharpblue 等のサザンハイブッシュ系統。
- 同じサザンハイブッシュ系であれば交配親和性は高い(具体的なS遺伝子型情報は本調査では不明)。
商業利用状況
- 米国: 1980年代後半〜1990年代以降、サザンハイブッシュの代表品種として広く栽培された。早生で温暖地適性が高く、フレッシュマーケット向けの早期出荷品種として商業的に重要な位置を占めた。果皮の繊細さから、より硬果で輸送性の高い後発品種(Star、Emerald、Jewel、Springhigh、Suzi blue 等)への置き換えが進んだ地域もあるが、現在も食味重視の栽培者により利用されている。
- 観光農園・庭木: 食味・樹姿・結実性の良さから、観光摘み取り園・家庭果樹として人気が高い。
日本での状況
- 導入年: 1996年に国内導入されたとされる。
- 流通: タキイ種苗、花ひろばオンライン、各種専門ナーセリーから苗木が販売されており、初心者〜プロ生産者まで広く入手可能な定番サザンハイブッシュ品種。
- 位置付け: 日本暖地(関東以西)でサザンハイブッシュ栽培が広がる過程で、最初期に導入・普及した代表品種の一つ。日本のサザンハイブッシュ早生品種の「基準」的存在として扱われている。
- 栽培評価: 「サザンハイブッシュ系で最もおすすめ」「育てやすい」と複数の国内栽培者が高評価。観光ブルーベリー園の品種構成にも採用されている(福島県会津地域の試験事例あり)。
- 欠点として指摘される点: 雨による裂果、果皮の繊細さ、輸送性の低さ、樹齢が進むにつれての樹勢低下傾向、コガネムシ被害。
育成者注釈・特記事項
- 'Wolcott'(NHB)× FL64-15(V. darrowii 系統)という種間交配由来であり、低温要求量の少なさと耐暑性をフロリダ系統から、果実品質と適度な耐寒性を Wolcott から受け継いだ典型的なサザンハイブッシュ品種である。
- ゲノム解析(Nature/Heredity 誌、PMC公開)では、'O'Neal' は祖先 V. corymbosum 由来のゲノムが大半を占め、種間交配を介して導入された V. darrowii 等の対立遺伝子の寄与は、世代を経た選抜により予想より低くなっていることが示されている。
- 早生・低温要求量・大粒・甘味・温暖地適性を兼ね備えた SHB 育種の成功例として、後続のサザンハイブッシュ品種開発における重要な親または参照品種となった。
- 早咲き性のため晩霜害に注意。雨除け・適切な剪定(一年枝の花芽数で着果調整可能)・コガネムシ対策が日本暖地での栽培ポイント。
参考情報源
- NCSU Blueberry Genetics & Genomics Laboratory「O'Neal」ページ
- NCSU Blueberry Varieties 一覧
- NCSU Southern Highbush 概要
- HortScience「'O'Neal' Southern Highbush Blueberry」(Ballington 他)
- Heredity(Nature, 2020)「Genomic insight into the developmental history of southern highbush blueberry populations」
- PMC(同上)
- Italian Berry「The Legacy of Blueberry Breeding at NC State University」
- Raintree Nursery「O'Neal Blueberry」
- One Green World「O'Neal Southern Highbush Blueberry」
- Stark Bro's「O'Neal Blueberry Plant」
- Monrovia「O'Neal Early Season Blueberry」
- Berries Unlimited「O'Neal Blueberry」
- Edible Landscaping「O'Neal Blueberry」
- きらぼしファーム「ブルーベリー品種【オニール】サザンハイブッシュ」
- ブルーベリーファームおかざき「オニール」
- ブルーベリーファームおかざき(Ameba ブログ)「ブルーベリーの品種13 オニール」
- 花ひろばオンライン「ブルーベリー サザンハイブッシュ系 オニール 苗」
- タキイネット通販「ブルーベリー・オニール」
- ブルーベリーファクトリー岐阜「オニール(6月上旬〜6月下旬)」
- 福島県農業総合センター研究報告 第5号(2013)「会津地域の観光ブルーベリー園に適する品種構成」