シエラ Sierra
ノーザンハイブッシュ系
系譜・来歴
- 育成者: A. D. Draper(USDA-ARS、Beltsville, Maryland)を中心とする USDA ブルーベリー育種チーム。G. J. Galletta も同時期の USDA-ARS の主要育種者として関わったとされる(情報源によって筆頭育成者表記に揺れあり)。
- 育成・公表母体: USDA-ARS と New Jersey Agricultural Experiment Station の協同。米国東部・中西部向けノーザンハイブッシュ拡張の系譜上の品種。
- 親系譜: 公開情報源では「US-169 × G-156」との記述が確認される(一次文献での確証は本調査では未取得)。USDA 育種番号で示される選抜系統同士の交配。
- 種構成: USDA 育種で開発されたブルーベリーの中でも遺伝的に最も複雑な品種の一つとされ、Vaccinium corymbosum、V. darrowi、V. ashei、V. constablaei など複数の Vaccinium 種に由来する遺伝子を含む(情報源により「4種」あるいは「5種」と表記)。
- リリース年: 主流情報源では 1988年。一部資料では 1989年あるいは 1985年以降の選抜公表との表記もあり、確定的な公式リリース日付は出典間で揺れあり。
樹体特性
- 樹勢: 強い(Vigorous)。
- 樹形: 直立性。一部英語情報では「open, spreading(開張・展開的)」とも記述され、若木期は直立、成木期に外へ広がる傾向がある。
- 樹高: 成木で約1.8〜2.1 m(6〜7 ft 程度)。日本での鉢栽培実績では 1〜2 m 程度に管理される例が多い。
- 適応性: 土壌適応性は比較的高く、栽培管理は容易な部類とされる。
結実特性
- 開花期: 中早生(具体的日付の特定情報源は不明)。
- 収穫期: 早生〜中生(Early to Mid-season)。米国ではおおむね6月〜7月、日本では6月中旬〜下旬の収穫情報が複数の流通サイトで確認される。
- 低温要求量(Chill Hours): 不明(一次資料での明確な数値は確認できず)。ノーザンハイブッシュの一般的範囲(800〜1,000時間程度)に該当すると推定されるが、確証情報なし。
- 結実年齢: 接ぎ木大苗で植え付け1〜2年目から結実可能との記載あり。
- 収量: 多収(高い収量性が示される)。
果実特性
- 果実サイズ: 大粒〜極大粒(中粒〜大粒との記載もあり)。直径約18〜19 mm 級。早生ノーザンハイブッシュの中では最大級と紹介される。
- 果色: 濃紫〜青色、果粉(ブルーム)が乗り「パウダーブルー」と評される鮮やかな外観。
- 風味: 香り豊かで芳香性に優れる(aromatic)。甘味と酸味のバランスが良く、酸味のキレとジューシーさが特徴。糖度はおおむね Brix 12 度前後との記載あり。
- 果肉・硬度: 硬く食感良好。
- 果柄痕: 小さく乾いた(dry scar)状態で取れ、生果流通に向く。
- 日持ち: 収穫後最大7日程度、風味と硬度を維持できるとの記述あり。
- 用途: 生食・摘み取り(U-pick)・直販・ジャム等加工。
耐寒性・耐病性
- 耐寒性: ノーザンハイブッシュとしては良好。米国情報では USDA Zone 5〜8、一部情報では Zone 3〜7(−20°F 以下に耐えるとの記述)まで紹介される。日本資料では耐寒性 −25°C 程度との記載もあるが、出典間で差があり確定値は不明。
- 耐暑性: 夏の高温はやや苦手とされ、日本では冷涼地〜温暖地高所が推奨。
- 耐病性: ミイラ病(Mummy berry, Monilinia vaccinii-corymbosi)への感受性は高い側に分類されるとの報告あり。その他の病害(さび病、灰色かび病等)への耐性に関する詳細データは不明。
推奨栽培地
- 米国: ノーザンハイブッシュ栽培帯全域(米国北東部〜中西部、北西部)、USDA Zone 5〜8 を中心とする。
- 日本: 寒冷地〜温暖地。北海道南部〜本州中部の冷涼地、または九州の高冷地が推奨される(流通サイト記載)。夏季高温多湿地ではやや栽培難度が上がる。
受粉相性
- 自家結実性: 部分的に自家結実するが、十分な結実・果実肥大には他品種との交配が望ましい(自家結実性は弱い)。
- 推奨受粉樹: 同系のノーザンハイブッシュ品種、特に Bluecrop、Earliblue(早生青)、Blueray などとの混植が推奨される。
- 受粉媒介: マルハナバチおよび在来ミツバチが理想的。
商業利用状況
- 米国: USDA-ARS 育種品種として一般栽培に供されているが、Bluecrop・Duke・Draper のような主要商業品種ほど大規模な商業栽培の中核には至っていない。摘み取り園・直売・地産地消向けの選択肢として位置づけられる場合が多い。
- 病害感受性(特にミイラ病)の点で大規模商業栽培における取り扱い注意が指摘される場合がある。
- 国際的な栽培シェア・出荷統計の具体数値は不明。
日本での状況
- 日本国内のブルーベリー苗木専門業者(花ひろばオンライン/苗木部、グリーンでGO!、赤塚植物園、花の大和、恵農園 等)でノーザンハイブッシュ系「シエラ」として流通。
- 1年生・2年生挿し木苗、2年生・3年生接ぎ木苗など複数規格で販売されている。
- 大粒・芳香性・酸味の効いた風味・早生〜中生の収穫期という特徴が、家庭園芸用および観光農園向けに評価されている。
- 大規模商業生産での導入規模は限定的とみられ、業務用主力品種としての扱いは確認できない。
育成者注釈・特記事項
- USDA ブルーベリー育種プログラムの中で「最も遺伝的に複雑な品種の一つ」として紹介されることが多く、複数の Vaccinium 種を統合した広い遺伝基盤が特徴。
- 育成者表記に揺れあり: 情報源により「A. D. Draper 主導」「Galletta と Draper 共同」「USDA-ARS / NJAES 共同リリース」と記載が異なる。HortScience 等の一次論文での厳密な著者順序は本調査で未確認のため不明。
- 公表年(1988)も情報源により 1985〜1990 の幅で記載差異がある点に留意。
- 「Sierra Snow」(USPP13,527、Zaiger 育成)は別品種であり混同しないこと(モモ/ネクタリン関係の登録で、ブルーベリー Sierra とは無関係)。
- 米国ではミイラ病感受性が指摘されており、商業圃場での品種選定時には防除設計が必要とされる。
参考情報源
- Planting Justice — Sierra Blueberry 商品解説(USDA-ARS、Draper、複合種由来、早生、Zone)
- CooksInfo — Sierra Blueberries(親種:V. darrowi/corymbosum/ashei/constablaei、1988年、A.D. Draper、NJAES)
- 花ひろばオンライン 苗木部 — シエラ ノーザンハイブッシュ系 ブルーベリー苗(果実サイズ、糖度、樹勢、推奨地、受粉樹)
- 赤塚植物園オンライン 花の音 — ブルーベリー シエラ(接木苗)
- 恵農園(埼玉県伊奈町)— 品種一覧 ノーザンハイブッシュ(シエラ 早生・大粒・芳香性記載)
- 果樹品種特性表(Blueberry Variety List)— Sierra:US-169×G-156、1988年リリース、収穫6月中旬〜下旬、耐寒性−25°C、樹勢強・直立、多収
- Pick Your Own — Blueberry Varieties(品種特性一覧、ミイラ病感受性記載を含む参照)
- USDA-ARS Register of New Fruit and Nut Cultivars 関連リスト(参考)
- Hancock JF, Draper AD (1989) "Blueberry Culture in North America," HortScience 24(4):551–556(USDA 育種背景の参照)
- NC State Blueberry Genetics & Genomics Lab — Pentaploid 解説(種間交雑系統学的背景)