エイボンブルー Avonblue
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
1950年代、フロリダ大学(UF/IFAS)の Ralph H. Sharpe 博士の指揮のもと、フロリダの温暖な気候に適応するブルーベリー品種開発が開始された。北部ハイブッシュ(主に Vaccinium corymbosum L.)の品種・選抜系統と、フロリダ北部・中部に自生する低温要求量の少ない野生種(V. darrowi Camp、V. ashei Reade)を交配して育成された種間雑種である。'Avonblue' は1976年リリースの 'Sharpblue'・'Flordablue' に続き、その翌年(1977年)に Sharpe・Sherman により公表された世界最初期の低温要求性(low-chill)ハイブッシュ系品種の一つである。日本国内の品種データベースでは親系譜として「FLA 1-3 × [Berkeley × (Pioneer × Wareham)]」、別表記で「[E66 Berkeley × F72 (Wareham × Pioneer)] × [FLA 1-3]」(FLA 1-3 は USMI highbush [Earliblue × V. ashei × V. darrowi])とされる記述があるが、原典との照合は不十分で詳細は不明な点が残る。'Sharpblue'・'Flordablue' とほぼ同じ親系列(similar parentage)から得られた姉妹品種(contemporaneous variety)であり、フロリダ州の地名 Avon Park(ブルーベリー祭で有名なフロリダ中部の町)に由来する命名と推定される(公的資料未確認のため不明)。
樹体特性
- 樹勢: 弱〜中程度。SHB系の中ではあまり旺盛でなく、moderately productive と評される(Sharpblue 等と比較して劣る)。日本国内情報源では「樹勢やや弱く枝枯れがやや出やすい」「幼木期は樹勢弱く、根も弱いため支柱固定が必要」との記述あり。
- 樹形: 半直立性(semi-upright)でやや開張、narrow crown(狭い樹冠)。
- 樹高: 成木で約4フィート(約1.2 m)と SHB系としてはやや低め。
- 常緑性: 温暖地では半常緑〜常緑傾向。
- 新梢発生: 中庸。生育は moderate で管理しやすく、SHBの中では維持容易と評される情報源もある。
結実特性
- 開花期: 米国フロリダ北部で2〜3月(極早生)、日本(暖地)では4月中旬頃の観察報告あり。
- 収穫期: 米国フロリダ北部で5月15日前後(early midseason)、米国南部ジョージア州で5月上旬〜中旬。日本の暖地では6月中旬から開始される観察報告あり。Rabbiteye 系最早生品種より約2週間早く収穫が始まる。
- 低温要求量: 情報源により幅がある(150〜200時間との記載あり/400時間との記載あり/日本国内品種データベースでは300〜400時間)。本問い合わせでの提示値(150-200h)に厳密に一致する一次資料は未確認。
- 収量: 約8〜10ポンド/株(約3.6〜4.5 kg/株)と SHB系としては中庸。
- 結実性: 早期成熟・高生産性と評される情報源あり。一方で「moderately productive(中程度)」との記載もあり、評価は分かれる。
- 特徴: 開花から収穫までの期間が短く(約2〜3週間との観察記録あり)、極早生出荷向き。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜大粒(直径約14〜16 mm、最大約18 mm、1カップあたり約65粒)。
- 果皮色: 明るい青色(light blue)、ブルームが濃く美麗。
- 果肉: 硬い(firm)。Sharpblue より日持ち良好。
- 食味: 風味良好(good flavor / outstanding flavor)と評価される一方、日本の評価(自然の休憩所)では「香りは良いが酸味が強い」とされ風味評価は C と低めの記録もある。糖度(Brix)11.4 の観察記録あり。
- 果柄痕(picking scar): dry stem scar(乾いた果柄痕)で良好、商業出荷適性あり。
- 裂果: 公表資料中での明示的記載は見当たらず不明。
- 日持ち: 硬果のため Sharpblue より長距離輸送適性に優れる。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA Zone 7〜10 を中心に栽培可能と推定される(SHB系標準)。低温要求量が比較的少ないため寒冷地は不適。
- 耐暑性: 高い。フロリダ州中部での育成のため温暖・高温条件に強い。
- 耐病性: Avonblue 単独に関する詳細な耐病性評価データは公表資料中で限定的で不明な点が多い。フロリダ・ジョージアで初期に普及したものの、後発SHB品種に置き換わった経緯から、現代基準での耐病性は新世代品種に劣ると推定される。
- 耐湿性: 日本国内品種データベースでは「やや過湿土壌でも生存性良好」との記載あり。
- 枝枯れ: 国内情報源で枝枯れがやや出やすいとの指摘あり。
推奨栽培地
- 米国フロリダ州・ジョージア州南部・湾岸南部などの低温要求量が低い地域で初期に普及した。
- USDA Zone 7〜10 圏。
- 日本では関東以西の温暖地・暖地に向く。寒冷地(北海道・東北・標高高地)は不適。
- 「現在ジョージア州では推奨されていない(no longer recommended in Georgia)」との情報があり、商業生産地では新世代SHB品種に置き換わっている。
受粉相性
- 自家結実性: 自家結実性ありとされ、1本でも結実する("the bush doesn't need another blueberry bush to cross-pollinate with")。ただし収量・果実サイズ向上のため他品種との混植が推奨される。
- 交配研究: Avonblue は花粉源が果実セットおよび果実サイズに与える影響を調べる研究の供試品種として用いられた記録がある(low-chilling highbush型ブルーベリーの花粉源効果研究)。
- 受粉樹推奨: 同じサザンハイブッシュ系で開花期が重なる 'Sharpblue'、'Flordablue'、'Misty'、'O'Neal' 等。具体的な公式推奨組合せは不明。
商業利用状況
- 1977年リリース当初は 'Sharpblue'・'Flordablue' とともにフロリダ州低温要求性ハイブッシュ品種群の主力としてフロリダ州ブルーベリー産業の立ち上げ(1983年頃)に貢献。
- 早生で果実が硬く出荷適性があったため、初期のフロリダ商業出荷でプレミアム価格を牽引した一品種。
- 現在は商業生産では新世代SHB品種('Emerald'、'Jewel'、'Star'、'Farthing' 等)に置き換わり、商業利用はほぼ見られない。家庭園芸・歴史的品種としての位置づけが主。
- 米国 Hartmann's Plant Company などの専門苗木業者で取り扱いが残っている(卸売)。
Sunshine Blue の親としての貢献
- 'Sunshine Blue' は、Dr. Arthur Elliott(フロリダ州 Earleton)により育成され1979年にリリースされた半矮性SHB品種で、低温要求量約150時間のコンパクトな自家結実性品種として家庭園芸界で世界的に普及している。
- 一般的な記述では 'Sunshine Blue' は「'Avonblue' と 'Sharpblue' の交配品種」とされる小売向け解説が多いが、別の情報源では「'Avonblue' の自然交配(open-pollinated)実生で、花粉親が 'Avonblue' または 'Sharpblue' のどちらか」と記載される。Sunshine Blue の正式な親系譜記録は限定的で詳細は不明な点があるが、いずれにせよ Avonblue が Sunshine Blue の主要な親(種子親)である点で一致しており、Sunshine Blue の半矮性樹形・自家結実性・低低温要求性・常緑性などの特性に Avonblue の遺伝的寄与があると考えられる。
- Sunshine Blue は世界の家庭園芸ブルーベリー市場で最も普及した SHB系コンテナ向け品種の一つであり、その親としての貢献は Avonblue の歴史的意義の中核を成す。
日本での状況
- 国内では「エイボンブルー」として一部の専門オンライン苗木業者で流通している。
- 楽天市場「井戸園芸オンラインショップ(ブルーベリーカントリー)」で「エイボンブルー ブルーベリー 挿し木 苗木 2年生 サザンハイブッシュ系品種」として販売実績あり。
- 国内品種紹介ブログ・データベース(『品種別の特徴と観察 サザンハイブッシュ系』『ブルーベリーの全品種の特徴一覧表』『自然の休憩所 Berry's Life』など)で取り上げられている。
- 評価: 樹勢やや弱、果実は中粒〜大粒で硬く、糖度約 Brix 11、香り良好だが酸味やや強めとの評価もあり、商業向きより愛好家・コレクター向け品種の位置づけ。
- 流通量は Sharpblue・Sunshine Blue と比較して非常に少なく、入手難易度はやや高い。
育成者注釈・特記事項
- 'Avonblue' は世界最初期SHB品種3品種('Sharpblue', 'Flordablue', 'Avonblue')の一つで、フロリダ州ブルーベリー産業の立ち上げ期に位置する歴史的品種。
- 公表は HortScience 12: 510 (1977) における Sherman & Sharpe による cultivar release note とされる。
- 名前の由来はフロリダ州中部の町「Avon Park」(ブルーベリー祭で知られる)に由来すると推定されるが、公的資料未確認のため不明。
- 商業生産では後発SHB品種に置き換わったが、'Sunshine Blue' の親として遺伝的に世界に広く流通している。
- 1977年リリースのため米国植物特許(PP)の対象外と考えられ、現在は無償で増殖・販売可能(公知品種)。
- 樹勢が弱めで枝枯れが出やすいため、栽培者には剪定・支柱・適切な施肥管理が推奨される。
参考情報源
- HS1245 / Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida(UF/IFAS EDIS)
- HS1245(移行先)
- UF/IFAS Plant Breeding – Blueberry Program
- Avonblue Blueberries – CooksInfo
- Hartmann's Plant Company – Avonblue(卸売)
- 'Avonblue' Blueberry1(ResearchGate登録ページ。本文PDFは取得せず)
- Blueberry Cultivars for Georgia(Southern Region Small Fruit Consortium)
- The 'Sharpblue' Southern Highbush Blueberry – Journal of the American Pomological Society Vol.46 No.4
- Southern Highbush Blueberries Make Florida First to Market – Central Florida Ag News
- Inside the University of Florida Blueberry Breeding Program – Specialty Crop Grower
- Sunshine Blue Blueberry – Minneopa Orchards
- Sunshine Blue Blueberry – Bates Nursery
- Sunshine Blue – My Edible Landscape (Wikidot)
- 楽天市場「井戸園芸オンラインショップ」エイボンブルー苗
- ブルーベリーカントリー 井戸園芸
- 品種別の特徴と観察 サザンハイブッシュ系(個人サイト)
- ブルーベリーの全品種の特徴一覧表
- 自然の休憩所 Berry's Life – サザンハイブッシュ系