スプリングハイ Springhigh
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 育成者: Paul M. Lyrene 博士(フロリダ大学ブルーベリー育種プログラム)
- 権利保有: Florida Foundation Seed Producers, Inc.(FFSP)
- 交配: FL91-226(非特許の選抜系統)× 'Southmoon'(USPP9,834)
- 注: ユーザー指示の「Star × FL95-90」は誤りで、特許明細・育成者公式資料ともに上記交配で一致
- 交配時期: 1993年3月、フロリダ大学の温室にて実施
- 実生圃場移植: 1994年5月、フィールド・ナーサリーへ定植
- 評価: 1995年・1996年春に評価、1996年6月に緑枝挿しで増殖
- リリース: 2004年にフロリダ大学から品種としてリリース、2006年に米国植物特許(USPP16,404)登録
樹体特性
- 樹勢: 強い(vigorous、Highレベル)。圃場での生存性に優れる
- 樹形: 直立性(upright)。母系FL91-226よりも直立性が強い
- 樹高: 約2.2 m(成木)
- 樹冠幅: 最大約1.5 m
- シュート発生: 地際から複数の主軸シュートが発生
- 葉色: 濃緑色
- 増殖性: 緑枝挿し(softwood cutting)から容易に増殖可能
結実特性
- 低温要求量: 200〜300時間(7°C以下)。低低温要求型で温暖地向き
- ユーザー指示の「200-250h」は概ね一致(公式特許明細では200-300h)
- 開花期: 北フロリダ(Windsor, FL)で2〜3月に開花
- 収穫期: 極早生。北フロリダで4月15日〜5月10日が主収穫期。50%着色は4月18〜25日。ゲインズビルで約4月16日に収穫開始(Star品種より約9日早い)
- 自家結実性: 良好。受粉条件が悪くても着果良好(特許明細記載)
- 収量: 北フロリダの4年生以上の樹で約5ポンド(約2.3 kg)/株。米国フロリダ州中北部の試験(2018-2019)では5.3〜10.5 lbs/株(平均7.9 lbs/株)の報告例あり
- 特徴: 早春市場向けの極早生品種として、Emerald・Jewel等中生品種への前倒し補完として位置付けられる
果実特性
- 果実サイズ: 大粒。平均約3.0 g(資料により2.3〜2.9 g、平均2.5 g)
- 果実寸法: 高さ約14.3 mm × 幅約17.6 mm(17.0〜17.6 mm)
- 果皮色: 中程度に濃い青色(medium dark)。ブルーム(蝋質)はやや少なく、見た目はやや暗めに見える
- 食味: 甘く酸味少なめ(sweet, low acid)。フレーバースコア27.5(参考: Emerald 19.9、Kestrel 29.2)
- Brix: 平均10.2(8.9〜11.8)
- 果実硬度: 中程度(medium firmness)。特許明細では"high firmness"と記載されるが、フロリダ大学EDIS資料では「他の主要商業品種より柔らかめ」と注意喚起
- 果梗痕(scar): 小さく乾燥(small, dry picking scar)
- 日持ち(shelf life): やや劣る。フロリダの暑熱下では果実が軟化しやすく、頻繁な収穫(picking at frequent intervals)が必須
- 用途: 生食・加工両用市場向け
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 低低温要求性のため寒冷地不向き。USDAゾーン8〜10向け
- 耐暑性: フロリダ気候に適応するが、高温下で果実軟化(soft berry)しやすいのが弱点
- 病害耐性:
- フィトフトラ根腐病(Phytophthora root rot): 高い抵抗性(母系Southmoonより顕著に改善)
- 茎枯病(stem blight): 高い抵抗性
- キャンカー(cane canker): 高い抵抗性
- 葉斑病(fungal leaf spots): 平均より良好(above average)
- 害虫: チリスリップス(chilli thrips)にやや感受性
- 栽培上の注意: 高温時の軟化を避けるため、頻繁な収穫と適切な収穫後ハンドリングが必須。フロリダ州ではパックアウト率(出荷可能率)が年により低下するとEDIS資料で警告
推奨栽培地
- 米国: フロリダ州北部・中部(特に中央フロリダで早生補完品種として人気)、低低温要求帯
- メキシコ: ライセンス供与地域、商業栽培
- 南米: アルゼンチン、ブラジル、チリ、ペルー、ウルグアイ
- 欧州: EU諸国(スペイン等)
- アフリカ: 南アフリカ
- オセアニア: ニュージーランド
- 共通条件: 冬季が温暖で晩冬〜早春が穏やかな地域。高温多湿期前に収穫を完了できる気候帯
- 不向き: 寒冷地、低温要求量の多いノーザンハイブッシュ栽培帯
受粉相性
- 自家結実性: 比較的良好(受粉条件不良下でも結実する)
- 推奨受粉樹: 開花期が重なる極早生サザンハイブッシュ品種
- Snowchaser(開花期重複)
- Kestrel(開花期重複)
- その他の同時期開花の低低温要求SHB品種
- 商業栽培: 単独でも結実するが、収量・果実品質向上のため混植が一般的
商業利用状況
- 権利管理: Florida Foundation Seed Producers, Inc.(FFSP)が世界各地にライセンス供与
- 主要ライセンシー地域:
- アルゼンチン、ブラジル、チリ、EU、日本、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、南アフリカ、ウルグアイ等
- 主要販売者: Fall Creek Farm & Nursery、Dole Berry Company 等
- 米国フロリダ州での位置付け: フロリダ大学EDIS(HS1245)では「Secondary cultivar(副次的推奨品種)」に分類。新植は推奨度が下がっており、市場性を慎重に評価して導入すべきとされる
- 市場ポジション: 大粒・極早生・甘味で早期市場価値は高いが、果実軟化と日持ちの弱さが商業展開上の制約となっている
- 後継品種: フロリダ大学はSpringhigh以降にPrimadonna、Meadowlark、Sentinel等のより優れた極早生品種を導入し、Springhighの新植は減少傾向
日本での状況
- ライセンス: ffsp.net(Florida Foundation Seed Producers)の公開資料によれば、日本もライセンス対象国に含まれている
- 国内流通: 一般家庭園芸向けの大規模流通は限定的。日本国内のサザンハイブッシュ商業圃場での導入実績は確認できず(不明)
- 入手性: 国内のブルーベリー専門ナーセリーや個別輸入での入手可能性はあるが、量販店での流通は限定的(不明)
- 栽培適地: 日本国内では関東以西の温暖地(千葉県南部、静岡県、九州等)が候補。ただし高温多湿による軟化リスクのため、収穫適期の見極めが重要
- 注意点: 国内既流通の極早生SHB(Emerald、Jewel、Snowchaser、Star等)と比較した優位性はやや限定的
育成者注釈・特記事項
- 母系FL91-226との比較: より直立性、より大粒、より高い果実硬度
- 父系Southmoonとの比較: 約3週間早い熟期、フィトフトラ根腐病への顕著に高い抵抗性、より大粒、やや暗い果皮色
- Star品種との比較: 約9日早く熟す
- 特許明細上の特徴: 受粉条件が悪くても着果が良好(poor pollination条件下でも安定結実)
- EDIS資料の警告: フロリダ州での「pack-out(出荷率)」が年によって低下することがあり、柔らかい果実の発生率が平均より高い
- 取扱推奨: 早期市場性を狙う場合のみ、収穫頻度を上げて運用すること
- 歴史的意義: UFの低低温要求SHB系統群(Emerald、Jewel、Star、Windsor、Springhigh等)の一つとして、2000年代前半のフロリダ商業ブルーベリー産業拡大に貢献した品種
参考情報源
- USPP16,404 P3 特許明細(Google Patents)
- フロリダ大学IFAS Extension EDIS HS1245「Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida」
- Florida Foundation Seed Producers(FFSP)品種紹介ページ
- AgriStarts プロパゲーター情報
- blueberrybreeding.com 品種データベース
- USDA Plants Database(種属基礎情報)
- 日本ブルーベリー協会・ハイブッシュ概論(参考: 日本国内SHB一般情報)