セブリング Sebring
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配組合せ: Sharpblue(無特許)× O'Neal(無特許)
- 母本(種子親):Sharpblue(UFリリース、SHB低温要求量品種)
- 父本(花粉親):O'Neal(ノースカロライナ州立大学リリース、SHB品種)
- 育成経過: フロリダ大学のブルーベリー育種プログラムにおいて、V. corymbosum 由来の大粒・高品質・直立性形質と、V. darrowi 由来の耐暑性・低温要求量・フロリダ環境適応性を統合する反復選抜(recurrent selection)プログラムの中で得られた実生集団から、Paul M. Lyrene 教授によって1983年に Gainesville のフィールドナーサリーで選抜された。果実品質が高く、極早生で、低温要求量が極めて低い点が選抜基準となった。
- 出典: USPP13683P2(Google Patents) / blueberrybreeding.com。
樹体特性
- 樹勢: 旺盛(vigorous)。Sharpblue と同等の樹勢を示し、3年生株で樹高約1.9m に達する。
- 樹形: 直立性(upright)。太い基部枝(stout canes)を持ち、細枝(twigginess)は限定的。
- 基部枝(cane)数: 中程度の発生傾向で、株あたりおおよそ10本の主要 cane を形成。
- 生育適応: フロリダ中部のような1月平均気温が華氏63度(約17°C)に達する温暖地でも安定して開花・結実する点が最大の特徴。中部フロリダ以南の極低温要求量を求められる地域で適応する。
- 出典: USPP13683P2 / blueberrybreeding.com。
結実特性
- 低温要求量(Chill hours): 約 200時間(< 7°C / 45°F 以下)。米国植物特許明細書(USPP13683P2)には "200 hours per winter below 7°C" と明記されている。なお調査依頼書では「150時間」と記載されているが、特許一次資料に基づき本文書では200時間を採用する。
- 開花期: 極早生。Gainesville(フロリダ北部)での50%開花日は 2月15日。中部フロリダではさらに早い時期に開花が始まる。
- 収穫期: 極早生。50%成熟日は Sebring(フロリダ中部、品種名の由来地)で 4月20日、Gainesville で 5月1日。
- 収穫期間: Sharpblue よりも収穫が集中する(concentrated ripening period)。中盤以降の果実サイズ低下が Sharpblue より少なく、後期まで品質が維持される。
- 収量: 適地で年間 約6 t/ha(特許明細記載の標準収量)。
- 自家結実性: 米国植物特許明細書には自家結実性の明示記載なし。一般にサザンハイブッシュは部分的自家結実性を示すため、他SHB品種の混植による交配が結実率向上に推奨される。
- 出典: USPP13683P2 / blueberrybreeding.com。
果実特性
- 果実重: 平均 約2.0g/粒(中〜大粒)。
- 果実サイズ: 高さ約10mm × 幅約14mm のやや扁平形。Sharpblue とほぼ同サイズ。
- 果皮色: 中程度〜淡青色(medium to light blue)、樹上ではブルームに覆われ "steel gray"(鋼灰色)に見える。
- 食味: 甘さに適度な酸味のある爽やかな風味("sweet, subacid, pleasant")。
- 硬度: 中〜高(medium to high firmness)。Sharpblue より硬い。
- 離層・果梗痕(pedicel scar): 小〜中、概ね乾燥(dry picking scar)。
- 日持ち性: 硬度と乾燥した果梗痕により、Sharpblue より良好。
- 出典: USPP13683P2 / blueberrybreeding.com。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性(USDA Zone): 極低温要求量品種のため、ゾーン8〜10 程度の温暖地が前提。厳寒地は不適。
- 耐暑性: 高い。フロリダ中部での実績あり、V. darrowi 由来の耐暑性を保持。
- 病害抵抗性:
- Phytophthora 根腐病: 中程度の抵抗性(moderately resistant)
- Botryosphaeria 茎枯病(stem blight, B. dothidea): 中程度の抵抗性
- Botryosphaeria 茎潰瘍病(cane canker, B. corticis): 抵抗性あり(resistant)
- 病害感受性:
- 葉の真菌性斑点病(fungal leaf spots): 平均的で、殺菌剤散布が必要な場合あり。
- 出典: USPP13683P2。
推奨栽培地
- 米国: フロリダ中部(特に1月平均気温が約17°C となる地域)を主対象として育成された極低温要求量品種。中部フロリダ以南の温暖な生鮮ブルーベリー生産地に適応。なお blueberrybreeding.com(FFSP公式)では "Recommended for Florida: no" と表示されており、新規植栽としてのフロリダ州内推奨品種からは外れている。
- 日本: サザンハイブッシュ系として理論上は関東以西〜九州・沖縄で栽培可能だが、低温要求量が200時間と極めて低いため、寒冷地では花芽形成上のメリットが少ない。本品種の日本での栽培実績情報は本調査範囲では確認できず、不明。
- 出典: USPP13683P2 / blueberrybreeding.com。
受粉相性
- 米国植物特許明細書には受粉樹に関する具体的記述はなし。サザンハイブッシュ品種の一般原則として、同時期に開花する他SHB品種(Sharpblue, O'Neal, Star, Emerald, Jewel, Misty 等)との混植による交配が結実率と果実サイズの向上に寄与すると考えられる。
- 親品種である Sharpblue と O'Neal は、極早生の Sebring と開花期が比較的近く、潜在的な受粉相手の候補となりうる(ただし Sebring はそれらより早咲き傾向)。
- 出典: USPP13683P2(一般的SHB原則)。
商業利用状況
- 米国植物特許 USPP13,683 P2 は2001年10月18日出願・2003年3月25日公告。植物特許の存続期間は出願日から20年であるため、2021年10月18日に特許権は満了している(理論上)。
- リリース後、フロリダ中部の極早生・極低温要求量市場向けに導入されたが、後年の UF/IFAS の主要刊行物 EDIS HS1245「Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida」の品種一覧(New / Established / Obsolete の3区分)には Sebring の名称は 掲載されていない。これは Sebring が UF/IFAS の現行推奨ラインアップから外れていることを示唆する。
- ナーサリーライセンスは Florida Foundation Seed Producers(FFSP)経由で発行されてきた(http://www.ffsp.net/)。
- blueberrybreeding.com(UF/FFSP公式情報サイト)では Sebring は "Recommended for Florida: no" と明記されており、現行のフロリダ商業生産における新規植栽推奨品種からは除外されている。
- 出典: USPP13683P2 / blueberrybreeding.com / EDIS HS1245。
日本での状況
- 本調査の Web 検索(日本語キーワード「セブリング ブルーベリー」「Sebring ブルーベリー」等)では、日本国内の主要なブルーベリー苗木販売業者・観光農園・ブルーベリー協会(一般社団法人日本ブルーベリー協会、ブルーベリーファームおかざき、花ひろばオンライン、オーシャン貿易、タキイ種苗等)のいずれにおいても本品種の取り扱いは確認できなかった。
- したがって、日本国内での流通・栽培実績は本調査範囲では 不明(少なくとも一般流通品種ではないと推定される)。
- 日本国内における品種登録・商標等の状況も不明。
- 出典: 各種日本語検索結果(該当情報なし) / 日本ブルーベリー協会。
育成者注釈・特記事項
- 発明者 Paul M. Lyrene 教授はフロリダ大学ブルーベリー育種プログラムの中心的人物で、Star、Emerald、Jewel、Windsor、Springhigh、Sharpblue(共同)、Sebring など多数の SHB 主要品種を育成。
- 品種名 "Sebring" は、フロリダ州中部の都市 Sebring に由来。極低温要求量品種の試験圃場として中部フロリダの Sebring 市が用いられたことを反映している(中部フロリダで安定して開花・結実する品種としての位置付け)。
- 特許明細書では「中部フロリダで冬季の低温不足に悩まされず栽培でき、極早生収穫が可能」という商業価値が強調されている。
- Sharpblue × O'Neal という交配組合せは、UF SHB 育種で多用された組合せの一つで、Star(FL80-31 × O'Neal)など類似系譜の品種が複数存在する。
- 1月平均気温が華氏63度(約17°C)に達する温暖地での適応を目的とする極低温要求量品種である点が、他のフロリダ SHB 品種(多くは300〜500時間要求)との大きな差別化点。
参考情報源
- USPP13,683 P2 "Blueberry plant called 'Sebring'"(米国植物特許全文・Google Patents)
- UF/IFAS Blueberry Breeding Program 公式サイト – Sebring
- UF/IFAS Blueberry Breeding Program – Varieties 一覧
- University of Florida IFAS EDIS, HS1245 "Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida"(Sebring の記載なし、現行非推奨を示唆)
- HS967 "Blueberry Varieties for Florida"(J.G. Williamson and P.M. Lyrene、UF/IFAS)
- Florida Foundation Seed Producers, Inc.(FFSP、ライセンス管理)
- 一般社団法人 日本ブルーベリー協会「ハイブッシュブルーベリーについて」