エリオット Elliott
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 1947年にメリーランド州ベルツビルの USDA で George M. Darrow が交配。母 'Burlington' × 父 'U.S. 1' の組み合わせで得られた実生から選抜され、1973 年に正式に品種として公表された。
- 'Burlington' は F. V. Coville の作出による 'Rubel'(ニュージャージー州の野生選抜株)×'Pioneer'(最初期のハイブッシュ品種)の交配。
- 'U.S. 1' は 'Dixi' ×('Jersey' ×'Pioneer')の交配。Coville 育成系統を多く含む古い北部系の血統で、極晩生・耐寒性・耐貯蔵性を狙った系譜。
- 命名の由来は、選抜・評価過程に関わったとされる Arthur Elliott 氏に因む(諸説あり、出典により記載に揺れあり)。
樹体特性
- 樹勢: 中庸〜強。直立性で、開帳も多少あり、しっかりとした骨格を作る。
- 樹形: アップライト(直立性)、やや開張する個体も見られる。
- 樹高: 成木で約 1.5〜2 m(4〜6 フィート)程度。場所により最大 7 ft(約 2.1 m)まで。
- 管理上の注意: 結実が密になりやすいため、果実サイズと樹形維持のために適正な剪定が必須(Fall Creek Nursery 注釈)。
- 紅葉: 秋葉は鮮やかな深紅〜バーガンディに色付き、観賞価値も高い。
結実特性
- 開花期: 4月(米国基準)。比較的遅咲きで、晩霜害を回避しやすい。
- 収穫期: 極晩生(Very Late Season)。ノーザンハイブッシュの中で最も遅く成熟する代表品種。米国では 8 月後半〜9 月、地域によっては 10 月初頭まで収穫が続く。日本国内の温暖地では 7 月下旬〜8 月(産地・気候により変動)が目安。
- 収穫期間: 着色から収穫終了まで 3〜5 週間と長い。
- 低温要求量(チリングアワー): 約 800〜1,000 時間(7.2℃以下)と高い。Oregon Blueberry は「年間 1,000 時間」と記載。
- 収量: 1株あたり 8〜12 ポンド(約 3.6〜5.4 kg)が一般的、適地では最大 25 ポンド(約 11 kg)。ノーザンハイブッシュ品種の中で多収の部類に入る。
- 結実年齢: 植え付け後 1〜2 年で結実開始。比較的早く成り込む。
果実特性
- 果実サイズ: 中粒〜中大粒(約 1/2 インチ ≒ 13 mm 前後、日本流通情報では 16〜17 mm との記載もあり)。
- 果皮色: ライトブルー(明るい青)。果粉(ブルーム)が多く外観良好。
- 果肉・硬さ: 非常に硬く(very firm)、貯蔵性・輸送性が極めて良好。
- 果柄痕(スカー): 小さく乾いており、汁漏れが少ない。
- 食味・糖酸: 完熟前は酸味が強く tart(酸っぱい)と評される。完熟するとマイルドで甘くなり、晩秋の冷涼期に風味が乗りやすい。完熟までは「やや酸度高めで風味のしっかりしたバランス型」。
- 糖度: 12〜15 度前後(日本国内苗木業者表記)。
- 欠点: 高温下での収穫では果実がしわになりやすい(shrivel/wrinkle)傾向あり。果実全体の 60% 程度が熟すまでは酸味が立ちやすい。
- 用途適性: 生食、加工(ジャム・冷凍・菓子原料)の両用に優れ、貯蔵流通性の高さから生食市場で長く重宝された。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: 非常に強い。USDA ハーディネスゾーン 4〜7(一部資料で 4b〜7a または 4〜8)。約 -34℃(-30°F)程度まで耐えるとされ、北部寒冷地の主力候補。
- 炭疽病(Anthracnose/Colletotrichum): 抵抗性あり。
- ミイラ病(Mummy Berry, Monilinia vaccinii-corymbosi): 新梢感染(shoot blight)相に対しては抵抗性が高く、Bluejay・Darrow・Duke・Toro などと並ぶ抵抗性品種に位置付けられる。一方、花器感染(fruit infection)相にはやや感受性があり、開花期の防除が必要。
- フォモプシス枝枯病(Phomopsis Twig Blight): 抵抗性品種として挙げられる。ただし Phomopsis 茎潰瘍(stem canker)には中程度の感受性。
- 全般に「重大な病害虫被害を受けにくい」と評される。
推奨栽培地
- 米国: ミシガン州、ニュージャージー州、ペンシルベニア州、オレゴン州など、十分な低温量(800 時間以上)が確保できる北部〜中部の寒冷〜冷涼地。USDA ゾーン 4〜7。
- カナダ: オンタリオ・ブリティッシュコロンビアなど。
- 日本: 東北〜関東以北の寒冷地、長野・山梨など標高のある冷涼地、北海道。低温要求量が高いため、暖地(西南暖地・低標高)では十分な休眠が取れず、開花・結実が不安定になるリスクあり。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的に自家結実するが(partially self-fertile)、単独では着果・果実肥大が劣るため、ハイブッシュ系の他品種との混植による異品種受粉が強く推奨される。
- 推奨受粉樹: 同じノーザンハイブッシュ系で開花期が重なる中〜晩生品種。Bluecrop、Brigitta、Liberty、Aurora、Legacy など晩生〜極晩生との組み合わせが有効。
商業利用状況
- 1980〜2000 年代にかけて、北米における 晩生フレッシュマーケット用主力品種 として確固たる地位を築いた。極晩生で果実が硬く、貯蔵性・輸送性に優れることから、収穫期延長による「シーズン延伸戦略」に最適とされた。
- 機械収穫適性も良好で、果実の硬さ・小スカー・同時成熟性(成熟率 70〜80% を一度に収穫可能)から大規模園地で活用された。
- 2000 年代後半以降、より食味(甘味)を重視した後発の極晩生品種 'Liberty'(USDA, 2004)および 'Aurora'(USDA, 2004)の登場により、フレッシュ生食用途では徐々に置き換えが進んだ。ただし加工・冷凍向けや低コスト栽培、果実の硬さを活かす長距離輸送向けでは依然として重要な存在。
日本での状況
- 日本国内では「エリオット(Elliott)」「エリオット系」としてノーザンハイブッシュ系の極晩生品種として流通。
- 苗木は「花ひろば/グリーンでGO!(楽天)」「日本花卉ガーデンセンター」「井戸園芸(ブルーベリーカントリー)」など主要なブルーベリー苗木専門店で入手可能。3 年生接ぎ木大苗で 6,000 円台〜の価格帯。
- 国内栽培者向け解説では「ハイブッシュ系最晩生」「中粒・糖度 12〜15 度・酸味も強い豊産品種」「貯蔵・輸送性に優れる」と紹介され、観光農園・直売向けの収穫期延長品種として位置付けられている。
- 暖地では低温要求量を満たしにくく不安定。寒冷地〜冷涼地・標高地が向く。
育成者注釈・特記事項
- 1947 年の交配から 1973 年のリリースまで 26 年を要した「長期育成・厳選型」の品種であり、晩生でかつ硬果・耐寒性・多収を併せ持つことが選抜の重点とされた。
- USDA-ARS による公的リリース品種であるため、米国植物特許(USPP)は取得されていないと考えられる(明示的な USPP 番号は確認できず/不明)。
- 「ハイブッシュ系で最も遅い品種」として、北米ブルーベリー市場の収穫期を 9 月〜10 月初頭まで延長させた歴史的に重要な品種。
- 完熟までの果実は酸味が強いため、収穫タイミング(着色後さらに 5〜7 日待つ)が品質に直結する。早採りは食味低下の主因となる。
- 高温・乾燥下での収穫はしわ果(shrivel)を誘発する点に留意。
参考情報源
- Fall Creek Farm & Nursery – Elliott Variety Page
- Oregon Blueberry – Elliott
- Hartmann's Plant Company – Elliott
- One Green World – Elliott Blueberry
- Experimental Farm Network – Elliott Blueberry(系譜記載)
- Food Forest Nursery – Elliott Blueberry(系譜記載)
- Stark Bro's – Elliott Blueberry
- Berries Unlimited – Elliott Blueberry
- Degroot – Blueberry 'Elliott'
- UMass Extension – Highbush Blueberry Diseases(耐病性)
- Ohioline (OSU Extension) – Phomopsis Twig Blight of Blueberry
- 花ひろば/グリーンでGO!(日本流通・苗木情報)
- グリーンでGO!(公式ショップ:エリオット 3年生接ぎ木苗)