スパルタン Spartan
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配親: Earliblue(アーリーブルー)× US 11-93(USDA選抜系統)
- 大粒で食味の優れる早生品種を目指して育成された。米国の早生ノーザンハイブッシュ系における代表的銘柄の一つで、当時としては「平均的なブルーベリーの2倍」とも称される極大粒果として注目された。
- メリーランド州(USDA Beltsville)での育種に由来するとされる。日本国内の苗木流通業者の解説でも「メリーランド原産・1977〜1978年作出」と紹介されている。
樹体特性
- 樹勢: 強い。直立性(upright)。
- 樹高: 約1.2〜1.8 m(4〜6 ft)/日本の販売情報では1.5〜3 m程度に達するとの記述あり。
- 樹形: コンパクトでまとまりやすく、小枝の発生が少ないため剪定作業が比較的容易。
- 紅葉: 秋にオレンジ〜黄色に色づき、観賞性も高い。
- 栽培上の弱点: 根系が弱く「突然死」しやすい品種として知られ、定植後3〜4年で枯死する事例が報告される。日本ではラビットアイ系を台木にした接木苗が推奨される。
結実特性
- 開花期: 関東標準で4月中旬〜4月下旬(やや遅め)。開花が遅めのため晩霜害を受けにくい利点がある。
- 収穫期: 早生。米国基準では6月上旬〜中旬、日本(関東標準)では6月中旬〜7月上〜中旬。
- 開花〜成熟までの期間: 非常に短く、開花後は急速に成熟が進むのが特徴。
- 低温要求量(チルアワー): 概ね800〜1,000時間(45°F/約7°C以下の低温要求量)。
- 結実までの年数: 植え付け後1〜2年で結実が始まり、完全な収量に達するまで5〜6年。
果実特性
- 果実サイズ: 極大粒(19〜21 mm、20 mm超もよく見られる)。発表当時、早生ノーザンハイブッシュの中で最大級と評価された(「クォーター硬貨大」「100円玉大」と表現される)。
- 果皮色: 濃い青色〜サファイアブルー、明るい青灰色のブルーム(果粉)が乗る。
- 糖度: 平均11〜15° Brix(約14° Brix前後の記述が多い)。
- 食味: 甘味が強く酸味がしっかり乗る「甘酸バランス型」。完熟するとマイルドで甘味優勢になる。果汁感に富み、香りも豊か。早生品種の中でも食味評価は高く、「最も甘い品種の一つ」と紹介される。
- 果肉・果皮: 果肉は引き締まって硬めの食感。果皮は割れにくく、裂果はほとんど発生しない。
- 用途: 生食、製菓、ジャム・缶詰加工。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 強い。USDA Zone 4〜7(一部資料では4〜8)。−30°F(約−34℃)まで耐える記述あり。
- 弱点: ファイトフトラ根腐病(Phytophthora root rot)、炭疽病(Anthracnose fruit rot)に高感受性。ミイラ病(Mummy berry)、茎枯れ病・キャンカー(Stem blight/Canker)にもかかりやすい。
- 害虫: ジャパニーズビートル(コガネムシ類)、ガールミッジ(タマバエ)に好まれやすい。
- 栽培上の対策: 排水性の良い高畝栽培、適切な剪定による通風確保が必須。
推奨栽培地
- 米国: USDA Zone 5〜7(一部4〜8)。北東部、北西部太平洋岸、五大湖地域など寒冷〜冷涼地が適地。
- 日本: ノーザンハイブッシュ系として東北〜関東以北の冷涼地に向く。温暖地でも開花が遅めなため晩霜回避でき、栽培事例はあるが、根の弱さによる突然死リスクから接木苗利用が前提。
- 土壌: pH 4.5〜5.2(米国情報では4.0〜5.5)、有機質に富み排水性良好なサンディローム〜ロームを好む。ピートモスやブルーベリー専用培土を必須とし、過湿厳禁。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的に自家結実性あり(partially self-fertile)。
- 推奨: 単独でも結実するが、収量・果実サイズ向上のため他品種との混植が強く推奨される。
- 相性の良い品種: Bluecrop(ブルークロップ)、Patriot(パトリオット)など、開花期が重なるノーザンハイブッシュ系早〜中生品種。
商業利用状況
- 米国では1970年代後半〜80年代にかけて家庭園芸・小規模商業園で人気を博した古典銘柄。
- 大粒・早生・食味良好という長所がある一方、突然死・各種根病害への弱さから、現代の大規模商業生産では「Duke」「Draper」など耐病性の高い後発品種に主役を譲っている。
- 現在は主に家庭園芸用、観光農園、Uピック農園、コミュニティ生産など、品質・大粒性を重視する用途で評価されている。
日本での状況
- 日本国内のブルーベリー苗木専門店(花ひろば、苗木部、苗木通販ナエ・ヤ、グリーンデゴ、One Green World取扱店等)で広く流通している。
- 「ノーザンハイブッシュ系の中で抜群の果実品質」「最も優秀な特大粒品種の一つ」「King of blueberry」と紹介される。
- 観光農園での導入事例(愛知県岡崎市の観光農園など)があり、「最高ランクのプロ農家でこそ提供可能な品種」と位置付けられることもある。
- 接木苗(ラビットアイ系台木)が一般的に推奨され、自根苗は突然死リスクのため敬遠される傾向にある。
- 鉢植え栽培の事例も多く、家庭園芸での人気品種。
育成者注釈・特記事項
- 早生品種でありながら極大粒で食味が良いという、当時としては画期的な組み合わせを実現した品種。
- 一方で、根系の弱さ(特にファイトフトラ根腐病に対する感受性)が長年の課題であり、現代の品種改良において「耐病性」という観点で後発品種が優先される一因となっている。
- 開花期がやや遅めで晩霜害を受けにくいのは、寒冷地・遅霜の多い地域で栽培する際の利点。
- 「King of blueberry」「最大級の早生品種」という美称で日本国内では特にホビー栽培家から高く評価されるが、栽培難度は高く、上級者向けと位置付けられる。
参考情報源
- やくも果樹研究所「ブルーベリー品種紹介『スパルタン』」
- ブルーベリーファームおかざき「スパルタン」
- 花ひろば苗木部「ブルーベリー ノーザンハイブッシュ系 スパルタン」
- ナエギブ「スパルタン ブルーベリー ノーザンハイブッシュ系の特徴と育て方」
- One Green World「Spartan Blueberry」
- Territorial Seed「Spartan Blueberry Plant」
- Stark Bro's「Spartan Blueberry」
- Berries Unlimited「Spartan Blueberries」
- Raintree Nursery「Spartan Blueberry」
- Food Forest Nursery「Spartan Blueberry Plant」
- Penn State Extension「Blueberry Variety Selection」
- OSU Extension「Blueberry Cultivars for the Pacific Northwest(PNW 656)」