オーロラ Aurora
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 交配組合せ: Brigitta(♀, Brigetta Blue)× Elliott(♂)。1991年にBrigittaの花を除雄し、Elliottの花粉で受粉。1997年にBenton Harbor圃場で54兄弟系統から選抜。系統名「MSU 50」として評価された後、2004年にDraper・Libertyとともに商業リリースされた。
- 育成者: James F. Hancock(MSU AgBioResearch 果樹育種研究者)。Hancockは2014年にMSU Innovation Center Technology Transfer Achievement Awardを受賞しており、彼の最初の4品種(Aurora, Draper, Liberty, Huron など)は世界のハイブッシュ栽培面積の約10%を占めると報じられている。
- 育成目的: 既存晩生品種(Elliott)よりさらに遅く成熟し、収穫期末の生果市場を延長する高品質品種の開発。
- 米国特許出願日 2003-01-23、登録日 2004-09-28、満了予定 2023-01-23。
樹体特性
- 樹勢: 中〜強、活力がある(vigorous)。各種文献で「moderately vigorous, upright」「stocky, spreading(特に若木)」と表現される。
- 樹形: 直立性〜やや開帳性。成木で樹高約1.5 m、樹幅約1.3 m(高さ/幅比 約1.1)。
- 枝管理: 年間更新枝(renewal canes)5〜6本/株。枝は多数で中程度の分枝。
- 葉: 楕円〜卵形(elliptic-ovate)、全縁(entire margin)。長さ2.5〜3.5 cm、幅1.1〜1.5 cm。表裏とも緑色。Liberty(鋸歯あり)と区別される識別形質。
- 花: 細長い壺形(urceolate)、概ね白色、1花序あたり8〜10花。
結実特性
- 開花期: 晩〜極晩生(Northern Highbush系で開花も遅い部類)。受粉品種も晩生(Elliott、Liberty 等)が必要。
- 収穫期: 極晩生(Very late)。Elliottより約5日遅れて収穫開始。Brigittaより10〜14日遅い。Libertyより10〜14日遅く、Draperより6〜8週遅い。ミシガン州では8月中下旬〜9月上旬。北欧では「ハイブッシュ系で最遅熟」と評される。日本ではラビットアイ収穫期と重なる時期に収穫可能で、ノーザン系極晩生として価値が高い。
- 低温要求量(chill hours): 約800〜1,000時間(7.2℃以下換算)。
- 収量: 多収。Elliottに匹敵またはそれ以上の生産性。
- 自家結実性: 自家結実するが、他家受粉により果実サイズ・着果量・品質が顕著に向上。極晩生のため受粉相性は晩生品種(Elliott、Liberty 等)が必須。
果実特性
- 果実サイズ: 中〜大、平均約1.5 g(直径1.4〜1.8 cm、長さ1.1〜1.3 cm)。Elliottより約25%大きい。
- 形状: 球形(globose)で揃いが良い。
- 色: 明るい粉青色(excellent powder-blue / violet-blue with bloom)。果粉が豊富。
- 食味: 育成者・特許資料では「delicious(美味)」「フレーバー評点8/9(Elliottは5)」と高評価。一方、独立評価(生産者調査・欧州評価)では「酸味が強く香気が弱い」「平凡」との評もあり、評価が分かれる。完熟まで樹上で約2週間置くことが推奨される。色付き直後に収穫すると酸味が強く感じられるため。完熟果はノーザンハイブッシュらしい甘酸バランスの良い味になる。
- 硬度: 非常に硬い(excellent firmness、評点8)。Elliottより裂果・しおれに強い。
- 果梗離れ(picking scar): 小さく乾燥しており、生果向きとして優秀(評点8)。
- シェルフライフ(日持ち): 2℃で14日間貯蔵可(Elliottは7日間)と特許資料で報告。樹上保持力(hang time)も優れ、Elliottよりしぼまずに長く樹上で保持できる。
- 腐敗抵抗性: 3週間冷蔵後の腐敗率10〜16%と、Elliottと同等。
- 用途: 生果市場(主用途)、デザート、ジャム、ヨーグルト、ゼリー、冷凍など加工全般。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 非常に優れる(excellent winter hardiness)。−20℃以下の冬季気温にも晩冬の試験で耐えた実績。秋〜春の温度変動にも強い。
- 炭疽病(anthracnose)耐性: 良好(イタリアの品種評価で「ottima resistenza」)。
- モニリア病(moniliosis)耐性: 良好。
- その他(ミイラ病・幹枯病等)に関する具体的データは不明。
推奨栽培地
- 「ノーザンハイブッシュが成功裏に栽培されている地域全般」が公式推奨。
- 具体例として、米国(ミシガン、太平洋岸北西部 [PNW])、カナダ、欧州(ドイツ、フランス、北欧諸国)、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、韓国などが特許書類および後発文献で挙げられる。
- 日本では北海道〜本州冷涼地(高冷地・東北・北関東標高地等)が適地と推察される(暖地適応性は不明、低温要求量が比較的高いため暖地は不向き)。
受粉相性
- 自家結実性: あり(部分自家和合)。ただし単植では収量・果実サイズが劣るため、他家受粉が強く推奨される。
- 推奨受粉樹: 開花期が一致する晩生〜極晩生のノーザンハイブッシュ品種。具体的にはElliott、Liberty、Brigitta、Nelson 等。
- 早生品種は開花がずれるため受粉相手として不向き。
商業利用状況
- 2004年商業リリース後、世界の生果ノーザンハイブッシュ生産において主要品種の一つに成長。
- ミシガン州、太平洋岸北西部、ヨーロッパ、南米(チリ・アルゼンチン)、韓国などで商業栽培。MSUは韓国にライセンス供与済み。
- Hancockの育成品種群(Aurora, Draper, Liberty 等)はMSUに2003年以降で約600万ドルのロイヤリティをもたらし(2014年時点)、世界のハイブッシュ栽培面積の約10%を占めると報告。
- 用途は主に生食用フレッシュ市場(収穫期末のシーズン延長役として高値が付くことが多い)。生産者評価ではElliottとAuroraは食味では下位だが、晩生市場での価格優位性で多く植栽されてきた。
- 近年は南米産の高品質生果輸入により晩生市場の価格優位性が減退し、ミシガン州での新植は鈍化傾向と一部報告あり。
日本での状況
- 日本国内では一部のブルーベリー専門苗木業者・ナーセリーで取扱いが確認されるが、Duke、Bluecrop、Brigittaなどの主要品種に比べて流通量は限定的。
- 大関ナーセリー(Ozeki Nursery)等の専門業者でMSU育成品種3品種(Aurora、Draper、Liberty)として紹介例あり。「全ハイブッシュ中で最遅熟、貯蔵性優秀」として家庭栽培・直売・観光摘み取り園向けに推奨されている。
- 一部生産者ブログ(恵農園 等)では2014年頃から栽培開始の記録があるが、詳細な国内栽培データ(収量、暖地適応性等)の公開は限定的。
- 米国特許PP15,185は日本では権利化情報を確認できず(不明)。米国特許自体は2023年1月に満了済み。
- 日本ブルーベリー協会(JBA)の主要紹介品種一覧には現時点で明示的記載は確認できない(不明)。
育成者注釈・特記事項
- 完熟収穫の重要性: 色付き後すぐに収穫すると強酸味で食味が悪い。色付きから約2週間樹上保持が推奨される(日本側生産者・栽培情報が指摘)。商業収穫では摘み取りタイミングの管理が重要。
- シーズン延長品種としての価値: ノーザンハイブッシュ系で最も遅く、ラビットアイ系の収穫期と重なるため、ノーザン系産地の収穫期末を延長する戦略品種。
- 食味評価の二面性: 育成元(MSU、Hancock)は「delicious」と評価、欧州独立評価では「mediocre, acidulous」とされるなど評価が分かれる。完熟度・気候条件の影響が大きい。
- DraperおよびLiberty姉妹品種: 同年(2004年)リリースのHancock育成3兄弟。Draperは中生・高品質、Libertyは中晩生・大粒、Auroraは極晩生という棲み分け。
- 繁殖法: 硬枝挿し(発根まで2〜3ヶ月)、緑枝挿し、組織培養いずれも成功実績あり。
- 形態識別: 葉縁が全縁である点(Libertyは鋸歯)、葉形が楕円卵形である点(Draperは細長楕円)が形態鑑別ポイント。
参考情報源
- Google Patents: USPP15,185 P3 — Blueberry plant denominated 'Aurora'
- Google Patents: US20040148671P1 — Aurora(出願公開)
- MSU AgBioResearch ニュース「Continuing to bear fruit」
- MSU AgBioResearch ニュース「Blueberry bonus」
- MSU Extension「Blueberry Varieties for Michigan」
- Crain's Detroit Business「The berries are blue」
- MSUToday「Building a better blueberry」
- AAU「Building a Better Blueberry」
- OSU Extension PNW-656
- Penn State Extension
- PickYourOwn「Blueberry Varieties」
- Italian Berry「Blueberry Aurora: variety fact sheet」
- Fedco Seeds「Aurora Highbush Blueberry」
- 大関ナーセリー(Ozeki Nursery)新品種ご案内
- 恵農園 ノーザンハイブッシュ品種一覧
- 一般社団法人 日本ブルーベリー協会