パトリオット Patriot
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 親系譜: US-3 × Earliblue
- 種子親 US-3: Michigan Lowbush-1(V. angustifolium 系野生選抜)× Dixi(V. corymbosum)
- 花粉親 Earliblue: Stanley × Weymouth(いずれもノーザンハイブッシュ)
- 育成系統番号は ME-US32。1954 年に W. Hepler(メイン大学)と A. D. Draper(USDA)らによって交配され、1957 年に有望個体として選抜、長期試験を経て 1976 年にアメリカ合衆国独立 200 周年(バイセンテニアル)を記念して "Patriot"(愛国者)と命名・発表された。
- 原典文献: Hepler, P. R. and Draper, A. D. 1976. 'Patriot' blueberry. HortScience 11(3): 272.
- 半数程度に Lowbush(V. angustifolium)の血が入るため、強い耐寒性と低めの樹高というハーフハイ的形質を併せ持つが、商業的にはノーザンハイブッシュとして分類されることが一般的。
樹体特性
- 樹形: 直立性〜やや開帳性。若木期は直立、結実期に果重で枝が広がる。
- 樹高: 約 90〜180 cm(3〜6 ft)。日本の栽培情報では 1.0〜1.5 m に収まることが多く、家庭果樹向きとされる。
- 樹勢: 中〜強。やや短稈でコンパクト。葉は細長く鋸歯がある。
- 萌芽前の蕾はやや赤みを帯び、花は小型のクリーム白色。
- 土壌適応性: ノーザンハイブッシュ品種の中では比較的広く、重粘土・湿りがちな圃場でも他のハイブッシュより順応しやすいとされる(Berries Unlimited ほか)。ただし過湿(停水)には弱い。
結実特性
- 開花期: 4 月下旬〜5 月(日本本州標準的な北部ハイブッシュと同等)。
- 収穫期: 早生〜早中生。米国ミシガン州サウスヘイブン基準で 7 月 5 日頃から開始し、8 月中旬まで断続的に収穫。日本では 6 月中旬〜7 月上旬が一般的。
- 低温要求量(チルアワー): 約 800〜1,000 時間(7.2℃以下)。資料により 1,000 時間以上との記載もあり。
- 自家結実性: 部分的に自家結実するが結実率は低め。実用上は他のノーザンハイブッシュ(Bluecrop、Earliblue、Spartan、Jersey 等)との混植・他家受粉で果実肥大と収量が大きく向上する。
- 着果: 房は密に締まり、収穫しやすい("Easy picker")と評価される。
果実特性
- 果実サイズ: 大粒〜極大粒。直径 16〜20 mm、平均果重 約 2.66 g(最大 3.32 g)。Hartmann's Plant Co. 計測ではカップ当たり初期 49 粒、後期 60 粒。
- 形状: やや扁平(オブレート)。米国流通では「クォーター硬貨大」と表現される。
- 色: 完熟で淡〜中ブルー、ブルーム良好。
- 食感・風味: 果肉は引き締まり、果梗痕は小さく乾く(出荷適性良好)。糖度 11〜13 度(日本資料)、濃厚で酸味と甘みのバランスが良い。やや酸味が立つとの記述もある。
- 用途: 生食、ジャム、製菓、冷凍。北海道では「古参品種パトリオット」として冷凍出荷例あり。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 極めて強い。Lowbush 由来の血により USDA Zone 3b(最低気温 -34.4℃〜-37.2℃)まで適応。資料により -35℉(≒ -37℃)まで耐えるとされる。-30〜-40℃級の極寒地適応はノーザンハイブッシュ中でもトップクラス。
- 耐暑性: 弱め。USDA Zone 7a が南限とされ、夏季高温多湿地域では生育不良になりやすい。
- Phytophthora cinnamomi(疫病性根腐れ)に対し、ハイブッシュ品種中ではやや高い抵抗性を示すと報告される(Hartmann's、PNW Pest Handbook 等)。ただし完全抵抗ではなく、Aurora や Liberty ほどの強さではない。
- 一般的なブルーベリー病害虫への発生は少なく、家庭果樹レベルではほぼ問題なしとされる(苗木業者評)。
- 過湿耐性: 低い。排水対策必須。
推奨栽培地
- 北米: USDA Zone 3〜7(カナダ南部、ニューイングランド、五大湖地方、北中部)。
- 日本: 北海道(道南〜道央)および東北・北関東〜中部山間地、信越、北陸の高冷地が最適。耐寒性に優れるためノーザンハイブッシュが越冬困難な内陸寒冷地でも導入可能。九州・西日本の平地は耐暑性の面で不利。
- 北海道では古くから導入されている数少ないノーザンハイブッシュ早生品種で、商業栽培・観光農園・冷凍加工出荷の実績がある(食べチョク等で「北海道産古参品種パトリオット」流通)。
受粉相性
- 同じノーザンハイブッシュ系で開花期が重なる以下品種が好適: Bluecrop(最も一般的に推奨)/Earliblue(同じ親系統だが別品種、開花期一致)/Spartan/Jersey/Northland(半樹高で耐寒性が近い)
- ラビットアイ系(V. ashei)とは交雑不可(生態系統が異なる)。
- ハーフハイブッシュやローブッシュとも開花期が合えば部分的な受粉補助になる。
商業利用状況
- 北米では家庭園芸・U-pick(観光摘み取り)・小規模商業園で広く流通する古典品種。樹姿が比較的コンパクトで観賞価値もあるため、エディブル・ランドスケープ用途でも人気。
- 大規模機械収穫向けではないが、果粒が大きく見栄えが良いため直売・贈答向けに評価される。
- 主要苗木供給元: Stark Bro's、Hartmann's Plant Co.、Raintree Nursery、St. Lawrence Nurseries、One Green World、Monrovia、Indiana Berry、Berries Unlimited 等。
日本での状況
- 日本国内では古くから導入されており、ノーザンハイブッシュ系の定番早生品種の一つとして流通。
- 国内苗木流通: 花ひろば(ハナヒロバ)、苗木部、苗木の卸売販売店「苗木部」、苗屋、グリーンデコ、園芸ネット等で 2 年生〜3 年生苗(接ぎ木・挿し木)が販売されている。
- 北海道では「道南で栽培される古参品種」として認知され、商業冷凍ブルーベリーとして食べチョク等産直プラットフォームで販売実績あり。
- 家庭果樹としては「耐寒性が強く北海道でも作れる大粒早生種」というポジションで紹介されることが多い。
育成者注釈・特記事項
- "Patriot" の命名は 1976 年の米国独立 200 周年(Bicentennial)を記念したもので、メイン州ハイランドの厳しい気候下での試験を経て、極寒地適応・大果・早生の三拍子を狙って育成された半世紀の歴史を持つロングセラー品種。
- Lowbush(V. angustifolium、ワイルドブルーベリー)の血を 1/4 程度引くため、純粋なノーザンハイブッシュ品種より樹高がやや低く(ハーフハイ的)、寒冷地適応性に優れる。一方で純ハイブッシュより果実形状が扁平になる傾向はこの種間血統に由来する。
- Phytophthora 根腐れ抵抗性に関しては、研究によっては「Patriot 根が遊走子をより多く誘引した」との報告もあり、評価は完全には一致しない。圃場排水管理は依然として重要。
- 育成から半世紀を経ているが、北米北部・カナダ・北欧・北日本(北海道)といった極寒地ではいまだに置き換えが効かない貴重な遺伝資源とされている。
参考情報源
- Hepler, P. R. and Draper, A. D. (1976) 'Patriot' blueberry. HortScience 11(3): 272.(一次原典・HTML 全文公開なし、書誌情報のみ)
- University of Maine Cooperative Extension, Bulletin #2253 "Growing Highbush Blueberries"
- Hartmann's Plant Company "Patriot Blueberry"
- Berries Unlimited "Patriot Northern Highbush Blueberry"
- St. Lawrence Nurseries "Patriot Blueberry"
- Minnetonka Orchards "The Patriot Blueberry"
- Penn State Extension "Blueberry Variety Selection"
- Pacific Northwest Pest Management Handbooks "Blueberry Root Rot"
- ja.wikipedia 「パトリオット (ブルーベリー)」
- 苗木部「パトリオット ブルーベリー ノーザンハイブッシュ系の特徴と育て方」
- 花ひろば「ブルーベリー ノーザンハイブッシュ系 パトリオット」
- 苗屋「ブルーベリー:パトリオット 2年生苗」
- 食べチョク「【北海道産】冷凍ブルーベリー(古参品種パトリオット)」