カボット Cabot
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 両親: Brooks(野生ハイブッシュ) × Chatsworth(野生ハイブッシュ/ニュージャージー州 Pine Barrens の Chatsworth 集落付近で発見)
- 交配年: 1913年に交配実施
- 公表年: 1920年(USDA Coville 博士による初の3品種公表のうちの1つ)
- 品種名の由来: Coville 博士の息子 Cabot Coville に因む。息子が複数個体の中から、Pioneer の甘味よりもこの実のわずかな酸味のある風味を好んで選んだことから命名された(出典: chathamapples / Coville の記録より)。
- 位置付け: USDA から最初に公表された3品種(Pioneer=Brooks×Sooy、Cabot=Brooks×Chatsworth、Katharine=Brooks×Sooy/Pioneer と同親)の1つで、商業ハイブッシュ栽培の幕開けを担った歴史的品種。
- 親 Brooks: ニューハンプシャー州 Greenfield の野生ハイブッシュ。USDA 最初期15品種のうち13品種の血統に関与した極めて重要な親。
樹体特性
- 樹勢・樹形: 詳細な樹勢記述は検索範囲のHTML資料には限定的で「不明」の点が多い。一般的には初期 NHB 古典品種に分類され、商業栽培で広く植えられた実績から実用に耐える樹勢があったとされる。
- 耐寒性・適応性: ノーザンハイブッシュとして寒冷地適性を持つが、現代品種と比較した詳細指標は不明。
- 特記: 1928年 Ore Ponds 圃場では冬期に鹿が花芽を食害したが、残存芽の果実は逆に大粒化(最大 20.5 mm)した記録がある。
結実特性
- 収穫期: 早生。「長年にわたり名のある品種の中で最も早い品種だった」と記録されており、当時の極早生指標として位置付けられた。
- 収穫頻度: 週2回程度の収穫が必要で、1樹あたり最大7回程度の収穫期に分かれる長い収穫期間が特徴。
- 生産性: 早生かつ多回収穫可能であったため、商業栽培で「非常に広く植えられた」(planted very extensively)と記録されている。
- 自家不和合性: Coville は当初の品種群で自家不和合の問題を認識しており、Cabot を含む初期品種では他品種との混植が推奨された。
果実特性
- 果皮色: 明青色(light blue)系。
- 果粒サイズ: 原木で直径 18.5 mm(中粒)。商業栽培では条件により 20.5 mm 程度まで大型化した例も記録。
- 食味・風味: わずかに酸味を帯びた風味(slight acidity)。Pioneer の「甘くて酸味の少ない」風味と対照的に、酸味とのバランスを評価されて選抜された経緯がある。
- 甘味評価: 完全な「甘味系」ではなく、酸味とのバランス型(命名者 Cabot Coville の嗜好による)。タイトルの「中粒・甘味」表現と若干異なる点に注意。
歴史的意義
- USDA 最初期3品種: Pioneer、Katharine と並び、1920年に USDA が世界で初めて公表したハイブッシュブルーベリー栽培品種3品種のうちの1つ。これによりブルーベリーが「野生果」から「栽培果樹」へ転じる嚆矢となった。
- 早生品種の先駆: 公表当時、命名品種の中で最も早く熟す品種として、商業栽培の早生市場形成に寄与した。
- 広範な普及: 早生・多収という利点から、初期商業ブルーベリー栽培で極めて広く植栽された記録がある。
- 系譜の中核: 1942年時点で東部生産者が扱う18品種のうち14品種が Coville 由来(選抜または育成)であり、Cabot もその一翼を担った。
現代品種への遺伝的寄与(Weymouthの母本等)
- Weymouth の親系: 後年公表された早生品種 Weymouth は June × Cabot の交配(1928年交配)に由来し、Cabot は Weymouth の母本(あるいは父本)として直接の親となった。Weymouth は約 22 mm の大粒・極早生という特性を引き継ぎ、東海岸を中心に広く栽培された。
- 間接的寄与: Weymouth はさらに Earliblue(Stanley × Weymouth)など後続の極早生〜早生 NHB 品種の親として用いられ、Cabot は Weymouth を介して現代の早生品種系譜に間接的に寄与している。
- Brooks 系統の維持: Cabot は Brooks を親に持つことで、USDA 最初期 15 品種の 13 品種に共通する Brooks 由来形質(果粒・果色・樹勢)を次世代へ橋渡しする役目を果たした。
日本での状況
- 日本国内で「Cabot(カボット)」名義での流通・栽培情報はオンライン HTML 検索範囲では確認できず、現状はほぼ流通していない/極めて稀と推定される(「不明」)。
- 同じ Coville 由来の古典品種としては「Coville(コビル)」「Earliblue(アーリーブルー)」等が日本国内でも流通しているが、Cabot 自体は歴史的品種としての位置付けが強く、現代の苗木流通商品としては確認できなかった。
参考情報源
- USDA Agricultural Research Magazine(2011年5月号)「Blueberry Growing Comes to the National Agricultural Library」
- Tandfonline(Ehlenfeldt et al.)「Frederick V. Coville and the History of North American Highbush Blueberry Culture」
- USDA「Celebrating the Highbush Blueberry's Centennial」
- USDA ARS「Historic Collection at NAL Gives Insight into Blueberry's Domestication」
- Italian Berry「110 years of blueberry history: it all started with F. Coville and E. Coleman White」
- Rutgers University Library「Coville's Serendipitous Association with Blueberries Leading to the Whitesbog Connection」
- Chatham Apples Small Fruits NY「Improving the Wild Blueberry(Blueberries 1937)」
- National Agricultural Library Archives「Frederick Vernon Coville Records on Blueberries」
- Biodiversity Heritage Library「Frederick Vernon Coville blueberry records」
- ISHS「Celebrating the 100th anniversary of highbush blueberry domestication」