シャープブルー Sharpblue
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
1950年代、フロリダ大学(UF/IFAS)の Ralph H. Sharpe 博士の指揮のもと、フロリダの温暖な気候に適応するブルーベリー品種開発が開始された。北部ハイブッシュ(主に Vaccinium corymbosum L.)の品種・選抜系統と、フロリダ北部・中部に自生する低温要求量の少ない野生種(V. darrowi Camp、V. ashei Reade)を交配して育成された種間雑種である。'Sharpblue' は Ralph H. Sharpe と Wayne B. Sherman により1976年に 'Flordablue' とともに正式リリースされ、世界で最初に商業生産向けに公表された低温要求量の少ない(low-chill)ハイブッシュ系品種の一つとなった。後続のサザンハイブッシュ品種育成において広く親本として利用され、フロリダおよび世界の SHB 産業の礎となった基幹品種である。具体的な交配親(雌雄)の組合せは公的資料に詳細記載がなく不明な部分がある。
樹体特性
- 樹勢: 強〜非常に強い。苗木期から旺盛に生育する。
- 樹形: 直立性でやや開張する半直立型(upright-spreading)。
- 樹高: 成木で約1.5〜1.8 m(5〜6フィート)程度、株張りも同程度。
- 常緑性: 温暖地では常緑性が強く、冬季も葉を落としにくい。
- 新梢発生: 旺盛で、栄養成長が優先されやすいため肥培管理に注意が必要。
- 観賞性: 樹姿が整うため観賞樹としても利用可能(USDA Zone 5〜10程度の幅で観賞利用可と記載される情報源あり)。
結実特性
- 開花期: 米国フロリダで3〜4月、日本(暖地)では3月開花の例も報告される(早期開花のため受粉昆虫不足のリスクあり)。
- 収穫期: 米国ガーンズビルで4月下旬(早生)、米国北部・中緯度で5〜6月。日本では6月中旬〜7月上旬(地域差あり)。
- 低温要求量: 約150〜200時間(7.2℃以下)と非常に少ない。最も低温要求量の小さいSHB品種の一つ。
- 収量: 成木で約7〜9 kg/株(15〜20 lb/株、灌水・施肥が適切な場合は8〜16 lb の範囲)。
- 結実性: 早期から結実が始まり、植え付け後1〜2年で初収穫が可能。
- 特徴: 四季成り傾向があり秋にも一部結実する例が報告される。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜大粒(直径約15〜18 mm、標準カップあたり75〜80粒)。
- 果皮色: 濃青色〜ブルーブルーム(dime-sized で dark blue)。
- 果肉: 比較的柔らかくジューシー。
- 食味: 甘味は強く、酸味は中程度、芳香良好。糖度は完熟時 平均10.8〜15度との情報あり。
- 果柄痕(picking scar): 小さく良好。
- 裂果: やや多いとの日本国内情報源の指摘あり。
- 日持ち: 果肉が柔らかいため日持ちは劣り、商業長距離輸送には不向き。観光農園・直売向き。
- 収穫管理: 完熟果は柔らかいため毎日収穫が推奨される。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA Zone 7〜10 を中心に栽培可能。情報源によっては Zone 6b〜10a、観賞利用ではZone 5まで耐えるとの記載もあり。最低気温 −23℃(−10°F)程度まで耐えるとされるが、SHB系全般として晩霜による花芽被害には注意が必要。
- 耐暑性: 高い。フロリダの亜熱帯〜熱帯境界域で育成された経緯から、温暖・高温条件に強い。
- Botryosphaeria 茎枯病(Botryosphaeria stem blight): 病斑長が短い比較的抵抗性のある品種群(Pearl River、Emerald、Star、Sharpblue 等)に分類された報告あり。
- その他病害(Phomopsis、ミイラ病、根腐れ等)に対する具体的評価は公表資料中で不明な部分が多い。
- 耐乾燥性: 強いと国内情報源で評価されているが、SHB系として過湿には弱いため排水良好な用土が必須。
推奨栽培地
- 米国フロリダ州・湾岸南部・カリフォルニア南部などの低温要求量が低い地域。
- 亜熱帯〜熱帯高地(ブラジル、メキシコ、東南アジア、オーストラリア東岸等)でも導入実績あり。
- 日本では関東以西の温暖地・暖地に向く。寒冷地では落葉・休眠が浅く花芽が早すぎて晩霜害のリスクが高まるため不向き。
- USDA Zone 7〜10。低温要求量が極めて少ないため、ノースハイブッシュが冬越しできない温暖地での代替品種として位置づけられる。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的に自家結実性あり(self-fertile / partially self-fertile)。1本でも結実するが、収量・果実サイズ・成熟促進の観点から他品種との混植が強く推奨される。
- 交配研究: ミツバチ媒介の他家受粉により、プレミアムサイズ果実(0.75g以上)の比率が13%増加、小粒果実比率が66%減少、ヘクタールあたり約5,000ドル相当の収益増との研究報告あり(HortScience 等)。
- 受粉樹推奨: 同じサザンハイブッシュ系の 'Misty'、'O'Neal(オニール)'、'Emerald'、'Jewel'、'Star' 等。開花期が重なる SHB 品種を選定する。
- Pollinating Group: 一部小売店では Group A に分類。
商業利用状況
- 1976年リリース当初は 'Flordablue' とともに世界初の商業向け低温要求性ハイブッシュ品種として注目され、1980年代前半からフロリダ州での商業出荷産業の立ち上げに貢献。早期成熟による高単価出荷で初期 Florida blueberry industry を牽引した。
- 長らく「フロリダ州で最も多く植栽されたサザンハイブッシュ品種(the number one southern highbush planted in Florida)」と評された時期がある。
- 後続SHB品種('Misty'、'Star'、'Emerald'、'Jewel'、'Windsor' 等)の親本として広範に使用され、世界のSHB系統に大きな遺伝的貢献をしている。
- 現在は果実が柔らかく日持ちしないため、商業長距離出荷は新世代品種('Emerald'、'Jewel'、'Farthing' 等)に置き換わりつつあるが、家庭園芸・U-pick・観光農園向け品種として依然として広く植栽されている。
日本での状況
- 国内では複数のオンライン苗木業者・園芸店で「シャープブルー」として一般流通している(花ひろばオンライン/苗木部、赤塚植物園オンライン 花の音、国華園、ハナノヤマト等)。
- 流通形態: 4.5〜5号ポット2年生苗、挿木2年生苗、接木1年生苗など。
- 評価: 樹勢が強く育てやすい初心者向け品種として人気が高く、「シャープブルーとオニールがあれば他は要らない」と評するブログ・小売店もあり。
- 観光農園での導入例(愛知県岡崎市「ブルーベリーファームおかざき」など)。果実が柔らかいため摘み取り園・直売向きと位置づけられる。
- 関東以西の暖地・低標高地で常緑〜半常緑として越冬可能。寒冷地(北海道・東北・標高高地)では適応性が劣る。
育成者注釈・特記事項
- 'Sharpblue' は育成者 Ralph H. Sharpe 博士の名にちなんで命名されたとされ、博士の「最も成功したリリース品種」と評価されている。
- 世界初の商業向け低温要求性ハイブッシュ品種群('Sharpblue'、'Flordablue'、後の 'Avonblue')の中で最も普及した品種。
- フロリダ州ブルーベリー産業を立ち上げた歴史的品種。
- 開花が極めて早いため、早春の遅霜リスクと受粉昆虫の活動時期とのギャップが課題となる。
- 過湿に弱く、樹勢が強すぎて栄養成長過多になりやすいため、施肥は控えめに、水管理は排水重視で行うのが日本の栽培者の経験則。
- 1976年リリースのため、米国植物特許(PP)の対象外と考えられ、現在は無償で増殖・販売可能(公知品種)。
参考情報源
- HS1245 / Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida(UF/IFAS EDIS)
- The 'Sharpblue' Southern Highbush Blueberry – Journal of the American Pomological Society Vol.46 No.4
- UF/IFAS Plant Breeding – Blueberry Program
- CIR1192 / MG359 Blueberry Gardener's Guide(UF/IFAS)
- Hartmann's Plant Company – Sharpblue Blueberry
- One Green World – Sharpblue Southern Highbush Blueberry
- Backyard Berry Plants – Sharpblue Southern Highbush Organic
- Brighter Blooms – Sharpblue Blueberry Bush
- Edible Landscaping – Sharpblue Blueberry
- Honey-bee-mediated Cross- versus Self-pollination of 'Sharpblue' Blueberry(ResearchGate)
- Botryosphaeria Stem Blight on Southern Highbush Blueberry in Florida(UF/IFAS PP347)
- A Review of Botryosphaeria Stem Blight Disease of Blueberry(MDPI Agriculture 2023)
- 花ひろばオンライン/苗木部 – シャープブルー
- ブルーベリーファームおかざき – シャープブルー
- 赤塚植物園オンライン 花の音 – シャープブルー(接木苗)