サンプソン Sampson
サザンハイブッシュ系
注:当初指示文では「2002年頃」「ステムキャンカー耐性」とされたが、調査結果ではリリース年は1998年(NCSU 公式の系統データ)であり、ステムキャンカー耐性に関する明示的な公的評価は確認できなかった。詳細は本文の各項目を参照。
系譜・来歴
- 親系譜: 母本 'Bluechip'(ブルーチップ、ノーザンハイブッシュ品種)× 父本 NC1524(NCSU 育種番号、未公表系統)。
- 来歴:
- NCSU のブルーベリー育種プログラム(1930年代に Wolcott、Croatan、Murphy 等の茎潰瘍病抵抗性ハイブッシュ育成で始まり、その後 O'Neal、Reveille 等のサザンハイブッシュ系へ展開)の系譜上で、1990年代末に Ballington チームから発表された SHB 品種。
- 'Bluechip' を母本として用いている点で、ノーザンハイブッシュ由来の優良果実品質形質と、NC1524 由来の暖地適応形質を組合わせた SHB 品種と位置付けられる。
- 品種名の由来: ノースカロライナ州 Sampson County(サンプソン郡)に由来すると推定される。NCSU の SHB 品種は同州の郡名・地名にちなんで命名される慣行があり(例:New Hanover, Carteret, Pamlico, Robeson, Pender, Onslow, Columbus 等)、本品種もその一例とみられる。ただし命名根拠の公的明文記載は確認できなかった。
- 後代品種: 「サザンハイブッシュ育種における優良な親素材(a good parent for Southern Highbush breeding)」と評価されており、後代育成への遺伝的貢献が示唆される。具体的な後代品種名は不明。
- 出典: NCSU Sampson, NCSU Breeding History, NCSU Varieties
樹体特性
- 樹勢: やや強い〜強い(moderate to strong vigor)。挿し木苗より接ぎ木苗のほうが樹勢は強く出る。
- 樹形: 半直立性〜直立性(semi-upright to upright)。
- 枝の特徴: 枝は柔らかく、横枝(側枝)の発生が多い。樹形がやや乱れやすく、整枝・剪定にやや手間がかかるとの国内栽培者評価がある。
- 樹高: SHB 一般値として概ね 1.2〜1.8 m 程度(公的明示値は不明)。
結実特性
- 開花期:
- 米ノースカロライナ州 Castle Hayne 試験地:'Croatan' より 9〜10日遅く50%開花、'New Hanover' より早く開花。
- 日本(関東・東海標準):4月上旬頃。SHB 系の中では 'O'Neal' とほぼ同時期、'Star' より約1週間早い。
- 収穫期:
- 系統位置付け:早生〜中早生(early to mid-season、early-midseason)。'New Hanover' より2〜3日早く成熟(Castle Hayne 3年中2年で確認)。
- 米中部ジョージア・上部中部州:5月下旬から成熟開始。
- 日本(関東・東海・暖地標準):6月上旬〜6月下旬。
- 低温要求量(chilling hours):
- 米国側公的資料:約 700〜800時間(45°F=7.2°C 以下)。中・北部ジョージアに適合し、南部ジョージアにはやや高すぎるとされる。
- 日本国内一部販売情報:250時間との記述があるが、これは米国側公式値と大きく乖離しており、信頼性低(情報源不明確)。本資料では米国公式値(700〜800h)を採用。
- 収量: 「very high yield potential(極めて高い多収ポテンシャル)」と NCSU 系資料で評価される一方、国内販売情報では「特別な豊産性ではない(moderate productivity)」との記述もあり、評価がやや分かれる。'New Hanover' との比較試験では同等(14.5〜19.6 lbs/plant ≒ 6.6〜8.9 kg/株)の収量が報告される。
果実特性
- 果実サイズ: 大粒〜特大粒(large to very-large)。
- 米国側資料:'New Hanover' との比較で平均約 2.1 g/果(同等)。
- 国内販売資料:直径 20〜22mm(特大粒)と表示。一部資料では 15〜18mm(最大22mm)とやや小さめの値も。
- 果皮色: 明青色(light blue)、ブルーム(果粉)が多く外観美麗。
- 果肉硬度: 「firm(硬い)」と米国 SHB 系評価で記載される一方、'New Hanover' との比較では「Sampson の硬度は New Hanover に劣る」「貯蔵中・取り扱い中に軟化しやすい(fruit tends to soften during storage or handling)」とも評価される。国内資料でも「軟(やわらかめ)」評価あり。総合的には SHB 早生品種としては中程度の硬さ。
- 果梗痕(スカー): 小さい(small picking scar)。良好。
- 食味: 風味良好(very good flavor)。'New Hanover' と同等の評価。甘味多く酸味普通、香りに優れる。糖度は資料により 9〜10度(Brix)または 13度との記述。
- 貯蔵性: 40°F(約4.4°C)保管7日後の店持ちは 'New Hanover' に劣る一方、50°F(10°C)・70°F(21°C)では同等。SHB 早生品種としては中程度の貯蔵性。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性ゾーン: USDA Zone 6〜9 相当と推定(SHB 系一般範囲、NCSU 育成 SHB の標準)。日本では「東北南部〜九州・沖縄」での栽培が可能とされる(耐寒性は普通レベル)。
- 耐暑性: SHB 系として暖地適応性を有する。低温要求量 700〜800時間という値は SHB の中ではやや高めで、極暖地(南部ジョージア、フロリダ南部、日本の沖縄等)ではチル不足の懸念があり、中暖地〜温暖地向き。
- 耐病性:
- ステムキャンカー(Botryosphaeria corticis)耐性: 当初指示文の「ステムキャンカー耐性」については、NCSU 公式の品種解説および利用可能な公開資料中に明示的な耐性評価記述は確認できなかった。NCSU 育種プログラムは伝統的にステムキャンカー耐性付与を重要目標としており、Sampson もその系譜上の品種であるため一定の耐性を有する可能性は高いが、明確な評価値は 不明。
- ステムブライト(Botryosphaeria dothidea, 茎枯病)耐性: 同様に明示記述は 不明。なお、NCSU が公表する SHB 茎枯病抵抗品種リスト(Pearl River, Emerald, Star など)には Sampson は含まれていない。
- 一般的耐病性:特段に病害に弱いとの記述は確認されず、SHB 標準レベルの管理で栽培可能とされる。
推奨栽培地
- 米国: ノースカロライナ州(特に Castle Hayne 等の SHB 商業生産地)、ジョージア州中・北部、SHB 適応地域全般(USDA Zone 6〜9)。チル不足リスクのある南部ジョージアや極暖地には不向き。
- 日本: 東北南部〜九州・沖縄。サザンハイブッシュ標準として、関東以西の太平洋側、東海、近畿、中国、四国、九州での家庭・小規模商業栽培が想定される。低温要求量が SHB の中ではやや高いため、極暖地(沖縄など)ではチル時間確保に注意。
- 寒冷地(北東北・北海道)には耐寒性面で不向き。
受粉相性
- 自家結実性: SHB 系として自家結実性は弱め。単独でも結実するが、他品種との混植で着果率・果実サイズ・風味が向上。
- 推奨受粉樹: 同一系統(SHB)かつ開花期が重なる品種。国内資料では以下が推奨される。
- 'Misty'(ミスティ)
- 'Bladen'(ブラデン)
- 'Gulf Coast'(ガルフコースト)
- 'Cape Fear'(ケープフィア)
- 'Cooper'(クーパー)
- 'Reveille'(レベリエ/レヴェイル)
- 'O'Neal'(オニール)も開花期がほぼ同時期で受粉相性良好と推定。
- 注:ラビットアイ系・ノーザンハイブッシュ系(特に晩生開花のもの)とは開花期や倍数性のずれにより受粉樹として不適または効率低下。
商業利用状況
- 1998年の発表以降、ノースカロライナ州の商業 SHB 栽培における中早生品種の選択肢の一つとして導入。
- 'New Hanover'(2007年発表)など後発 NCSU 品種との比較試験で基準(ベンチマーク)品種として頻繁に用いられており、業界内で「最近発表された大粒・高品質基準品種(recently released cultivar with very good fruit quality and superior fruit size and color)」として認識されている。
- 果実は早生・大粒・外観美麗で、生鮮市場(フレッシュ販売)向けに適する一方、貯蔵性は SHB 中位(40°F 7日で 'New Hanover' に劣る)であり、近距離出荷・直売向き。
- 育種素材としても評価が高く、SHB の親素材として利用される。
日本での状況
- 国内導入: 米国発表(1998年)後、SHB 系大粒早生品種として国内苗木業者により導入・流通している。
- 流通状況: 主要な国内ブルーベリー苗専門業者(花ひろばオンライン/苗木部、国華園、赤塚植物園オンライン花の音、楽天市場関連店舗 等)で取扱いがある。一般的な SHB 定番品種('O'Neal'、'Misty'、'Sharpblue'、'Sunshine Blue' 等)と比べると流通量は中程度。
- 入手性: 2年生・3年生の挿し木苗・接ぎ木苗が主流。在庫切れも頻繁で、次回入荷は10〜11月頃の業者が多い。価格帯は接ぎ木苗で約 ¥3,800〜(2026年4月現在)。
- 栽培評価: 大粒・早生・外観美麗で観光農園・家庭果樹用に好評。一方で枝が柔らかく横枝の発生が多いため整枝に注意が必要、貯蔵性が中程度のため早期消費が望ましい、との実栽培者コメントも多い。
育成者注釈・特記事項
- 育成プログラム背景: NCSU のブルーベリー育種プログラムは1930年代の Wolcott(茎潰瘍病抵抗性 HB の先駆)から始まり、O'Neal(1987年、SHB 暖地適応の代表)、Reveille、その後 Sampson、Carteret、Pamlico、New Hanover、Robeson 等を Ballington 博士主導で発表してきた。Sampson はその中で1998年発表の SHB 中堅品種に位置付けられる。
- 育種素材としての価値: NCSU 公式資料は Sampson を「a good parent for Southern Highbush breeding」と明記しており、後続 SHB 品種の親系譜として重要な遺伝資源。
- 当初指示文との相違点:
- 「2002年頃発表」→ 実際は 1998年 発表(NCSU 公式系統データ)。
- 「中生」→ 実際は 早生〜中早生(early to mid-season, early-midseason)。
- 「ステムキャンカー耐性」→ 公的明示資料では確認できず、評価不明(NCSU プログラム系譜上一定の耐性を有する可能性は高いが断定不可)。
- 栽培上の留意点:
- 横枝発生が多く樹形が乱れやすいため、整枝剪定をしっかり行う。
- 果実は大粒・美麗だが軟化しやすく、樹上完熟品の収穫後速やかな低温保管・出荷が望ましい。
- 低温要求量 700〜800時間と SHB としてはやや高めのため、極暖地ではチル時間不足による開花・着果不良に注意。
参考情報源
- NCSU Blueberry Genetics & Genomics Laboratory – Sampson Variety Gallery
- NCSU Blueberry Genetics & Genomics Laboratory – NCSU Blueberry Varieties
- NCSU Blueberry Genetics & Genomics Laboratory – Breeding Program History
- NCSU Blueberry Genetics & Genomics Laboratory – Southern Highbush Type
- Google Patents – Blueberry plant named 'New Hanover'(Sampson 比較記述あり)
- Free Patents Online – Blueberry plant named 'New Hanover'(同上)
- NC Blueberry Journal – Blueberry Stem Canker(NCSU SHB 品種感受性背景)
- NC State Extension – Dr. Jim Ballington(プロフィール)
- 花ひろばオンライン 苗木部 – ブルーベリー サンプソン
- 楽天 花広場 – サンプソン(サザンハイブッシュ系)
- 楽天 花広場 – ブルーベリー収穫時期早見表
- 国華園オンラインショップ – サンプソン挿木3年生苗
- 苗木部 naegibu.com – サンプソン サザンハイブッシュ系
- Berry's Life – ブルーベリーの品種特性 南部ハイブッシュ