ジュエル Jewel
サザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 育成者: Paul M. Lyrene 博士(フロリダ大学)。
- 1988年、フロリダ大学ゲインズビル(Gainesville, FL)試験圃場で行われた交配に由来する選抜。
- 親系譜は、ミシガン州およびニュージャージー州由来のノーザンハイブッシュ系統と、フロリダ自生種 Vaccinium darrowi との複合交雑によるサザンハイブッシュ系統。具体的な親株名は特許書類でも公表されておらず「不明」(複合系譜のため特定の単一親なし)。
- 育種目標は「大果」「果実品質の高さ」「開花から成熟までの期間が短いこと」。
樹体特性
- 樹姿: 半直立で、やや横張り(semi-upright, somewhat spreading)。
- 樹高: 4年生で約100cm、樹冠径約105cm(特許記載)。日本の栽培報告では「樹勢が強く、かなり大きく育つ」との評価あり。
- 樹勢: 強健。サザンハイブッシュ系の中では例外的に丈夫で、定植後の脱落・枯死が極めて少ないと報告される(日本・愛知県岡崎市の事例で「定植10年で枯死樹なし」)。
- 花芽密度: 非常に高い(特許記載の "very high density")。
結実特性
- 低温要求量(Chill hours): 約250時間(45°F以下換算、特許記載)。一般流通情報では200〜300時間と幅をもって記載されることもある。
- 開花期: 北中部フロリダで概ね2月16日前後(早咲き)。日本では地域差あり、暖地で3〜4月。
- 収穫期: 米国フロリダ:4月15日頃から収穫始まり、ピーク4月25日前後、5月12日頃まで。'Sharpblue' より5〜7日早い早生〜中早生。日本(暖地):6月上旬〜6月下旬の早生〜中生。
- 収量: 高収量ポテンシャル。ただし日本の暖地報告では「中程度で年により不安定」との評価もあり、暖冬の年に着果良好。
- 自家結実性: 部分的に自家和合性(partially self-compatible)。実用上は他品種との交雑受粉により着果・果実品質が向上するため、商業園では受粉樹の混植が推奨。
果実特性
- 果実重: 初果で1.7〜2.5g(特許記載)。日本の評価では大粒〜極大粒、最大22.5mmの報告あり。
- 果実径: 約14mm × 15mm(特許値、初期世代)。
- 果皮色: 表面はワックスを伴った "Dapple gray"(霜降り様明青)、ワックス下は "Slate Black"。明青色の外観。
- 食味: 完熟前はやや酸味が強く(tart)、完熟で甘酸バランスのよい風味に。糖度(Brix)平均11.6、最高12.6の報告(日本栽培)。
- 果肉: しっかりして硬く(firm)、果皮は薄め〜中、種子は小さい。
- 果梗痕(scar): 小さく乾く(small and dry)→ 商業出荷向き。
- 棚持ち(shelf life): 良好で商業パッキング・輸送に適する(UF/IFAS、Berries Unlimited)。一方、日本の岡崎農園レポートでは「日持ちが悪く出荷向きでない」との評価もあり、栽培環境・収穫熟度により差異がある模様。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: USDA ハーディネスゾーン6〜9。サザンハイブッシュとしては比較的広い適応域。冬期低温の下限は明確には不明だが、過度の厳寒地は不適。
- 耐暑性: 暖地・温暖気候に適応(フロリダ中北部での主力品種)。
- ブルーベリーリーフラスト(葉さび病, blueberry rust leaf spot)に高感受性。フロリダでは夏季に防除しないと早期落葉を起こすため、薬剤散布プログラムが必要(UF/IFAS HS1245)。
- 一方で日本国内の評価では「病害に強い」とする情報もあり、地域・気候条件で差が出る可能性。
- その他: 低チル条件下でのシアナミド(hydrogen cyanamide)処理による薬害感受性あり(UF/IFAS HS1245)。
- 虫害耐性: 特筆すべき耐性情報は不明。
推奨栽培地
- 米国: フロリダ州中部〜北中部が主産地。'Emerald' との混植が標準。'Emerald'・'Jewel'・'Star' はフロリダ・ブルーベリー産業の主軸を10年以上担った。
- 日本: 関東以西の暖地(関東・東海・近畿・中国・四国・九州)。サザンハイブッシュ栽培適地。
- 寒冷地(東北・北海道、北関東山間部)には不向き。
受粉相性
- 部分的に自家結実するが、他品種との交配で結実・果実サイズが向上。
- 開花期の重なる 'Emerald' が最良の受粉樹として確立。フロリダの商業園では 'Jewel' × 'Emerald' のペアが標準。
- 同じサザンハイブッシュ系統(例: Star、Springhigh、Millennia など、開花期重複)も実用上の受粉樹候補。
商業利用状況
- フロリダ州の主要商業品種として長年栽培。早出しブルーベリー市場(4〜5月の市場ウィンドウ)を支えた基幹品種。
- カリフォルニア州、その他温暖地でも商業栽培。
- 大粒・果実硬度・小さな乾いた果梗痕により、フレッシュマーケットの長距離輸送にも適合。
- 近年はより新しい UF 系品種(Meadowlark、Avanti、Sentinel ほか)に置き換わりつつあるが、依然として現役品種。
- 苗木供給: AgriStarts(米国)、Berries Unlimited(米国)等のライセンシー。
日本での状況
- 苗木流通あり。複数のオンラインショップ(オーシャン貿易、苗木の専門店グリーンでGO!、花ひろばオンライン、赤塚植物園、園芸ネット、国華園など)で「ジュエル」または「Jewel」の名で2年生・3年生苗、接木苗が販売されている。
- フロリダ大学の特許品種であり、契約品種扱いのため、商業栽培目的の購入時には誓約書(pledge document)の提出が求められる場合がある。
- 観光農園での導入実績あり(例: 愛知県岡崎市・ブルーベリーファームおかざき、2009年導入、21本栽培)。日本の暖地では収穫期は6月上旬〜6月下旬。
- 国内評価としては「樹勢強健・甘酸バランス良好・大粒」と「日持ちは弱い」両方の声がある。
育成者注釈・特記事項
- Paul M. Lyrene 博士はフロリダ大学のブルーベリー育種プログラムを長年率いた研究者で、サザンハイブッシュ品種を多数育成('Emerald'、'Jewel'、'Star'、'Windsor'、'Springhigh'、'Sweetcrisp' 等)。
- 'Jewel' は UF育成サザンハイブッシュの世代を画する1998年リリース3品種のひとつ。
- 完熟前は酸味が残るため、収穫タイミングが食味の決め手。完全着色後さらに数日待つことで甘味が増す。
- 葉さび病に注意(特に夏季の防除)。
- 公的機関(UF/IFAS)情報と一般小売情報、日本の栽培現場情報で部分的に齟齬がある項目(棚持ち評価、耐病性評価)については、生育環境・収穫熟度・気象条件が影響していると考えられる。
参考情報源
- USPP11,807 P2「Blueberry plant named 'Jewel'」(Google Patents)
- UF/IFAS EDIS HS1245「Southern Highbush Blueberry Cultivars from the University of Florida」
- AgriStarts: Vaccinium 'Jewel' Southern Highbush Blueberry
- Berries Unlimited USA — Jewel Blueberry
- Florida Blueberry Growers Association — Varieties
- UF Blueberry Breeding Program — Varieties
- ブルーベリーファームおかざき(愛知県岡崎市)— ジュエル
- オーシャン貿易オンラインショップ — ジュエル【SH系】2年生苗
- 苗木の専門店「グリーンでGO!」— ジュエル(サザンハイブッシュ系)
- 花ひろばオンライン — ジュエル サザンハイブッシュ系2年生苗
- 赤塚植物園オンライン — サザンハイブッシュ系ジュエル接木苗
- 園芸ネット — ブルーベリー(SHB)ジュエル
- 国華園オンラインショップ — ジュエル挿木3年生苗
- 個人研究サイト「品種別の特徴と観察 サザンハイブッシュ系」