ドレイパー Draper
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 育成者: Dr. James F. Hancock(ミシガン州立大学)
- 交配親: Duke × G-751(USDAエリート選抜系統)。交配年: 1990年。選抜年: 1995年(77個体の実生から選抜)
- 試験圃場: ミシガン州 Benton Harbor(ベントンハーバー)にて11年間にわたり評価
- 特許: 米国植物特許番号 PP15,103/出願日2003年1月23日/発行日2004年8月24日/出願人 Board of Trustees operating Michigan State University/状態: 失効(2023年1月23日)
- 背景: Bluecropよりも果実が硬く、貯蔵性に優れる品種を作出することを目標として開発された。MSUは2004年にDraper、Liberty、Auroraの3品種を同時にリリースし、これらは商業ブルーベリー業界に大きな変革をもたらした。
樹体特性
- 樹勢: 樹勢旺盛(特許文書)。ただし、ミシガン州生産者調査では「全栽培品種の中で最も低い樹勢評価」とされ、定植後の生育がやや遅いとの報告もある(地域・気候差あり)
- 樹形: 直立性(Upright)。樹高/樹幅比 約2.2(特許記載)。Fall Creek Nurseryの記載では「丸みを帯びたずんぐりした(Rounded, Stocky)」コンパクトな樹形
- 樹高: 約4〜5フィート(約1.2〜1.5m)
- 特徴: 1年生シュート(whips)が多く発生する傾向があり、樹冠が広がりやすいため、機械収穫適応のためには整枝・剪定が必要
- 若木からの結実: 若木のうちから多収(highly productive as a young plant)。早期に収穫を制限して栄養生長を促進する管理が推奨される
結実特性
- 開花期: 4月頃(北米中部基準)
- 収穫期: 早中生(Early Mid-season)。ミシガン州では6月下旬〜7月上旬。Auroraより7〜8週間早い
- 低温要求量(Chilling hours): 800〜1,000時間(32〜45°F、0〜7°C)。中〜高チル地域向け
- 収量: 1株あたり約12〜18ポンド(約5.4〜8.2kg)/15〜20ポンド(約6.8〜9.1kg)の報告あり。Dukeと同等、Bluecropよりやや少ない(特許評価)
- 結実の集中度: 結実期間が集中しており(concentrated ripening)、手摘み・機械収穫いずれも効率的
果実特性
- 果粒サイズ: 中〜大粒(moderately large)。平均果実重 約1.6g(特許記載)
- 果皮色: 明るいパウダーブルー(excellent powder-blue / sky-blue)。収穫後の色保持性が極めて優れる
- 果肉・食感: 非常に硬い(excellent firmness)。「クランチー」「クリスピー」と表現されるパリッとした食感
- 食味・風味: 甘味が強く(sweet, mild flavor)、Bluecrop・Dukeと比較して風味が大幅に優れると評価される。低酸性で甘味が際立つ
- 糖度(Brix): 具体的な数値は信頼ある一次資料では確認できず「不明」。ただし「高い甘味」と多数の資料で記述
- 果柄痕(picking scar): 小さく乾燥(small, dry scars)。機械収穫時の果汁漏出が少ない
- shelf life(日持ち): 極めて優れる。CA(コントロールアトモスフィア)貯蔵での性能も良好。生鮮市場・IQF(個別急速冷凍)両方に適する
- 特記事項: 一部の資料では果肉のドライさ(パサつき)が消費者によっては気になることがあると指摘されている
耐寒性・耐病性
- 耐寒性は非常に強く、−30°F(約−34°C)まで耐える
- USDA耐寒ゾーン: 3〜7(一部資料では5〜7、他では3〜11と記載のばらつきあり)
- ただしミシガン州内陸部では花芽が凍害を受けやすいとの報告があり、地域によっては敬遠されることもある
- 強い耐性: 炭疽病(Anthracnose fruit rot)非常に高い抵抗性/果実腐敗病(fruit rot pathogen全般)高い抵抗性/茎瘤蜂(stem gall wasp)完全抵抗性
- やや弱い/罹病性: Phytophthora根腐病(罹病性)/ミイラ病(Mummy berry、やや罹病性)/茎枯病・キャンカー(stem blight/canker、罹病性)/ブルーベリー・ゴールミッジ(gall midge、罹病性)
推奨栽培地
- 米国: ミシガン州(育成地)、太平洋岸北西部(オレゴン、ワシントン)、西部の中〜高チル地域に適する
- 土壌条件: 排水性の良い軽量土壌が必須。pH 4.5〜5.5の酸性土壌
- 気候: 低温要求量800〜1,000時間を満たす冷涼〜温帯気候
- 不適地: 暖地(チリングが不足する地域)、極端な内陸寒冷地(凍害リスク)、排水不良な重粘土
- 国際展開: イタリア、チリ、ペルー、メキシコなど世界各国で商業栽培されている(中〜高チル地域)
受粉相性
- 自家結実性: 部分的自家結実性(partially self-fertile / partially self-pollinating)
- 推奨受粉樹: 単独栽培でも結実するが、他品種との混植により大幅に増収・大粒化する。同じ早中生〜中生品種が推奨される。例: Bluecrop、Liberty、Duke、Spartan等
- 必要本数: 最低2本以上の混植が推奨
商業利用状況
- 主要用途: 生鮮市場(フレッシュマーケット)の主力品種、IQF冷凍加工、CA貯蔵流通
- 市場ポジション: 2003年リリース後わずか3年で生鮮・IQF市場の主要品種となり、世界的に広く植栽されている
- 機械収穫適性: 果実が硬く果柄痕も乾燥していることから、北部ハイブッシュの中では機械収穫に適した数少ない品種の一つ。ただし、研究データでは無改造のOver-The-Row(OTR)型ハーベスターでは Duke よりも傷みやすく、パックアウト率が低い傾向。Soft Surface kit などの改良型機械収穫機との組合せで、貯蔵中の硬度保持・内部打撲低減効果が確認されている。一部のミシガン州生産者報告では、樹冠が広がりやすく機械収穫に向かないとの指摘もある
- 権利関係: Fall Creek Nurseryがライセンス管理する有料品種(米国植物特許は2023年に失効)
- Driscoll's等大手プログラムでの使用: 公開情報では Driscoll's の自社プログラム(Driscoll'sは独自育成品種が中心)でDraperが採用されているという明確な記載は確認できず「不明」。ただし米国・南米の大手生鮮ブルーベリー商業生産において広範に栽培される代表的品種であることは確実
日本での状況
- 苗木流通: 日本国内で複数の専門ナーセリー・農園が苗木を取扱う。ゆたか農園(栽培品種・苗販売)、Berry's Life(自然の休憩所、栽培品種・苗直売)、大関ナーセリー等の専門業者
- 栽培者ブログ評価例(2025年「パパのブルーベリー」): 大粒、甘味強く酸味弱め、独特の偏平な形状、パリッとした食感。評価: 総合★★★、甘さ★★★、酸味★★。課題: ハバチ幼虫の食害、若木のうちは収量がやや少ない、乾燥下でも落果しやすい傾向
- 生果流通: 国内スーパー等での生鮮果実流通は限定的(米国・南米産輸入品の一部に含まれる可能性はあるが、品種名表記は一般的でない)
- 適応性: 日本の気候では温暖地(西日本平地等)はチリング不足のリスク、関東以北〜寒冷地で適応する可能性がある(具体的な国内大規模商業栽培実績は「不明」)
育成者注釈・特記事項
- MSUブレダー James Hancock の評価: 「Draperは農家にとって劇的なゲームチェンジャーとなった。サイズが大きく硬度が高いため、収穫コストが下がり加工も容易・低コスト化された」(2014年Crain's Detroitインタビュー)
- 遺伝的構成の妙: V. corymbosum を主体としつつ、V. darrowi(耐暑性)、V. ashei(ラビットアイ系)、V. tenellum の遺伝子を微量導入することで、ハイブッシュとしての品質を保ちつつ環境適応幅を広げた設計
- 増殖方法: 硬枝挿し(2〜4週間で発根)、緑枝挿し、組織培養(3〜4週間で発根)いずれも可能
- 管理上の留意点: 若木期に過度な結実をさせると樹勢低下のため摘果が推奨される/バランスの取れた剪定・施肥管理が必要/排水の悪い土壌では Phytophthora 根腐病のリスクが高まるため避ける/開花期の凍害感受性に注意
- 同期リリース品種との比較: Liberty(晩生・大粒・硬い)/Aurora(極晩生)/Draper(早中生・最高品質の生鮮市場向き)
参考情報源
- USPP15103P3 - Blueberry plant denominated 'Draper' (Google Patents)
- US20040148670P1 - Blueberry plant denominated 'draper' (Google Patents)
- Blueberry plant denominated 'Draper' (FreePatentsOnline)
- Draper Blueberries @ Fall Creek Nursery
- Blueberry Varieties for Michigan - MSU Extension
- The Draper Blueberry - Minnetonka Orchards
- Draper Blueberry - One Green World
- Draper Blueberry — Edible Landscaping
- Draper Blueberry Plant For Sale - Food Forest Nursery
- DRAPER BLUEBERRY: VARIETY CHART - italianberry.it
- The berries are blue, the research turns money-green for MSU prof - Crain's Detroit Business
- Modified Over-the-Row Machine Harvesters to Improve Northern Highbush Blueberry Fresh Fruit Quality - MDPI
- Improving Mechanical Harvesting of Fresh-Market Blueberries - Specialty Crop Grower
- 品種紹介⑦ ドレイパー | パパのブルーベリー(Ameblo)
- ベリーの栽培品種 - ゆたか農園
- 新品種のご案内について - 大関ナーセリー