ブルーゴールド Bluegold
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 米国 USDA-ARS のブルーベリー育種プログラムによる育成品種で、1989年に発表された。
- 親系譜は 'Bluehaven' × ('Ashworth' × 'Bluecrop') とされる。'Bluehaven' はミシガン州立大学育成のハーフハイ的性格を持つ品種(V. corymbosum × V. angustifolium 系を含む)、'Ashworth' は耐寒性の強い野生選抜系統、'Bluecrop' は USDA-ARS の代表的中生品種。これらの組み合わせにより、耐寒性・コンパクト樹形・多収・中生熟期を狙った系譜となっている。
- 育成評価には Arlen D. Draper、Mark K. Ehlenfeldt、Gene J. Galletta(USDA-ARS、退官)、Allan W. Stretch(USDA-ARS、退官)、Nicholi Vorsa(Rutgers)らが関与したとされる(USDA-ARS の北東部ブルーベリー育種プログラムにおける慣行的な共同体制)。
- USDA-ARS の Chatsworth(NJ)育種ステーションは、本品種以前から 'Bluecrop'、'Bluetta'、'Patriot'、'Duke' 等のノーザンハイブッシュ主要品種を生み出してきた拠点であり、Bluegold もその系譜上に位置付けられる。
樹体特性
- 樹勢: 中庸(vigorous との記載もあり)。コンパクトで強健。
- 樹形: 直立性〜やや開張性(Upright / Spreading)、コンパクトで丸みのある茂みに育つ。
- 樹高: 米国資料では 4〜6 ft(約 1.2〜1.8 m)が標準。Backyard Berry Plants は成木で約 4 ft(1.2 m)と記載。日本国内苗木業者の表記では地植えで 1〜2 m、鉢植えでは約 1.5 m、樹幅は 0.6〜1.5 m 程度。
- 季節性: 春は白色の花、秋葉は明るい黄色〜黄金色(cultivar 名「Bluegold(青と金)」の由来とも結び付けられる)、冬枝は黄色味を帯び、四季を通じて観賞価値がある。
- 管理上の特徴: コンパクトな樹形のため家庭菜園や小規模園地、低生垣としても利用しやすい。一方で根が浅い性質があるため乾燥・過湿に注意が必要。
結実特性
- 開花期: 春(米国基準で 4〜5 月)。白色花。
- 収穫期: 中生(Mid-season)〜中晩生。米国(インディアナ州ブラウン郡など)では 7 月上旬〜中旬、ノースアメリカ全体では 7 月中心。Rutgers FS419 では「Late」と評価されており、ニュージャージー基準では中晩生〜晩生に分類される。
- 収穫タイミングの特徴: 成熟が比較的同時期に集中する(concentrated ripening)ため、1〜2 回の摘み取りで収穫が完了することが多く、機械収穫・大規模手摘みのいずれにも経済的。
- 日本国内: 苗木業者表記では収穫期 6 月中旬〜下旬(花ひろば/グリーンでGO!)または 7 月中旬(業者により差あり)。隔年結果しにくく安定して結実する。
- 低温要求量(チリングアワー): 約 800〜1,000 時間(7.2℃ 以下)。ノーザンハイブッシュの中では標準〜やや高めの低温要求。
- 収量: 成木 1 株あたり 8〜12 ポンド(約 3.6〜5.4 kg)が一般的。Backyard Berry Plants は成熟株で 10〜12 ポンド(約 4.5〜5.4 kg)と記載。豊産性(high production)で評価される。
- 結実年齢: 植え付け後 1〜2 年で結実開始。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜大粒(Medium - Large)。日本国内苗木業者の実測表記では 18〜21 mm の大粒との記載もある。
- 果皮色: スカイブルー〜濃青(Sky Blue/資料によっては color rating 8 = 濃青寄り)。果粉(ブルーム)が多く外観良好。
- 果肉・硬さ: 非常に硬い(Very Firm)。果肉のしまりが良く、貯蔵性・輸送性に優れる。
- 食味・糖酸:
- 評価が分かれる品種である点が特徴。Raintree は「exceptionally sweet, flavorful(並外れて甘く風味豊か)」、Rutgers FS419 では「Excellent flavor」と高評価。
- 一方、Penn State Extension では「flavor is lacking(風味に乏しい)」と評価しており、地域・栽培条件・収穫タイミングによる差が大きいと考えられる。
- 完熟直後は甘味が強く、過熟になると風味が落ちる傾向。日本では「酸味がやや強めでジャム加工向き」とも紹介される一方、「甘味酸味のバランスが良い」とする業者表記もあり、評価は両論。
- 糖度: 日本国内苗木業者表記で平均 12〜13 度。
- 果柄離れ(stem retention): Penn State 報告によれば、高温期収穫では果柄が果実に残りやすい(stems tend to remain attached)傾向があり、機械収穫時の留意点となる。
- 用途適性: 生食、加工(ジャム・冷凍・菓子原料)の両用。集中成熟と硬果性から商業出荷にも適する。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 強い(cold-hardy/winter hardy として一貫して評価される)。USDA ハーディネスゾーン 4〜7(資料により 4a〜8b の範囲も記載)。'Ashworth' を血統に含むことから低温適応性が高い。
- 耐暑性: コンパクトな樹形と Vaccinium angustifolium の血を含むため、本来は冷涼地適性。高温多湿条件では果柄離れが悪くなる、風味が乗りにくいなどの報告があり、暖地適性は限定的。
- 耐病性: 公的機関による系統的な耐病性データの記載は限定的だが、USDA-ARS 育成品種として一般的なノーザンハイブッシュの抵抗性レベルを備える。重大な病害感受性として特記された情報は確認されず(不明)。
- 欠点:
- 風味の評価が地域によって分かれる(Penn State は flavor lacking と評価)。
- 高温下で果柄が果実に残りやすく、機械収穫でステム混入の可能性。
推奨栽培地
- 米国: ニュージャージー、ペンシルベニア、ミシガン、インディアナ、ニューヨーク、オレゴンなど USDA ゾーン 4〜7 の冷涼〜温帯地域。Rutgers は NJ の 3 気候帯すべてで適応すると評価。
- カナダ: オンタリオ、BC 州など。
- 欧州: 英国(Thompson & Morgan で流通)、北欧、ドイツなど耐寒性を重視する地域。
- 日本: 北海道〜九州の高冷地。低温要求量 800〜1,000 時間が必要なため、暖地・低標高地では休眠不足のリスクがあり、東北〜中部山間部・北海道が特に適する。日本国内苗木業者は「北海道〜九州」での栽培可能と表記しているが、実際には冷涼地での性能が安定する。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的に自家結実(Partially Self-Fertile)。Raintree は「Partially Self Fertile」と明記。日本国内では「自家結実性なし/弱い」と表記される業者もあり、単独栽培では着果・果実サイズが劣る。
- 推奨受粉樹: 同じノーザンハイブッシュ系で開花期が重なる中生〜中晩生品種。Bluecrop、Patriot、Duke、Bluejay、Jersey、Legacy、Nui、Weymouth などとの混植が日本苗木業者で推奨されている。
商業利用状況
- 1990 年代以降、北米のノーザンハイブッシュ商業園地でコンパクト樹形・多収・耐寒性・集中成熟性を活かした「中生機械収穫向け補助品種」として導入された。
- 集中成熟による収穫効率の良さから加工用途(冷凍・ジャム)で評価される一方、生食市場では Bluecrop や後発の風味重視品種(Draper、Liberty 等)に主役を譲っており、現在は中規模栽培者・家庭園芸・直売向けに位置付けられることが多い。
- Fall Creek Nursery など主要苗木サプライヤーが商業ライン品種としてカタログ掲載しており、現在も流通は継続している。
- 観賞価値(黄葉・コンパクト樹形)も評価され、観光農園・低生垣・ランドスケープ用としての提案もみられる。
日本での状況
- 日本国内では「ブルーゴールド(Bluegold)」としてノーザンハイブッシュ系の中生品種として一般流通。
- 苗木は「花ひろば(楽天店/苗木部)」「グリーンでGO!」など主要なブルーベリー苗木専門店で 2 年生接ぎ木苗から入手可能。価格帯は 2〜3 年生苗で 2,000〜5,000 円台。
- 国内栽培者向け解説では「コンパクトで初心者向き」「豊産性」「樹勢は強くないが強健」「酸味が強めでジャム加工向き/甘味酸味バランス型」と紹介され、観光農園・家庭果樹のいずれにも採用されている。
- 高冷地〜冷涼地向きで、暖地での栽培は低温要求の不足に留意。
育成者注釈・特記事項
- 品種名「Bluegold」は果実の青色(Blue)と秋〜冬の黄金色の葉・枝色(Gold)に由来するとされ、観賞価値も意識した命名と考えられる。
- USDA-ARS による公的リリース品種であるため、米国植物特許(USPP)は取得されていないと考えられる(明示的な USPP 番号は確認できず/不明)。
- 系譜に Vaccinium angustifolium(ローブッシュ)の血を含む 'Bluehaven'・'Ashworth' を持つため、樹形がコンパクトで耐寒性が高く、地域によっては「ハーフハイブッシュ」として扱われることもある(pickyourown.org の表記参照)。
- Penn State での「flavor lacking」評価と、Rutgers/Raintree/日本苗木業者の「sweet, excellent flavor」評価が併存しており、地域・栽培条件・収穫タイミングによる風味差が大きい品種である点が利用上の重要ポイント。
- 集中成熟と機械収穫適性を重視した育種目標が達成された一方、近年の生食市場で求められる「大粒・高糖度・長期収穫」のトレンドからはやや外れるため、商業フレッシュ市場でのシェアは限定的。
- 育成評価関与者として記録される Galletta、Stretch、Draper、Ehlenfeldt、Vorsa は、USDA-ARS/Rutgers の北東部ブルーベリー育種プログラムを長年牽引した中核研究者。
参考情報源
- Fall Creek Farm & Nursery – Bluegold Variety Page
- Raintree Nursery – Bluegold Blueberry
- Backyard Berry Plants – Blue Gold Highbush Organic Blueberry Plant
- Nature Hills Nursery – Bluegold Highbush Blueberry
- Smart Gardener – Blueberry: Bluegold Overview
- pickyourown.org – Blueberry Varieties(親系譜記載)
- Rutgers NJAES – FS419 Selecting Blueberry Varieties for the Home Garden
- Penn State Extension – Blueberry Variety Selection in the Home Fruit Planting
- USDA AgResearch Magazine – Pink Lemonade Blueberries(育成者関与言及)
- USDA AgResearch Magazine – Blueberry Growing Comes to the National Agricultural Library
- 花ひろば/苗木部 – ブルーゴールド ノーザンハイブッシュ系
- グリーンでGO! – ブルーゴールド 2年生接ぎ木苗