ブルーベリー品種図鑑

140品種を系統別に紹介

スーイ Sooy

ノーザンハイブッシュ系

学名Vaccinium corymbosum(野生選抜)
育成機関米国ニュージャージー州 Burlington郡 Browns Mills(ニュージャージー松林帯=Pine Barrens内)で野生選抜/採取者:Frederick Vernon Coville(USDA)
育成年1911年(1911年7月20日に Frederick V. Coville が採取)
特許番号不明(野生選抜クローン・特許制度発足以前)

歴史的意義

'Sooy' は、米国農務省(USDA)の植物学者 Frederick Vernon Coville(フレデリック・V・コビル) が、ハイブッシュブルーベリー(NHB)の栽培化研究の初期段階に取得した、ニュージャージー州における最初の野生選抜系統である。1911年、Coville が New Hampshire 州 Greenfield で前年(1908年7月)に発見した名株 'Brooks' に続いて取得したもので、1912年に行われた 'Brooks' × 'Sooy' の交配は、世界で最初の人為交配ハイブッシュブルーベリー育成の出発点となった。この交配から、1920年に正式リリースされた世界最初の改良ハイブッシュブルーベリー品種 'Pioneer'(パイオニア)が誕生しており、'Sooy' は 'Pioneer' の父本(または母本のいずれかの片親)として、ブルーベリー栽培史の原点に位置する系統である。Coville の言葉によれば、'Sooy' はその後ワシントンDCに持ち込まれ「我々の最良のブルーベリー雑種のいくつかの祖先(progenitor)」となった。

選抜の経緯

1911年7月20日、Coville は Browns Mills(ニュージャージー州、Pine Barrens の中心地)に住む熟練の野生ブルーベリー採取者 Ezekiel Sooy(イゼキエル・スーイ) 氏の自宅を訪問した。Sooy 氏が自宅から東に約1マイル離れた道路脇で見つけた優良な野生ブッシュへ Coville を案内し、その株を掘り取って提供した。原木の果実は 直径5/8インチ(約15.9 mm) に達し、Coville が良質と判断していた最低基準(1/2インチ)を大きく上回る大粒果であった。掘り取り方法について Coville が懸念を示した際、Sooy 氏は「その根は生きる。ブルーベリーの株は殺せない("That root will grow. You can't kill a blueberry bush.")」と答えたという逸話が残る。掘り取られた根は湿らせた新聞紙で包まれ、ワシントンDC(USDA)まで輸送され、以後 'Sooy' の名称で交配親系統として保存・繁殖された。系統名はこの提供者である Ezekiel Sooy 氏に由来する。

なお、当時 Coville とパートナー Elizabeth Coleman White(Whitesbog 農場、ニュージャージー州)は、Pine Barrens の地元採取者("prospectors")に 5/8インチの穴を持つアルミ製ゲージとラベル・ホルマリン入りの瓶を配布し、大粒の優良野生株を組織的に探索しており、'Sooy' はこの大粒選抜運動の一環として獲得された初期成果のひとつであった(地元採取者組織化の指揮には Jake Sooy や Alfred Stevenson の名が記録されている)。

樹体特性・果実特性

'Sooy' は栽培品種としてはリリースされなかった野生選抜クローンであり、商業流通や苗木カタログ向けに記載される正式な樹体特性データは現存資料にはほぼ残されていない。確認できる範囲では以下のとおり。

'Sooy' に関する記録は主として 「育種親としての来歴・採取エピソード」 に集中しており、栽培形質そのものを詳述した一次資料は限定的である。

Coville育種への貢献('Pioneer'の親本)

Coville は 1912年、'Sooy' を交配親として、すでに保有していた野生選抜株 'Brooks'(1908年7月に Coville の隣人 Fred Brooks 氏の牧草地で採取された、果実径0.5インチ超・優れた風味の野生株)と組み合わせる人為交配を行った。

加えて、もう一方の親である 'Brooks' は USDA 最初期15品種のうち13品種の系譜に登場する重要親本となっており、'Brooks' × 'Sooy' という組み合わせは Coville 育種プログラム全体を通じて反復的に活用された基幹交配であった。'Sooy' はこの組み合わせの片親として、Coville 育成系列の遺伝基盤を形成した。

現代品種への遺伝的寄与

'Sooy' の直接的な遺伝寄与は、まず子世代の 'Pioneer'(1920年)と 'Katharine'(1920年)に固定された。これらの初期品種は、その後の USDA/ニュージャージー州育種プログラムで反復的に交配親として使用され、現代品種の系譜にも痕跡を残している。

そのため、'Sooy' は現代の栽培ハイブッシュブルーベリーの原始的遺伝基盤の一角を成す野生選抜祖先といえる。Coville が育成した品種群は「現代栽培される大半の品種の系譜(pedigree)に含まれる」と評され(USDA/業界資料)、'Sooy' の遺伝子は Pine Barrens 由来の野生 V. corymbosum 形質(耐酸性土壌適応・大粒形質の素地など)を、現代品種に橋渡しした初期供与体のひとつと位置づけられる。

ただし、'Sooy' クローン自体が直接交配親として使われた記録は 'Brooks' × 'Sooy' 系統の交配以外にはほぼなく、現代品種への寄与経路は主に 'Pioneer'(および 'Katharine')を介した間接寄与である。具体的な遺伝寄与率(系譜係数)に関する定量データは本調査範囲では確認できなかった(不明)。

日本での状況

参考情報源