パールリバー Pearl River
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 育成者(共同): James M. Spiers(主導)、C.L. Gupton ほか USDA-ARS の育種チーム。
- 親系譜: 国内資料(Berry's Life、harikyu)の記録によれば、
[G-67(Earliblue × US11-93) × E-55(Berkeley × F-72)] × Beckyblue(五倍体・ラビットアイ系統)の交配組合せに由来する。母方にノーザンハイブッシュ(Earliblue、Berkeley)系統、父方にラビットアイ品種Beckyblueを導入することで、メキシコ湾岸の低休眠ニーズと土壌適応性を兼備する系統として育成された。 - 来歴: USDA-ARSポプラビル研究所は、メキシコ湾岸地域(Gulf Coast)の気候に適した中低休眠ブルーベリー育成を1970年代以降進めており、1994年12月にPearl Riverを
Jubilee、Magnoliaと同時に3品種同時放出した。これらは同地域の主力ラビットアイ品種(Climax、Premier)よりも晩咲き・早採りで、晩霜回避を狙った戦略品種として位置付けられた。1996年3月の凍霜害ではClimax・Premierが60〜75%の花芽被害を受けた一方、これら3品種は5〜12%の被害に留まったと記録される。 - 品種名の由来: ミシシッピ州とルイジアナ州を流れる「Pearl River(パール川)」に由来する地名命名。
樹体特性
- 樹勢: 旺盛(vigorous)。日本国内資料では「樹勢が強く育てやすい」との評価。
- 樹形: 直立性(upright)。整った株立ちを形成する。
- 樹高: 成木で約1.8〜2.4 m(6〜8フィート)程度。USDAハーディネスゾーン7B〜9A向けの推奨資料あり。
- 常緑性: 中休眠帯ではほぼ落葉、暖地では半常緑となることがある。
- 栽培難度: サザンハイブッシュの中では土壌適応性が高く、ラビットアイ的な強健性も併せ持ち、初心者にも比較的扱いやすい。
結実特性
- 低温要求量(chill hours): 約500時間(一部資料では550〜650時間)と幅をもって記載。サザンハイブッシュの中では中休眠タイプ。元の依頼文中「450h」とは資料間で差があり、現状確認可能なソースでは500〜650時間が中心値。
- 開花期: 米国南部基準で同地域ラビットアイ最早生品種(Climax、Premier)よりも約5〜12日遅く開花。これにより晩霜害リスクを軽減。
- 収穫期: 中早生〜中生。Climax・Premierより5〜14日早く成熟。日本(暖地〜中間地)では6月中旬〜7月下旬が収穫中心。
- 自家結実性: 自家結実性は弱く、他のサザンハイブッシュ品種(Allen、Biloxi、Floridablue など)との混植による他家受粉が推奨される。
- 収量: 安定多収との評価。果実サイズは剪定調整により大粒化が可能。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜中大粒。果径 14〜17 mm(最大19 mm)。日本流通苗木商の表記では「18〜19 mm」とも。
- 果皮色: ライトブルー〜ダークブルー、ブルームあり。
- 果肉・食味: 果肉は比較的硬めで食感良好(資料により「やや柔らかめ」との記載もあり)、香りが良い。糖度は10〜11度(Brix 10.8〜11.4)程度、酸味と甘味は中程度のバランス型。
- 果柄痕(picking scar): 良好(small dry scar)で、商業出荷向き。
- 日持ち: 果肉が硬い個体では貯蔵性が高いとの日本側評価がある一方、USDA-ARS報告では貯蔵後の萎凋(shrivel)が目立ち「貯蔵性に難あり」との評価もあり、生産・出荷条件により評価が分かれる。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA Zone 7B〜9A推奨。中休眠帯のため、低休眠SHB品種(Biloxi、Misty等)よりは耐寒性が高い。
- 耐暑性: メキシコ湾岸の高温多湿気候への適応性が高い。ラビットアイ
Beckyblueの血を引くことで土壌・気候適応域が広い。 - 病害抵抗性: ラビットアイ系統の遺伝子導入により、SHB単独系統より病害・乾燥に対する耐性がやや高いとの報告。
- 罹病性: 一般的なブルーベリー病害(ミイラ病、茎枯病、炭疽病)への感受性は中程度であり、適切な圃場衛生管理が必要。
推奨栽培地
- 米国: メキシコ湾岸地域(ミシシッピ、ルイジアナ、フロリダ北部、ジョージア南部、アラバマ南部、テキサス南東部)の沿岸平野(coastal plains)。
- 日本: 関東以西(暖地〜中間地)。九州・四国・関東南部での家庭園芸〜小規模栽培向き。
- その他: 中休眠を満たせる温帯〜亜熱帯気候。
受粉相性
- 自家結実性は弱く、同系統(サザンハイブッシュ)の異品種との混植が必須。日本国内苗木商では受粉樹として
Allen、Biloxi、Floridablueとの組合せが推奨されている。 - 五倍体(pentaploid)であるため、四倍体SHBとの交配で結実率がやや低下する場合があるとの指摘もあるが、実用上は他のSHB品種との混植で十分な結実が得られる。
- ラビットアイ品種との混植は通常推奨されないが、開花期が近いラビットアイ品種(Climax、Premier、Tifblue 等)が近接する場合、訪花昆虫を介した補助的受粉効果が期待できる。
商業利用状況
- 生果用途: 主に生食向け。米国南東部では
Jubilee・Magnoliaとともに「晩霜回避+早出し」戦略品種として導入されたが、貯蔵後の萎凋が問題視され、その後の主力品種(Star、Emerald、Jewel、O'Neal、Pearl など)に主力の座を譲っている。 - 加工用途: 国内資料では「加工には向かない可能性」との指摘あり。生食向け品種としての位置付け。
- 国際的位置付け: USDA-ARS公的品種(unpatented)として流通自由度が高い反面、近年は専有新品種の台頭により商業圃場での主力ではなくなっている。歴史的にはGulf Coast向けSHB育種の中核三品種の一つ。
日本での状況
- 流通状況: 日本国内のブルーベリー苗木流通では、サザンハイブッシュ系の一品種として花ひろばオンライン(苗木部)、グリーンデゴ等のオンライン苗木店で接ぎ木苗(2年生・3年生)が販売されており、家庭園芸向けに入手可能。
- 栽培適性: 関東〜九州の暖地〜中間地で栽培可能。土壌適応性が高くラビットアイ的強健性を併せ持つことから、初心者向けSHBとして紹介されることが多い。
- 国内での評価: 「樹勢強く育てやすい」「果肉が硬く食感良好」「香りが良い」などの肯定的評価がある一方、糖度(10〜11度)はBiloxi等の主力SHBより低めで、収量・果径もやや控えめとの評価。マニア向け資料では総合評価B級と位置付けられている。
育成者注釈・特記事項
- Pearl Riverは厳密には「五倍体(pentaploid)」のラビットアイ/ハイブッシュ複合系統であり、純粋な四倍体SHBではない点が分類上の特徴。父本
Beckyblueがラビットアイ(六倍体)であることに由来する。 - 母系には
Earliblue(極早生ノーザンハイブッシュ)とBerkeley(中生ノーザンハイブッシュ)が含まれており、ノーザン由来の風味とラビットアイ由来の強健性を併せ持つ設計となっている。 - USDA-ARSポプラビル研究所の1994年放出三品種(Jubilee、Magnolia、Pearl River)の中では、Magnoliaが現在最も知名度が高く、Pearl Riverは貯蔵性の課題から商業圃場では主流ではない。
- 育成者主体のSpiersは、後年
USDA-Spiersラビットアイ品種に名前が冠されている同氏(James M. Spiers)。
参考情報源
- ISHS Acta Horticulturae「'JUBILEE', 'MAGNOLIA', AND 'PEARL RIVER' SOUTHERN HIGHBUSH BLUEBERRIES」要旨
- USDA-ARS Publications「Jubilee, Magnolia, Pearl River 関連発表(1994年放出)」
- USDA News Release「ARS Research Helps Blueberry Growers」(2000年)
- CooksInfo「Pearl River Blueberries」
- ISHS Acta Horticulturae「COMPARISON OF THREE NEW SOUTHERN HIGHBUSH BLUEBERRY CULTIVARS」
- HortScience「'Pearl' Southern Highbush Blueberry」(参考:同地・同チームの後発品種`Pearl`との混同注意)
- HortScience「'USDA-Spiers' Rabbiteye Blueberry」(同育成者命名品種、参考)
- ToGoGarden「Pearl River Southern Highbush Blueberry」
- Mississippi State Univ. Extension Fruit Blog
- 花ひろばオンライン 苗木部「ブルーベリー サザンハイブッシュ系 パールリバー」
- 花ひろばオンライン 楽天店「パールリバー(サザンハイブッシュ系 ブルーベリー)」
- グリーンデゴ「ブルーベリー パールリバー 接ぎ木2年生」
- Berry's Life「ブルーベリーの品種特性 サザンハイブッシュ」
- ブルーベリーマニアックス「品種別の特徴と観察 サザンハイブッシュ系」
- 一般社団法人 日本ブルーベリー協会